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平成20年10月 第2334号(10月8日)

事務局長相当者研修会を開催
  戦略的人事管理をテーマに協議

組織力に欠かせない人材育成力

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る十月一日から三日まで、浜松市のオークラアクトシティホテル浜松において、平成二十年度(第六〇回)事務局長相当者研修会を開催した。同研修会は、大学運営の要となる事務局長の役割の重要性に鑑み、同協会の大学事務研究委員会(担当理事=香川達雄女子栄養大学理事長、委員長=丸山徹薫武蔵野音楽大学理事・総務部長)が準備を進めてきたもの。本年のテーマは「大学における組織マネジメント〜戦略的人事管理を中心に」。加盟三八四大学から二一九大学三〇七名が参加した。

 大学の「組織力」が注目されている。社会やステークホルダー(利害関係者)のニーズを把握し、教職員が同じ目標に向かって改革を推進する「組織力」の向上が、具体的な成果に結実するカギとなっている。
 このたびの研修会では、組織力向上に欠かせない「人材育成」に焦点を当てた。人材育成力(FD・SD)、人事制度、事務組織のあり方を中心に、池田輝政名城大学副学長・理事の講演、同協会附置私学高等教育研究所事務局改革調査チームによるパネルディスカッション、金沢工業大学の事例発表、文部科学省の河村潤子私学部長の講演、そして、班別の研修が三日間にわたり行われた。
 はじめに、小出忠孝同協会副会長・中部支部長(愛知学院大学学院長・学長)、香川担当理事、丸山委員長の挨拶。続いて、小出秀文同協会事務局長による私立大学を取り巻く諸情勢と当面する重要課題の解説があった。
 池田副学長の講演では、「大学戦略マネジメントに求められる人材育成力」と題して、新しい組織マネジメントのかたちについて話題の提供があった。
 「掲げた目標を組織で共有できないなら、戦略は存在しない」。池田副学長は、まず、組織内での戦略の浸透の重要性を論じた。戦略は構成員に共有されてはじめて意味をなす。また、戦略のメリットは、事業の持続性とリーダー不在でも組織が機能する点でもある。
 最後に「いい仕事が人を育て、いい人が仕事を創る。OJT(業務訓練)からOJD(業務開発)への転換が必要である」と組織と個人の新しい関係を強調した。
 講演後、「戦略に職員が主体的に関わることが大事だが、ボトムアップの要望・意見をどう吸い上げるのか」などのフロアからの質問に応じ、「五〜一〇年かけて、まずはトップダウンで徐々に戦略を浸透させていく。組織の目標と現場の日常業務のベクトルのすり合わせは各人が行う必要がある」と回答した。
 翌日は、「私大マネジメント改革を担う新たな職員像」と題して、私学高等教育研究所研究員の篠田道夫日本福祉大学常任理事、坂本孝徳広島工業大学常務理事・副総長・教授、石渡朝男和洋女子大学理事・事務局長がパネルディスカッションを行った。
 まず、職員の育成・役割・開発力についてそれぞれ講演。その後、参加者からの質問や意見を通して、厳しい大学経営を担う新たな職員像を明らかにした。
 「職員の、社会への感度や問題意識が大学のレベルを規定する」。篠田常任理事は、まず、現場の職員の重要性をこう述べ、職員一人ひとりが持つ問題意識と分析が大学への改革提案に結びついて、それがどのように実現していくのか。現場での取り組みを組織的に行える人づくりが大事であると述べた。
 坂本常務理事は、理事会の明快な計画や方針を提示することが不可欠であると力を込めた。
 経営計画の立案と執行の実務を担う職員の能力が改革の成否を決める。
 職員に求められる力量は企画力と調整力。協働の文化を育むことにある。より多くの構成員が「共に働く」ことにより、より深く積極的に関与している組織を目指すべきである、と締めくくった。
 石渡理事は、目標管理について、「組織が持つ事業目標と計画の策定。法人、部門、個人の事業目標と事業計画が鎖のようにつながっていることが大事」と述べた。目標管理は、目標の共有化や自己実現の動機づけとなる。なにより、個人力と組織力が強化される。
 休憩を挟んでのディスカッションでは、事前に集めた参加者からの質問に答える流れで進行。「管理職の力量形成」を問われた石渡理事は、「研修制度だけでは効果が発揮できない。資格取得のような制度と連関させて、研修を評価、処遇まで結びつけて育成することが大事だ」との考えを示した。
 坂本常務理事は、各部課署が蛸壺にならないような総合的な判断を業務の中で身につけさせることが重要であると述べた。
 篠田常任理事は、課長補佐クラスを活用し、現場の状況に見合った大学の方針に沿う提案をしていく風土の醸成が大事。年功序列型から成果型にと強調した。
 三講師に共通するのは、個人の力量の向上のみならず、チームワークで業務を遂行することの重要さである。それを坂本常務理事は「協働文化」と言い、石渡理事は、「組織能力」と言った。そして、チームワークの要となるのが、何を成し遂げたいのかという組織の目標と戦略である。
 最後に篠田常任理事は、「使命感、働き甲斐、やりがい、熱意を考える」こと、石渡理事は、「学生目線に立った論理、外から大学を眺める視点や外部の意見を大切にする」こと、坂本常務理事からは、「指示待ち、前例墨守ではなく、改革を行う姿勢を経営者サイドの態度によって示す」ことなどを強調した。
 次に、金沢工業大学常任理事の村井好博企画調整部長から、「金沢工業大学における教職協働について」と題した講演があった。
 教育付加価値日本一の大学を目差す金沢工業大学は、徹底した補習教育やプロジェクト学習(夢工房)などで知られる。
 村井部長は、「大学の顧客は?商品は?他大学との違いは?そもそも大学とは?こうした素朴な疑問を問い続けて改革を続けてきた」と、これまでの改革の歩みを披露。ビジョン、学生への期待や行動規範、目標を徹底して明確化・定義づけすることで、緻密で頑強な組織を形成してきた。
 具体的な教職員の共同作業として、合宿形式のFD研修会を行い問題意識の共有と改善を図ったり、目標の共有化を行なっている。
 また、職員に必要なスキルとして、アセスメントスキルを挙げた。実態を把握するアセスメントのスキル向上を第一目標としたため、職員が大学の状況を多角的に分析できるようになったと述べた。
 文部科学省高等教育局の河村潤子私学部長は、高等教育機関を取り巻く情勢や教育GPなどの競争的資金や留学生三〇万人計画、大学の経営相談、「学士課程教育の構築」など中教審の動向を多岐にわたって紹介した。
 最後に、同研究委員会副委員長の池原喜忠名城大学常勤理事の閉会の挨拶で、三日間の日程を終了した。

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