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平成20年10月 第2333号(10月1日)

有用性や評価など議論
  「海外体験学習」研究会

 去る九月二十三日、「大学教育における海外体験学習」研究会は、神戸親和女子大の三宮サテライトキャンパス(神戸ミント)において、二〇〇八年度研究大会を開催した。
 研究会では、ホスト校の関西国際大学の濱名 篤理事長・学長らの開会の挨拶の後、はじめに、大阪女学院大の田中義信准教授による「海外体験学習とは何か」と題した基調講演が行われた。
 さまざまな名称や形態、内容を含む「海外体験学習」の目的、強調点、達成目標などについて、同研究会のあゆみやユネスコの「国際教育勧告」等を基に述べた。また、平成十九年に恵泉女学園大が関東地区の大学に行った『海外における体験学習の実態基礎調査』を紹介し、体験学習の重心の置き方について述べた。同調査では、体験学習を@インターンシップ型、A短期フィールドスタディ型、B長期フィールドスタディ型、C日本語教育実習型、Dボランティア活動型、Eその他(複合型など)に類型化している。
 続いて行われたパネルディスカッション「海外体験学習のマッピング」では、国際基督教大の村上むつ子氏、恵泉女学園大の齋藤百合子氏、桃山学院大の磯 晴久氏の三氏が、それぞれの大学の体験学習の目的・内容・評価等を紹介し、他大学との相違点を明らかにした。
 参加者からは、「学内でのプログラムに対する同意経過はどのように行われたのか」、「評価において教職員の連携はどのように行われているのか」等、積極的な質問が多数あった。
 その後行われたシンポジウムでは、「海外体験学習の可能性と多様性」をテーマに、@「オプショナル/アドオン型海外体験学習:中央大学総合政策学部の事例から」和栗百恵氏(大阪大グローバルコラボレーションセンター)、A「専門教育課程の中に体系化された海外体験学習」大橋正明氏(恵泉女学園大人間社会学部教授)、B「ペタゴジー(教育論)としての海外体験学習―andragogyにむけてのpedagogy―」伊藤高章氏(桃山学院大社会学部教授)の三氏が、それぞれの諸観点から海外体験学習の有用性等について述べた。
 その中で、和栗氏は、選択されている(アドオン型)海外体験学習の特徴的な有用性について、中央大学総合政策学部のプログラムを事例に、詳細な分析を行い、「意図的にアドオン型」と「とりあえず送り出す」は異なることを示した上で、海外体験学習は、@事前事後の学習と組み合わせられた時に、学習意欲やスキル・態度・知識の獲得に効果的、A学部や大学が掲げる学習効果・目標との明確な関連付けが必要であると述べた。
 また、伊藤氏は、海外体験学習導入の意義として、学習意欲低下等の大学教育における課題を背景にリメディアル効果の高い学習形態であること、また「自己主導型学習」(Self-Directed Learning:以下SDL)の重要性を示した。そして、SDL理論に基づく具体的カリキュラムとしての「海外体験学習」においては、「学習共同体」が重要であると述べた。
 パネルディスカッションに引き続き、会場からは多くの質問や意見があり、パネリスト及び参加者の活発な議論の場となった。
 学内関係者に体験学習の有効性を伝えるにはどうしたらよいかという質問に対し、パネリストからは、@プログラムを大学や学部のミッションと結びつける、A担当している教員の手腕に依拠しているプログラムの客観性を示す必要があるなどといった意見があった。
 最後に大橋氏が、「費用が高くより厳重な危機管理であるプログラムゆえに、明確な評価が求められている」と閉会の挨拶を述べ、大会を終了した。
 なお、同研究会の呼びかけ大学は次の通り。恵泉女学園大体験学習CSL・FS委員会、国際基督教大学サービス・ラーニング・センター、大阪女学院大体験学習委員会、桃山学院大国際ワークキャンプ実行委員会、清泉女子大地球市民学科、早稲田大平山郁夫記念ボランティアセンター、関西国際大サービスラーニング室・同推進室、大阪大谷大人間社会学部、東京国際大国際関係学部、大阪大グローバル・コラボレーションセンター

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