平成20年9月 第2332号(9月24日)
■研究費公募要領等の説明会開く 制度概要・21年度の変更点など解説
文部科学省は、平成二十一年度の科学研究費補助金(以下、科研費)の公募に当たり、全国の関係研究機関を対象として「平成二十一年度科研費公募要領等説明会」を日本学術振興会(JSPS)と合同で、全国八会場において実施している。
去る十八日(木)には、東京大学本郷キャンパスの安田講堂で、関東・甲信越地区の大学等関係機関を対象に開催した。
同説明会では、科研費制度の概要、公募要領、不正使用等の防止等を中心に午前は主に実務担当者向けに、午後からは主に公募要領等を説明した。
はじめに、文科省研究振興局の石田雄三学術研究助成課課長補佐から説明会の趣旨・目的等、科研費に対する理解を求める挨拶があり説明に入った。
科研費制度の概要
▽科研費は競争的研究資金の四〇%を占める
我が国の科学技術関係予算約三兆六〇〇〇億円のうち、研究者が提案して審査を受ける競争的研究資金は四八一三億円。その約四〇%に当たる一九三二億円が「研究者の自由な発想」に基づく科研費である。
その主な特徴は、人文・社会科学から自然科学までの全ての研究分野が対象で自由な研究を支援する。また、ピア・レビューによる公正で透明性の高い審査・評価システムを構築し、研究費の使途には柔軟性を確保。併せて、不正使用等に対し、補助金の返還や一定期間の応募資格停止など厳しい対応をしている。
予算額の推移を見ると、近年の厳しい財政状況の下で伸びが鈍化している。また、応募件数は十九年度には前年度より「新規分」が約一〇〇〇件減って、「新規分+継続分」の合計が一三万二〇〇〇件であった。
そのほか、公募から内定までの流れ、審査方法(二段階審査)や審査員の決め方など審査概要等が説明された。
配分機関・研究機関・研究者の役割
▽三者の役割がうまくかみ合わないと科研費は機能不全に陥る
文科省・JSPSは研究機関に対し「研究機関使用ルール」を、研究者に対し「研究者使用ルール」を提示している。研究機関においては、研究者の応募資格の確認、補助金の経理・管理、研究者からの要望への対応など、応募者(研究者)の支援をきめ細かく行うこと、また、研究者は選定された研究の着実な実施、研究成果の発信等を行うことが求められる。
特に、研究機関(事務担当者)の重要なポイントは、補助金が交付された場合に、その研究活動を当該研究機関の活動として行わせること、機関として補助金の管理を行うこと等である。具体的には、応募資格の確認及び研究者名簿への登録、応募書類(研究計画調書)の提出、応募者への審査結果の通知、交付申請書の取りまとめを提出、研究者からの間接経費の受入れと経費執行、直接経費の管理と経費執行、実施報告書の取りまとめと提出など多岐にわたる。
なお、配分機関が定める使用ルールは補助金を取り扱う上で基本となることのみであり、具体的な基準(旅費の日当・宿泊費、謝金単位等)は、各研究機関が自ら定め、使い勝手を良くすることができる。
直接経費・間接経費
▽直接経費とは、研究代表者及び研究分担者が当該事業の遂行に必要な経費及び研究成果のとりまとめに必要な経費
直接経費の対象となる経費は、物品費、旅費、謝金等、その他(上記のほか、当該研究を遂行するための経費)である。また、間接経費を使用することが適切な経費や特別な場合を除いて他の経費と合算して使用したりすることはできない。
研究機関では、「研究者使用ルール」や独自に定めているルールに照らして経費の執行・管理を行うことが求められる。
なお、科研費の柔軟な使用ができるように制度改善が行われており「研究のために必要であって支払えない経費はほとんど無い」と言われている。
▽間接経費とは、競争的資金を効率的に活用するため、研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費
平成二十年度までに、特別推進研究、基盤研究(S・A)、学術創成研究費、若手研究(S・A・B・スタートアップ)、基盤研究(B・C)など、ほとんどの種目に措置されている。
以上のほか、科研費の年度間繰越について、また、不正使用防止についてでは、特に「預け金」等のチェックが必要である。
21年度の公募内容等
▽「萌芽研究」を「挑戦的萌芽研究」に変更など
●研究種目の移管=「特別推進研究」の公募・審査を文科省からJSPSに移管した。
●研究種目名の変更=「萌芽研究」を「挑戦的萌芽研究」として、一人または複数の研究者で組織する研究計画であって、独創的な発想に基づく、これまで以上に斬新性・チャレンジ性を重視するなど評価方法を見直す。なお、平成十九年度及び二十年度に「萌芽研究」として採択された研究課題は、平成二十一年度は「挑戦的萌芽研究」として扱う。
●応募受付の完全電子化=新たに「基盤研究C」「若手研究A・B」の応募受付を電子化し、全ての研究種目の受付を完全電子化することになった。
●応募書類の提出期限=平成二十年十一月十日(月)
このほか、制度改善に伴い、次のような変更が行われる。
●英語版公募要領の作成=JSPSのホームページに公開し、我が国の研究機関に所属する外国人研究者等の応募の便宜を図る。
●「特別推進研究」の審査意見書作成者に海外の研究者を参画させる。
●「若手研究A・B」の応募年齢を緩和=これまでの「三七歳以下」から「三九歳以下」(昭和四十四年四月二日以降に生まれた者)に緩和する。なお、「若手研究スタートアップ」については、平成二十一年二月公募予定の「平成二十一年度科研費公募要領【若手研究〈スタートアップ〉】」による応募となる。
●継続研究課題の研究期間の短縮による新規応募の取り扱いの変更=原則として、継続研究課題を辞退して新しい研究課題を応募することは認められないが、研究が予想以上に進展し、継続研究課題の当初の研究目標を既に達成し、研究種目を変えて更なる研究発展を目指す場合には新しい研究課題の応募が可能となった。(その場合には、平成二十年十月二十七日キ(必着)までに当該研究課題完了届及び理由書を提出した上で、新しい研究課題に応募する。理由書が審査会で不適切となった場合には、新たに応募した研究課題は審査の対象外となる)
●研究進捗評価を次の審査に活かす仕組みの導入=研究計画調書に「研究計画と研究進捗評価を受けた研究課題の関連性」を記入する欄を新たに設けた。
なお、各種説明の中で、採択されるための科研費申請の書類作成の注意点等のアドバイスもあり、機関の担当初任者等にとっても科研費応募に向けて大いに参考となる説明会であった。