平成20年9月 第2330号(9月10日)
■生徒の学びを促進するには? 漢検が教師向けにスキル講座
「隣の方と二人組になって下さい。片方がインタビューをする人。もう片方がされる人。
インタビューをされる人は、成功体験や仕事のやりがい、嬉しかったエピソードなどを具体的に、細かく話して。インタビューをする人は、興味・好奇心をフルに発揮して、映像が目に浮かぶように質問して下さい。はい、スタート!」
二〇〇名を超える学校の教師が二人組となって、想い想いの成功談を話し始めた。表情が固かったが、次第に一人ひとりの「らしさ」が現れる。
これはアイスブレーキングと呼ばれる、参加者同士の緊張をほぐす簡単なゲームである。一方通行の講義ではなく、参加型の体験実習を行う前に、ウォーミングアップとして用いられる。体験実習を通じて、参加者同士で振り返りをし、気付き、学びあう過程を支援する役割を「ファシリテーター(促進役)」と呼ぶ。
数分ののち、今度は役を交代してスタート。終了時には、教師たちの顔には笑顔すら見え、すっかりと打ち解けていた。
これは、財団法人日本漢字能力検定協会(大久保 昇理事長)が去る八月二十日、東京・三田で開催した「教職員のためのファシリテーション入門講座」の一光景である。参加者は、全国から集まった小学校から高校までの教師。ファシリテーターは、「学習学」の第一人者、NPO法人学習学協会の本間正人代表理事。
なぜ、漢検の協会がこのような講座を行うのか。漢検受験者の七割以上は小中高校生。従って、合格率を高めるには教師の学習支援力がカギとなる。児童・生徒の主体的な学びを促すファシリテーション能力を高めてもらおうと、本間氏を講師に迎え講座を始めた。三年で全国からおよそ一二〇〇名が参加。満足度も高く、実際に授業で取り入れて成果を上げている参加者もいるという。
アイスブレーキングの後には、情報伝達の方法、ミニ・ディベート、ブレーン・ストーミングといった研修が双方向で進む。本間氏の軽快なトークも、参加者を引き込む魅力の一つ。ジョークを絡めつつ、「ディベートは、相手の立場に立つことが大事」、「自発性を引き出さないと人は動かない」など、タイミングよくポイントを指摘する。
ブレーン・ストーミングの体験実習では、「答えにくい質問への対処法」がテーマとなった。数名一組に分かれ、制限時間内に出たアイディアの数を競う。会場は大いに盛り上がり、奇抜なアイディアが飛び交った。講座終了時には、参加者同士が挨拶をする場面も。本間氏が述べたように、参加型研修は、人と人とが知り合う機会でもある。
「学習学」は、従来の教育学との対比で説明される。教育学では、「学習者」は受身で教わり、「指導者」は講義形式で知識を教えるが、学習学では、「学習者」は自ら主体的に学び、「指導者」は、集合研修の中で学習者の学びを促進(ファシリテート)する。