平成20年9月 第2329号(9月3日)
■神奈川大80周年記念講演 小柴氏から若者へ 科学が拓く未来を語る
神奈川大学(白井宏尚理事長、中島三千男学長)は、去る七月二十九日、同大学創立八〇周年記念行事の一環として、ノーベル物理学賞を受賞された小柴昌俊氏((財)平成基礎科学財団理事長・東京大学特別栄誉教授)の講演会を開催した。
当日は、折りからのゲリラ豪雨の悪天候の中、多くの小・中・高生らが多数詰め掛け、同氏の「〈科学が拓く未来〉研究者が若者に語る、宇宙・人間・素粒子」の話に熱心に耳を傾けた。
同氏は、まず、広大な宇宙の話から始め、「大きいものは望遠鏡などで調べることができ、この宇宙は約一三七億年前の大爆発(ビッグバン)で広がりつつあり、素粒子や反粒子ができたり消滅したりしている世界である」と説明し、一方、「高性能の顕微鏡でも見ることのできない原子の構造やさらに極小の素粒子など、その姿を見ることはできない。しかし、上空を高速で飛行する飛行機は見えなくとも、飛行機雲は見ることができ、その前方に飛行機の存在が確認できる」との例を引合いに、ニュートリノについても、その存在を確認する方法を研究してきたと語った。
同氏は、水分子が二つの水素原子と一つの酸素原子で構成され、その水素の原子核は陽子であることから「ニュートリノが陽子と衝突し、陽子崩壊する際に発する光の検出」を研究してきた。
こうして、岐阜県の神岡鉱山跡地の地下一〇〇〇メートルに三〇〇〇トンの水タンクを作り、約一〇〇〇本の光電子増倍管を設置した“カミオカンデ”を完成させた。
一九八七年からの同施設の本格稼動から二か月後、地球から一六・四万光年離れた大マゼラン星雲内の超新星爆発によって放出されたニュートリノを、世界で初めて観測したのである。
このように、同氏はニュートリノ天文学という新しい学問分野を切り拓かれ、二〇〇二年にノーベル物理学賞を受賞されたのである。
講演後には中・高生から「今、先生が目標にしていることは何ですか」「先生が高二の頃は何をされていましたか」などの質問があり、わかり易く熱心に答えるなど、若者たちに熱いメッセージを伝えた。