平成20年9月 第2329号(9月3日)
■体制整備進む 大部分占める人件費が課題
文部科学省の科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会大学知的財産本部審査・評価小委員会は、このたび、「大学知的財産本部整備事業」事業評価結果報告書を取りまとめた。同事業は、知的財産の創出・管理・活用という大学の新機能を実施する体制を整備し、「知的創造サイクル」の実現を目的とするもの。評価結果の概要は次の通り。
一、知的財産の創出・管理・活用の基盤整備
@体制の整備
副学長等をトップに据えた知的財産本部を整備するなど、知的財産の創出・管理・活用までをワンストップ・サービスで行う基盤体制が構築された。海外主要大学と伍した産学官連携体制構築や組織的な共同研究推進、積極的な民間資金獲得等が行われた。
A学内組織・学外機関(TLO、自治体、産業団体等)との連携
承認TLOとの連携強化や一本化など、技術移転機能が最適に発揮できる体制の再構築が進みつつある。学外機関との連携は自治体が仲介役となり、実施機関と自治体との連携が盛んに行われている。
B外部人材、教職員等人材の活用状況
外部人材の人件費の約七割は同事業委託費により措置。内部人材の計画的な育成・確保が必要。蓄積されたノウハウを着実に継承していくため、専門若手人材の育成が急務である。
二、体制整備による効果・成果について
@実施機関の実績・成果
ほとんどの実施機関で、産学官連携・知的財産・利益相反の各ポリシー、職務発明規程、発明補償規程等の基本的な学内規程が策定された。共同研究件数等は、増加量や増加率が非実施機関を上回る。国立大学等の共同研究一件当たりの受入額実績、大学等の国内民間企業からの受託研究の受入額、外国企業との共同研究実績及び受入れ研究実績は依然として低水準。
A大学等の教育・研究力向上
教職員や学生の知的財産意識が向上。実施機関の多くで産学官連携活動を評価項目の一つとした。共同研究等で開発された技術が、応用分野や他分野の研究で活用された。
B他大学への成果普及等
知的財産に関する研修会開催により、非実施機関に成果が普及。シーズ集を作成し、ホームページに公開している大学もある。
三、改善点・問題点
知的財産本部費用の大部分を人件費が占める。また、特許出願経費などの特許関連経費が増加。同事業による財源が約四割を占める状況。事業終了後の自立体制整備が求められる。