平成20年9月 第2329号(9月3日)
■インストラクショナルデザイン 学士課程教育構築の方法論になるか?
教育の真のニーズを満たすため、学習の効果・効率・魅力の向上を図る方法を「インストラクショナルデザイン」という。メディア教育開発センターでは、去る八月十九日、「eラーニング開発セミナー―インストラクショナルデザイン入門」を開催、内田 実同センター特定特任教授が主にeラーニング開発を想定したインストラクショナルデザインの考え方などを解説した。現在、教育効果を数値化できる方法として注目を集めている。
インストラクショナルデザインは、eラーニングの構築に必須な技術として認識されているが、教育ゴールの明確化から始まり、開発、実施、そして評価を行うサイクルは学士課程教育の構築・実質化にも有効な方法論と言える。企業内教育においても、教育効果を数値化できる方法として注目されている。
インストラクショナルデザインでは、教育の過程をシステムと捉え、従来のように教員それぞれの経験や技術、教科書から教育内容が決定することはない。例えば、学習者に高い学習成果が得られない場合には、その原因を「受講者の努力」に求めるのではなく、「研修プログラムの改善」に求める。
具体的には、PDCAサイクルと同様の「ADDIEプロセス」等に基づいて行われる。「ニーズ調査(Analysis)」、「設計(Design)」、「開発(Development)」、「実施(Implement)」、「評価(Evaluation)」、そして「ニーズ調査」に戻るプロセスで、ADDIEはそれぞれの頭文字を取ったもの。
特に、高等教育機関においては、まず、学生や社会のニーズの把握を行い、大学のビジョンやミッションに基づいた人材のイメージを決定する。そのイメージを実現する教育を体系化してシラバスを構築する。それぞれの講義については、どのような手法で教育を行うか(対面教育、eラーニング、インターンシップ等)、教材は何を使うか等を決定し、実施・評価してフィードバックする。
熊本大学大学院の教授システム学専攻など、インストラクショナルデザインを手がける専門職の育成コースも開設され始めている。
内田特定特任教授は、特に初期分析について詳しく解説し、「今後、人材イメージや教育のゴールをできるだけ詳細に明確化できた大学が生き残るだろう」などと主張した。