平成20年8月 第2328号(8月27日)
■障がい者支援、環境問題、人材育成… デザインが社会を変える
大阪芸術大学(塚本邦彦学長)のデザイン学科が公認するスマイルデザイン研究会では、学生が環境や社会の課題を発見し、調査研究を行い、問題解決のアイディアを発想して実行するプログラムを行っている。
これまでのデザインは「売ること」だけに重点がおかれ、人の欲望を増幅させてきた。その結果、自然環境の破壊や様々な社会問題を引き起こしてきた。こうした問題の解決とともに、誰もが安心して笑顔になるデザインを目指したいと、二〇〇七年二月に研究会が発足。当初一六人であった学生メンバーは、現在五〇人にまで増えた。
活動の一つに「スマイルデザインプロジェクト」がある。学生や若手クリエイターの育成、障がい者の自立及び環境や社会の問題を、デザインのパワーで一挙に解決しようと、NPOと共同で行っているものだ。具体的には障がい者の製造した環境配慮型商品を企画・制作及び販売している。
まず、障がい者のできること、あるいは可能性を調査分析し、商品の製造工程も考える。より簡単で早く製造する道具を開発して、今までできなかったことができる工夫をしている。
製造段階からデザインを考えることにより、学生は本当の意味で社会に必要で実現可能なデザインを考えるようになる。単に自分の好みや考えだけでなく、色々な情報を元にデザインをしていかなければならないことを体験を通して学んでいく。例えば、障がい者が自立するには、より付加価値が高い商品を販売する必要があるため、環境に配慮した商品を企画し、社会のためになるデザインを目指した。
価格や製造原価など流通のしくみや市場を知ることで、社会におけるデザインの役割も理解していく。これらの活動をNPOと連携することで、持続可能な活動にしている。
製造を依頼するにあたっては、学生自身が作業所を訪問し、施設の担当者と打ち合せを重ね、障がい者が製造できるように設計する。また学生は、商品のプレゼンテーション、バイヤーとの交渉なども団体や企業の支援を受けながら、実践的に行っている。
開発した商品は、国内最大のデザイントレードショーである「100%Design Tokyo」などの大きなイベントで発表し、販路拡大に繋げている。
また、ビジネスモデルを競う学生の国際的なプレゼンテーションエキシビジョンである「SIFE」国内大会で優勝。総合的デザイン評価・推奨を行う機関である二〇〇八年度グッドデザイン賞の新領域部門にもノミネートされている。
学生は自分達がデザインを学ぶことの意味や、自らの行動が生み出すものによって、世界を変えることができることを理解し、表現の自由とそれに伴う責任を、経験を通し学ぶことによって大きく成長している。