平成20年8月 第2328号(8月27日)
■eラーニング教材共有へ始動 安価で豊富なリメディアル教材などが目玉
メディア教育開発センター(清水康敬理事長)は、去る八月十三日に開催されたeラーニングセミナーの中で、二〇〇九年度から本格配信する「UPO―NET(オンライン学習大学ネットワーク:Association of Universities for the Promotion of Online Learning)」のeラーニング教材共有サービスについて説明、実際に教材を使いながら、セミナーに集った参加者にUPO―NETへの参加を呼びかけた。
「教材体験ページを表示すると、分野やコースの一覧が表示されます。教材を表すリンクを選択して、教材の構造ページを「エンター」すると教材の利用ができます」
UPO―NET教材の試用体験タイム。体験ページには、「高校数学」や「英語」などが表示されている。その一つを選択すると、説明文、図解や解説の音声が流れる。「演習」は、クイズ形式になっていて、正しい選択肢を選んで進めていく。参加者は思い思いの教材を試しつつ、カチカチとマウスを滑らせた。
UPO―NETは、大学のeラーニング拡大のため、多くの大学が利用できるeラーニング教材を提供することを目的として開発されている。eラーニングに積極的に取り組んでいる大学や同センターが作成したコンテンツを広く大学に提供、共有する仕組みづくりを進めている。
日本の大学におけるeラーニング事情は、諸外国に比べ遅れている。その理由には、教材の作成やシステムの構築にコストがかかる、専門の人材がいない、使いたい教材がないことなどが指摘されている。
このことから、同センターでは、安価な教材を提供するため、学習管理システムは無償の「moodle」を採用し、教材は広く大学間で共有するUPO―NETを構想、昨年十一月に一〇六大学の教職員により設立した。
現段階では、リメディアル教育とキャリア教育において教材の開発・収集を行っている。学習指導要領で規定され、分野別、学力別となっている中・高校の学習内容は教材化しやすい、また、どの大学でもニーズがあるからである。
登録をすると、UPO―NETで収集された様々な教材の中から、自大学に適した教材を組み合わせて利用することができる。学生一人ひとりの学習記録・進捗状況、テストの成績などは教材と分離され、自大学のサーバーに記録される。現在、中・高校の物理や数学、英語、情報倫理、就職・資格試験などの教材が試験配信されている。
セミナーでは、同センターの小野 博教授、杉山秀則助教によるUPO―NETの解説のほか、千歳科学技術大学の小松川浩教授と(株)アートスタッフの久富京太郎氏がeラーニングと学習支援の事例発表を行ったほか、全体会議において講師と参加者による質疑応答の時間などが持たれた。
eラーニングは教員が楽をするために導入すると失敗する。「eラーニングこそ人である」と金沢大学の鈴木恒雄教授が主張するように、教材さえ揃えば学生は自主的に学習するわけではない。「終了しないと試験が受けられない」、「勉強の成果を誉める」など、学生がeラーニングを継続的に行う支援と労力が必要となる。小松川教授が、eラーニングのメリットとして「自学自習の環境での学習者の状況の把握が可能な点」と挙げているが、導入の目的は従来よりもきめ細かい学習指導であるべきである。
UPO―NETは、同センターのホームページ(www.nime.ac.jp)からアクセスできる。試験配信を行っているページでは、会員登録(無料)をすれば誰でも試用ができる。