平成20年8月 第2327号(8月20日)
■清掃工場の驚きの"資源" 廃熱利用し熱供給
夏に冬の寒さがあれば…、冬に夏の暑さがあれば…、と誰もが思うだろう。この時間的ギャップを埋める技術を蓄熱技術と呼ぶ。実は古くから存在し、氷室や雪室がそれである。冬季の氷や雪を小屋に蓄え、冬以外の季節に利用していたのである。蓄熱技術は、今もエネルギーの有効利用には欠かせなくなっている。
一方、リサイクルの浸透で、ごみ排出量もここ数年は減少傾向にあるが、排出量そのものは相当な量であり、大半が清掃工場にて焼却される。この時発生する大量の廃熱は有効利用できておらず、特に二〇〇℃以下の低温廃熱は、発電に利用することもできず、利用価値は低いとみなされている。しかし、この低温廃熱は、冷暖房には十分に利用可能である。
日本において、清掃工場などで発生する低温廃熱を回収し、潜熱蓄熱材(PCM:物質の相変化時(固体―液体など)に吸放出される熱、すなわち潜熱を利用して蓄熱する材料)に蓄えて、オフライン、つまり、配管などを通さずに、トラックにて熱輸送をし、熱供給を行うシステムが研究され始めた。企業数社が試験運転を行っているものの、普及にはまだ遠く、研究の蓄積が必要となる。
大阪電気通信大学(都倉信樹学長)工学部環境技術学科の添田晴生講師の研究室では、これまで、PCMの熱伝導、PCMの応用、空調システムのエネルギー評価を行っており、今年からPCMを利用したオフライン熱供給システムの研究をスタートさせた。大学近隣の清掃工場からの廃熱をオフライン熱供給するときの最適システムを調べ、システムの実現可能性を調査することが特徴。この研究がオフライン熱供給システム普及の一助となり、最終的に地球温暖化の緩和に少しでもつながれば、と添田講師は考えている。
地球温暖化、原油の高騰などが叫ばれているが、たくさんの熱エネルギーが活用されずに捨てられているのが現状だ。エネルギーの中でも最も質が低く、扱いが難しい、このエネルギーを上手く活用できれば、飛躍的な省エネルギーにつながるだろう。