平成20年8月 第2327号(8月20日)
■「学校教育におけるキャリア教育」
神奈川大でシンポジウム
神奈川大学(中島三千男学長)の高大連携協議会(会長:中島学長)は、去る八月五日横浜キャンパスにて、第三回「学校教育におけるキャリア教育」シンポジウム―高校における実践と課題―を開催した。
同協議会は、キャリア教育を通じた高校教育と大学教育の接続を目的に、一昨年よりシンポジウムを開催している。
中島会長からの開会の挨拶の後、経済産業省経済産業政策局産業人材政策室の下村貴裕室長補佐による、「若者が社会で活き活きと活躍するための人材育成のあり方とは―人間力を育むための手がかり:社会人基礎力」と題した基調講演があった。「社会人基礎力」を中心に経産省が取り組むキャリア教育の推進策について現状理解を促進させる内容となった。
続いて、高校における三つのキャリア教育の実践例が紹介された。
一つ目は、東京都立豊島高校の丑久保英世教諭による「総合的な学習の時間でのキャリア教育への取り組み―ジョブシャドウによる企業での体験学習」と題した事例である。同校は大部分の生徒が大学等に進学する普通科高校で、キャリア教育は「総合的な学習の時間」を利用して行われている。六年前から、ジュニア・アチーブメント日本(一九九五年設立。本部はアメリカ)の体験型実技演習プログラム「ジョブシャドウ」を導入。事前学習、企業での体験学習、事後学習の様子を具体的に紹介した。
二つ目の事例は、神奈川県立横浜清陵総合高校の長瀬右文総括教諭による「横浜清陵総合高校におけるキャリア教育―特色科目を軸にして」。同校は平成十六年開校の単位制総合高校で、「個性に適した進路選択の実現」という学校経営理念により、「産業社会と人間」、「コミュニケーション」、「総学・視点」、「課題研究・探求」の四科目を必修にし、キャリア教育の軸に据えている。科目の具体的な内容は、二年生女子三人、三年生男子三人、卒業生男子がそれぞれ発表した。生徒たちのプレゼンテーション能力の高さに学習成果が垣間見えた。
三つ目の事例は、神奈川県立田奈高等学校の吉田美穂教諭による「重層的キャリア教育―地域のさまざまな資源を生かして」。同校は創立三一年目の普通科高校で、学力面、経済面で問題を抱える生徒が多いことが悩み。卒業生の進路は「進学」「就職」「未定」にほぼ三分されることから、生徒一人一人に適したキャリア教育が求められている。同校でもキャリア教育は「総合的な学習の時間」を利用し、「進路研究・生活研究」、「中央大学との連携授業」などの科目が行われている。地域の職場や大学などを活用した重層的なキャリア教育が実践されている。
最後にパネルディスカッションが行われ、パネリストとして、@経産省の下村氏、A(株)ベネッセコーポレーションの教育研究開発本部研究推進担当部長の牧田和久氏、B文教大学情報学部専任講師の新井立夫氏、C神奈川大学工学部教授の西久保忠臣氏、D主婦の飯塚香奈氏が登壇。さらに事例発表を行った三名の高校教諭やフロアを交えた活発な議論が行われた。
主な意見として、高校におけるキャリア教育を推進する上で、公立高校の教諭の異動が問題視され、熱心な教諭の異動によって弱体化するような取り組みではなく、組織的なキャリア教育の推進が求められる、卒業生にキャリア教育への要望事項を調査したところ二〇年前の調査結果と変化がなかった、つまり二〇年間何も改善してこなかったことなどが指摘された。