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平成20年7月 第2325号(7月23日)

平成20年度「通商白書」 経産省が60回目

三つの市場を創造 世界経済は転機 アジアと共に発展戦略

 経済産業省はこのほど、平成二十年版「通商白書」をまとめ閣議で報告した。同白書は世界経済の動向、及びこれを踏まえた内外経済政策の在り方を分析したもので、本年が六〇回目の報告となった。
 平成二十年版通商白書の概要(問題意識)をまとめた。
 世界経済が大きな転機を迎える中で、我が国がアジアとともに世界経済の持続的発展を先導するための、新たな「発展戦略」を展望。世界経済の新たな発展の基軸であり、かつ、我が国産業の新たな事業活動の舞台となる、三つの「市場創造」を主導することが要点となる。
 1 困難に直面する世界経済と「五〇億人」市場による新たな発展への展望
 □世界経済は足下で大きな困難に直面
 米サブプライム住宅ローン問題による金融面での動揺が、米欧等の実体経済に波及している。
 中国等新興国の経済成長を背景に、資源・食料価格が高騰しインフレ圧力が増大。この二つの連関するリスクは、世界経済の「一体化」かつ「多極化」する現状を反映している。
 □「五〇億人」の新・世界市場の出現
 「一〇億人」の先進国に加え、「四〇億人」の新興国が大きな存在感を持つ。
 新興国相互のつながり(「南南貿易」・「南南投資」)が深化し、その消費・投資が相互連鎖的に拡大(新たな好循環の原動力)を注視したい。
 新興国の自立的発展のためには、バランスのとれた需要構造・産業構造の確立が必要。
 □新興国経済との結び付きを深めつつある日本経済
 日本企業も拡大する新興国市場におけるビジネス拡大に挑戦中。二〇〇七年の輸出は中国で二割、インド・中東で四割、ロシアで五割伸長している。
 新興国企業もより積極的にビジネスを拡大しており、競合が激化している。
 2 世界経済の新たな発展を先導する「アジア大市場」の創造
 □「三〇億人」のアジアの「価値創造拠点」としての一体化を展望
 アジアでは「東アジア生産ネットワーク」が深化・拡大(GDPは米・EU並に拡大)している。
 主な最終需要先である米国の消費等が調整局面へ。アジアでは、米欧に出遅れた域内消費の活性化を含め、バランスの取れた需要構造への転換、産業構造の高度化が急務である。
 所得の向上で、我が国とも共通の指向を持つ「一大消費市場」としての発展も展望。アジア新興国の日本からの消費財輸入は、今世紀、年平均一三・二%成長(米国からは同三・四%)。
 中国・インド等での産業発展、人的資本形成が進む中で、ヒト・カネ・ワザ・チエを域内で還流・融合することで「知識創造」を促進(「アジアイノベーション」)している。
 中国:IT製品を含む、製造業の実質付加価値で、日本を抜いて第二位に(二〇〇六年)になった。
 インド:ITを活用した多様なサービス(金融、R&D等)の供給拠点に進化している。
 3 「地球的課題」に対応する「持続的発展のための市場」の創造
 □「地球的課題」を我が国産業のビジネスチャンスへ
 環境、資源、食料、水等の「地球的課題」の解決と経済成長を両立。「課題先進国」としての経験で培ってきた日本の技術やシステムを活用し、課題解決。
 我が国のインフラ産業、プラント産業等が「ソリューションプロバイダー」産業として積極的に国際展開することを展望。
 □課題解決に向けたイノベーションを促進する「市場構造」の確立
 気候変動:優れた産業技術の移転、革新的技術開発の促進。日本並みのエネルギー効率となれば世界のエネルギー消費量は三分の一まで削減可能である。
 資源:原油市場の安定(産消対話の推進等)、自主開発(戦略的資源外交の推進等)、技術開発等(省資源、代替資源・リサイクル)、消費国間連携(備蓄支援等)が求められる。
 食料:内外市場を睨んだ市場開拓の実現等(「農商工連携」の推進等)。川上から川下までの国際事業ネットワークの構築(JETRO等による支援)。
 水:海外の水道民営化市場に我が国の「省水型・環境調和型・循環型」水資源管理を展開。
 アジアでは六億人が水不足。汚染も深刻化(中国七大水系中、飲用水源にできる比率は四割以下)している。
 □アフリカの貧困解消にアジアの発展モデルを展開
 「一〇億人」のアフリカ市場は、欧米企業、中印企業と競う、新たなフロンティアとなる。
 4 持続的発展を主導する新たなグローバル戦略の構築
 □新たな世界経済の枠組み作りを積極的に主導
 グローバルな枠組みとしては、OECD等において、投資、競争政策、気候変動と貿易など新たな政策課題への対応を推進することで、WTOを中心とした自由貿易体制の維持・発展を補完。
 EPA/FTA等の締結に向けて取組む。
 東アジア包括的経済連携(CEPEA)構想については、民間専門家研究の最終報告がASEAN+6の経済閣僚及び東アジアサミットに提出され、今後の進め方について検討される予定。
 我が国は世界経済の成長センターであるアジアの発展に貢献し、アジアとともに成長すべく、以下の四つを目標に「アジア経済・環境共同体」の実現を目指す。
 @環境と共生しつつ発展するアジア 環境と共生しつつ経済発展を図る持続可能な社会の構築を目指す「クリーンアジア・イニシアティブ」の推進等。
 A成長をリードするアジア 人・モノ・資本・情報の移動を自由化し、生産ネットワークを強化。
 B中産階級のアジア 二〇三〇年までに域内人口の六割を中産階級に(消費市場の底上げ)する。
 C開かれたアジア 米欧やWTO・APECとの協力を深める。

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