平成20年7月 第2324号(7月16日)
■地域共創 ―地域の中の大学めざして―<下>
学んだもの、社会で活用 地道に、「継続は力なり」
北海道医療大学 飛岡範至氏
今回は、「当別町青少年活動センターゆうゆう24」(北海道医療大学ボランティアセンター)のボランティア活動による教育的効果について、卒業生・在学生の意見、感想を加えるとともに、地域の活性化、課題・今後の展望等について述べたい。
1、教育的効果
前回、「ゆうゆう24」のボランティア活動による教育的効果に触れたが、その効果が高いことは次の意見、感想からもうかがえる。
□私は学生時代にゆうゆう24のボランティアに参加して得たものがたくさんあります。その中でも特に「自分で考えて行動する力」を身につけることができたのではないかと思います。ゆうゆう24のボランティア活動は、職員のフォローはありますが学生に考えて行動してもらうことを大切にしています。責任が少々大きくなりますが、大学ではなかなか学ぶことの出来ない経験をボランティア活動を通して数多くさせてもらったと学生時代を振り返り思います。
□学生時代は子ども達と関る機会が少なく、障害を抱えた子どもに対する知識はほとんどなかった。ゆうゆう24で働きはじめてから子ども達と触れ合うことがごく当たり前となり、日々変化する状況をスタッフ間で協議し、子どもたちと触れ合うことの大切さや家庭の重要性を実感している。ゆうゆう24の活動を通して、得たものや学んだことは学生時代から社会に出た今でも自分の自信となっていると感じる。
□ボランティア依頼で託児サービスがありそこで参加した時、子どもと関る面白さ、自分自身も楽しめることなどの思い出が強く、良かったことがボランティアを続けるキッカケになったのではないかと思います。そして、ゆうゆう24で初めて知的障がい児と関りました。そこで、何を伝えているのか、何をやりたいのか、どう分かりやすく伝えてあげられるのか、どうしたら楽しめるのか…など、色々と考えたり学ぶことが出来、実際に経験して学べることは、私にとって、ゆうゆう24は大学生活を有意義にさせてくれ、自分自身が学べる機会、楽しめる場であると思います。
2、地域の活性化
(1)地域づくりの核として重要な役割
「ゆうゆう24」の最初の活動は、障がい児の一時預かりのサービス(レスパイトサービス)だった。設立の動機の一つに、在宅の障がい児がいる家族の力になりたいということがあった。
レスパイトサービスが国の児童デイサービスとして位置づけられ、社会福祉法人やNPO法人での実施も可能になった。そのため、「ゆうゆう24」は約三年間の活動実績を経て〇五年にNPO法人の認可を得て、国の事業を実施することとなった。
その後、近隣の江別市、新篠津村の障がい児やその家族などが利用。特に江別市の親からは、地元にも事業所設立の強い要望があり、〇六年に開設した。
また、「ゆうゆう24」は、町の活性化や町民と学生が交流できるように商店街の空き店舗を利用して設置したが、障がい者が制作した工芸品などの販売喫茶コーナーなども有しており、地域住民との交流の場としても活用されている点にも大きな意義がある。
なお、現在は本学在学中に開設に携わった卒業生が所長として運営しており、他の殆どの職員も在学中に関わった本学卒業生である。
(2)NPO法人化後
厚生労働省は〇七年度の事業として、「地域介護・福祉空間整備等交付金における新たな「共生型」基盤整備事業」を提示した。「建物の新築もしくは改修のための費用」で一件につき最大三〇〇〇万円の事業助成で、市町村が申請することが原則である。
「ゆうゆう24」ではこの事業の助成を受けるべく、精力的に当別町、商工会などと話し合いをすすめ、当別町の積極的な支援もあり申請した。当初一件の予定であったが、関係官庁に内容を高く評価されたことから、二件分六〇〇〇万円の助成が決定した。
一つは、地域の福祉活動の拠点で、当別町の福祉計画の中でも構想された「地域福祉ターミナル」に対応するもの。学生のボランティア活動の拠点としての機能や、高齢者や町内のボランティア活動の拠点となる。
もう一つは、障がいのある子どもの療育活動、障がい者の就労の場所、学生の実習の場、子育てのための交流研修の場としてなど、世代間の交流をかねた「地域のサロン」の拠点。福祉の拠点が町の中心部にできることで、地元商店街の活性化やまちのにぎわいづくり、さらには、本学学生の実習、ボランティア活動が一層発展することが期待されている。
3、終わりに
特に地方の私立大学の学生募集は厳しいが、地域への貢献、地域との共創は必要不可欠であることは言うまでもない。むすびにかえてこれまでの活動の見聞を踏まえ、気づいたことを記したい。
@活動状況を正しく把握し、全学的なコーディネート機能を有する組織体制、また、マネジメントできる人材養成が必要。大多数の教職員はミッションに対する理解を示すものの実際の運営では特定のスタッフに負担がかかる傾向があり、計画当初から役割分担を明確にしておく必要がある。
A教員評価において、地域社会への貢献にも高い評価を与えるなど、影で支える教員が報われる環境づくりが必要である。
B財政的裏づけがなければ取組を継続することは困難である。競争的資金の確保は大切であるが、助成終了後の取組継続を基本とする計画も策定しておくことが必要である。
ミッションを具現化する力となり、貴重な体験をした卒業生はその体験を基にさらに地域社会において貢献する。場合によっては大学の規模、身の丈に合った活動に縮小することも必要だろう。「継続は力なり」。地味でも地道な活動が本学のブランド化への醸成につながると信じてやまない。
(北海道医療大学学務部 飛岡範至)(おわり)