平成20年7月 第2324号(7月16日)
■平泉「世界遺産」見送り 「落選」は初めて 渡海文科相「大変残念」
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は七月六日(日本時間七日)、「平泉―浄土思想を基調とする文化的景観」(岩手県平泉町など)の世界文化遺産登録の見送りを決めた。日本は自然遺産と文化遺産合わせて一四件が登録されているが、「落選」は初めて。
「平泉」は、一二世紀に奥州藤原氏が仏教思想に基づき完成させた東北の政治・行政上の拠点。国宝の金色堂がある中尊寺、特別名勝の浄土庭園がある毛越(もうつう)寺など九つの構成資産からなる。
ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)は五月、平泉について「普遍的な価値の証明が不十分」などの指摘をして「登録延期」の勧告をした。今回、政府は「平和の希求」と「自然との融合」をキーワードにアピールしたが評価は変わらなかった。
世界遺産をめぐっては、日本からは「平泉」のほかに「古都鎌倉の寺院・神社ほか」(神奈川県)など七件の文化遺産と、一件の自然遺産(東京都・小笠原諸島)が暫定リストに記載されている。
内藤敏也・文化庁記念物課長は「平泉の浄土思想など日本独自の伝統や思想を、外国に理解してもらう難しさを感じた。(今後については)現実的には三年後の世界遺産委員会を目指すことになると思う」と話していた。
渡海文部科学相は「延期は大変残念だが、平泉には世界遺産にふさわしい価値があり、引き続き登録を目指して最大限の努力をしたい」というコメントを出した。