Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成20年7月 第2324号(7月16日)

課題多い留学生30万人計画 財政面の見直しなど必要

 一面に記載のとおり、去る八日に開催された中央教育審議会大学分科会において、「留学生三〇万人計画」に係る審議が行われた。当日は六月二十三日の同分科会留学生特別委員会での審議に基づいた「『留学生三〇万人計画』の骨子」とりまとめの考え方に基づく具体的方策の検討結果が説明された。その概要は次のとおり。また、この検討結果に対して同分科会の委員からは多様な意見が出された。

 〔留学生特別委員会での「とりまとめ」の概要〕
 「グローバル戦略」展開の一環として「留学生三〇万人計画」を位置づけ、二〇二〇年を目途に三〇万人を目指し、当面今後五年間で大幅な拡大を目指すこととする。
 T.優れた留学生の戦略的獲得
 (一)基本的な考え方:留学生の獲得がいかに我が国の科学技術・学術における国際競争力を高めたり、高等教育の水準を向上させたりすることに有効であり、大学等がそれぞれの個性・特色に応じて、戦略を構築し、留学生を獲得することが必要である。
 (二)戦略的獲得の対象:@アジア、A欧米先進諸国、Bアフリカ、中東諸国、中央アジアのNIS諸国など、Cオセアニア。
 (三)数値目標:数値目標の設定については、引き続き検討が必要。
 (四)日本留学に関する情報発信機能の強化(英国のブリティッシュ・カウンシルのような留学を専門に取り扱う機関の整備、英語のみならず、重視する国・地域の言語による情報発信など)。
 (五)戦略的に獲得するための大学間の共同・連携(複数の大学の連合体間の協定の締結や運用など)。
 (六)海外における日本語教育の充実(日本語教師の養成を強化、海外大学等の日本語・日本文化コースの充実など)。
 (七)外交戦略との連携(国費外国人留学生制度の戦略機動枠を積極的かつ柔軟に活用)
 U.留学生を引き付けるような魅力ある大学づくりと受入れ体制
 (一)優れた留学生獲得に向けたインセンティブの付与―日本の大学のグローバル化―:@カリキュラム、A英語による授業、B外国人教員、C国際的な大学等間の共同・連携、D秋季入学等の取組が必要。
 (二)留学生にとって安心で魅力ある受入れ体制等の整備(組織的な受入れ体制の整備、生活支援、卒業後のフォローアップなど)。
 (三)日本語教育の充実(日本語教育機関の質の向上、日本語教育機関における学生の学籍管理の徹底など)。
 (四)高校生留学:校長のリーダーシップの下に、学校全体での受入れ体制の整備など。
 V.留学生にとって魅力ある社会―日本社会のグローバル化―
 (一)将来の魅力あるキャリアのための就職支援・雇用の促進(留学生の日本企業への就職拡大)。
 (二)地域・企業等のコンソーシアムによる交流支援(地域を格にした学生交流事業、企業寄付による奨学金など)
 W.関係省庁・関係機関等の連携による有機的、総合的な推進
 (一)外交戦略や入国管理、労働政策等関係省庁との連携体制(適切な在籍管理が行われている大学等の書類や手続きを考慮など)。
 (二)民間企業や地域との連携(全国レベルの交流推進会議の創設など)。
 X.日本人の海外留学
 大学等間交流の活性化や世界で活躍できる優秀な日本人の育成の観点からも、相互交流を重視。
 これに対し、委員からは「留学生三〇万人を達成するためには財政問題を抜きには考えられない。国立大学では次期中期計画でどう扱うのか」「各大学はどう対応していけばいいのか、検討もつかない」「文部科学省だけで全てが解決できる問題ではない、日本に来る前の問題として、外務省関連の大きな問題がある」「単に国際的な留学生数の比較からではなく、留学の需要がどこにあるのか分析が必要ではないか」「政府に対して、文科省から強い要望を出さなければ実現が難しいのではないか」など、様々な意見が出された。
 今後は、秋以降を目途に同委員会等での審議を重ねた上で、文部科学省としての最終とりまとめを行い、政府として関係省庁等での「留学生」に係る諸課題への対応施策を取りまとめた上で「留学生三〇万人計画」を実行することになる。

Page Top