Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成20年7月 第2324号(7月16日)

「学士課程教育」答申案を審議 「高専教育充実」とともに総会で答申へ

 中央教育審議会大学分科会(安西祐一郎分科会長)は去る七月八日、文部科学省内の会議室において第六九回会合を開き、七月一日に閣議決定された「教育振興基本計画」の説明のほか、現在審議中の「学士課程教育の構築に向けて」及び「高等専門学校教育の充実について」の答申案を審議した。また、「『留学生三〇万人計画』の骨子とりまとめに基づく具体的方策」(とりまとめ)なども審議した。なお、二つの答申案については、当日の審議で出された意見等を踏まえてのとりまとめを分科会長に一任することとなり、七月下旬にも開催予定の同審議会総会で最終的に諮られ、答申される。
 「教育振興基本計画」については、事務方から、平成十八年十二月の改正教育基本法成立以来、同十九年二月の文科大臣から中教審への審議諮問、同二十年四月十八日の中教審答申、五月からの文科省案の各省協議、六月二十六、二十七日の官房長官、文科・財務・総務大臣間の調整による各省協議、そして、与党審査を経て七月一日に閣議決定後、国会報告といった検討経過が説明された。併せて、同計画の概要についても、「今後一〇年間を通じて目指すべき教育の姿」「今後五年間で実現を目指す主な目標と取り組むべき具体的な施策」等を解説した上で、「大臣をはじめ最後まで教育投資の数値目標等を盛り込むよう折衝に臨んだが、“歳出削減”の流れに押し切られてしまい、皆さんの期待に応えられなかった」との説明が行われた。
 これに対し、安西分科会長からは「文科省には最大限の努力をしていただいた。我々は、むしろこれからがんばっていくことが大事である」との発言があり、委員からも「残念な結果となったが、高等教育関係の記述として、教育投資を確保していくことの必要性や欧米主要国を上回る教育内容の充実を図ることなどが盛られている」といった意見も出された。
 二〇〇七年度の予算から五年間にわたるプライマリーバランスの黒字化へ向けた財政支出抑制の“骨太の方針二〇〇六”もあり、毎年度の予算折衝を積み重ねていくことになるが、二〇一二年以後の同計画の実質化へ向けた方向性が示されたとも言える。
 次に、「学士課程教育の構築に向けて」の審議では、制度・教育部会報告の「審議のまとめ」からの主な変更点を中心に説明が行われた。委員からは「今後、自己点検・評価の充実を図っていくためには、学習成果や学習プロセスに関する多様なアセスメント活動が欠かせないが、各大学の実施体制の整備も大きな課題だ」「『おわりに〜改革の加速に向けた社会全体の支援を〜』で“学士課程教育の便益は学生個人のみならず、社会全体に帰着するということに留意する必要がある”などと述べているように、基盤的経費等への投資をしないと我が国の教育は崩れてしまうし、社会全体にも悪影響が出る」などと国の支援の充実を訴える意見等も出された。
 安西分科会長からは、答申案とりまとめまでの制度・教育部会及び学士課程小委での精力的な審議に対する謝意が述べられた。
 なお、これらの意見等も踏まえた修文を安西分科会長に一任することとなり、同審議会の総会で答申されることになる。
 引き続いて、「高等専門学校教育の充実について」の答申案の審議では、まず高等専門学校特別委員会の副座長の黒田壽二金沢工業大学学園長・総長が答申案の七項目にわたる次の具体的方策等を説明した。
 @教育内容・方法等の充実=地域の産業界等との幅広い連携の促進・「共同教育」の充実、一般教育の充実、技術科学大学との連携の強化、自学自習による教育効果も考慮した単位計算方法の活用、退職技術者を含む企業人材等の活用
 A質の高い入学者の確保
 B大学への編入学者増加への対応
 C教育基盤の強化=FDの実施、施設・設備の更新・高度化、財政支援の充実等
 D教育研究組織の充実=学科のあり方の見直し、工業・商船以外の新分野への展開、地域のニーズを踏まえた専攻科の整備・充実等、地域と連携しつつ国立高等専門学校の再編・整備について検討
 E高等専門学校の新たな展開=公立の専門高校や大学校等を基に新たな公立高等専門学校を設置する可能性を含め、潜在的ニーズを発掘し、ニーズがある場合には支援方策等を検討
 F社会との関わりの強化=認知度向上、公開講座等の展開、国際協力の推進等
 答申案に対して委員からは「これらの具体的方策を推進していくためには財政基盤の充実が急務だ」「高専は産業界等からの評価が高い」などの意見が出されたが、この答申案も分科会長一任となり、同審議会総会で答申されることになる予定。
 そのほか、「『留学生三〇万人計画』の骨子」とりまとめの考え方に基づく具体的方策の検討(とりまとめ)の審議(2面参照)も行われた。

Page Top