平成20年7月 第2324号(7月16日)
■学生生活指導主務者研修会を開催 「学生に希望と元気を与える」
「人間を育てる」パートVをメインテーマに
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る七月九日から七月十一日までの三日間にわたり、新潟市のホテルオークラ新潟において、平成二十年度(通算第五四回)学生生活指導主務者研修会(学生生活指導研究委員会担当理事:高柳元明東北薬科大学理事長・学長、同委員長:濱田勝宏文化女子大学理事・副学長・服装学部長・教授)を開催した。研修テーマを「人間力を育てる(パートV)」として、多様化する学生生活指導の課題について、三年度にわたり共通のテーマで内容を掘り下げて研修を行った。同協会加盟三八二大学のうち、一九○大学から二九〇名が参加し、講演、事例発表、班別情報交換等の研修に取り組んだ。
〈第一日目〉
初日は研修に先立ち、高柳担当理事が「このたびの研修会は六○%が初参加者ということで、各大学において世代交代の時期が来ていることを感じている。そのような中で、三年連続でメインテーマを『人間力を育てる』としたことは、現在の大学教育の上でも大きな課題だと認識しているからである。自立した一人の人間として生きていく力、すなわち、基礎学力、社会対人関係能力、自己抑制力といった要素を学生の心の内に育てていくヒントを、研修会でつかんでいただきたい」と挨拶を述べた。
研修に移り、濱田委員長が「日本私立大学協会学生生活指導研究委員会の活動報告と本年度研修会の研修目標等」の発表を行った。濱田委員長は同委員会のこの一年間の活動内容を報告し、本年度の研修会の目標を挙げた。
ユニバーサル化により多様化する学生の生活について、かつては考えられなかった問題が多くなっていること、急激な変化をいかに理解し対応するかがポイントであるなどと述べた。
「学生指導・学生支援の領域の広さと課題の多さをあらためて感じる。毎年、印象に残ることは、信念と情熱をもって取り組んでおられる関係者のひたむきな姿。そして、現代の学生にふさわしいS.P.S.の理念で対処しようという考え方にたって、『人間力を育てる』上で、学生に希望と元気を与える方法を考えるきっかけを得ること、そのための情報交換、ネットワークの構築を図ってほしい」と結んだ。
昼食を挟んで、午後の研修では、同協会の小出秀文事務局長が「私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題」について解説した。
教育振興基本計画の検討経緯から閣議決定まで、経済財政改革の基本方針、学士課程教育の構築に向けてのまとめについてなど、詳細な解説を行った。また、本年度の学生支援GP採択校に同協会加盟大学が六校選ばれたことに触れ、小さな大学の取組みにも脚光が当たるようになってきており、引き続き同協会、同委員会が機会拡大のために働きかけていくことを述べた。
続いて、東京造形大学の小田一幸理事長が「人生のデザイン」と題した講演を行った。小田理事長は、学生から寄せられる様々な情報の中から、正確な情報を迅速に伝達する仕組みを構築することが学校法人におけるシステムデザインである。学生から情報を集め、政策に転換するのが学生支援・学生生活指導担当者の役目であると述べた。最後に「『人生のデザイン』とは前向きに生きることを方策することであり、生きることの理念を具現化する手立てを目論むこと」と、講演を締めくくった。
休憩を挟んで、第一班から第一五班に分かれて班別情報交換を行った。
初日の研修終了後には、再び一堂に会して情報交換会が行われた。開催地の新潟市内の加盟校から新潟国際情報大学の平山征夫学長、新潟青陵大学の関 昭一理事長と清水不二雄学長らを招き、和やかな雰囲気の中、参加者の会話が宵闇の信濃川のほとりに弾んだ。
〈第二日目〉
研修二日目は、午前中に事例発表が行われた。はじめに「思春期の人格形成は文化と時代の産物である―子育ての原点に戻って、脳を鍛えよう―」と題して、東京家政大学教授(臨床心理学担当)・臨床相談センター所長・心療内科医・臨床心理士の近喰ふじ子氏が我が国の少子化の問題が招く様々の深刻な状況について、特に大学生の心の病について解説した。大学生のストレス状況調査や学生相談の内容をもとに、大学に新たに課せられた難問の事例を挙げた。また、同大学の臨床相談センターを例に、学内の連携といったシステム構築の重要性について述べた。
続いて、「キャリア支援の取組み」と題して、同協会就職委員会副委員長・中部大学キャリアセンター課長の市原幸造氏が事例発表を行った。昨年度までの就職環境の変化等のデータを示し、現在の学生の就職活動における問題を紹介した。同大学キャリアセンターでの「就職を教育の一環として捉え、全員の進路が決まるまでの徹底支援」について述べた。
午後は第一日目に引き続いて、班別情報交換が行われた。
〈第三日目〉
研修最終日は、「職員の指導力を高めるために(SDの事例)」と題して、同協会大学教務研究委員会前副委員長・日本福祉大学常務理事・学長補佐・執行役員・事務局長の福島一政氏が、大学職員の新たな役割について述べた。フィールドワーク・コーディネーター、インストラクショナル・デザイナー、研究コーディネーター・マネージャー、学生支援ソーシャルワーカー、インスティテューショナル・リサーチャー等の新たな職員業務の開発が必要になっていると述べるとともに、業務改革、事務組織改革、職員人事制度改革の三領域で職員自らの責任で決定できるようにすることにより、集団としても持続的に成長していくと述べた。
休憩を挟み、「人間知を育む相互交流プログラムの展開―異世代や多様な価値観を包含する状況の創造―」と題して東京薬科大学学生部長・教授の新槇幸彦氏が事例発表を行った。同大学は、平成十九年度の学生支援GPの採択校であり、同採択プロジェクトの主旨は今回の研修会のテーマに沿うところとして、その取組み内容を詳細に解説した。
まず、平成十九年度の学生支援GPプロジェクトの活動一覧、平成二十年度の学生支援GPプロジェクトの活動計画を示した。同プロジェクトは世代交流、学び、地域交流、研修・評価、健康の五つで構成されており、学生の人間力を高めるために相互交流プログラムを展開する。
第三日目午前中の研修が終了し、三日間にわたった同研修会も閉会を迎え、高柳担当理事が総括の挨拶を述べて、本年度の学生生活指導主務者研修会が幕を閉じた。