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平成20年6月 第2321号(6月25日)

鍛冶加工、境内で行う
  武蔵工大平井教授 西本願寺、科学的に証明

 西本願寺(京都市)境内にある建造物に使用された鉄釘類の鍛冶加工が境内で行われていたことが武蔵工業大工学部原子力安全工学科・平井昭司教授らの研究によって科学的に証明された。
 西本願寺境内の防災設備充実の工事に伴う発掘調査を(財)京都市埋蔵文化財研究所が行ったところ、御影堂南面の書院唐門周辺の一角から数多くの鉱滓(てっさい)が出土。これらの鉄滓の一部を理化学的手法により分析したところ、御影堂に使用されていた瓦用鉄釘や建築用鉄釘等を鍛冶加工したとき排出された鉄滓であることがわかった。
 鉄滓には、砂鉄あるいは鉄鉱石から鉄をつくるとき排出する滓(かす)と、鉄材を鍛冶により加工するとき排出する滓とがある。今回、光学顕微鏡で結晶組織を観察したところ、鍛冶滓に特有なウスタイトやファイヤライトの結晶像が存在していた。
 御影堂は、寛永十三年(一六三六年)に再建された世界最大級の木造建築物で重要文化財に指定されている。建立から現在までの間、寛政十二年(一八〇〇年)から文化七年(一八一〇年)の間に一度大修復が行われた。
 今回、平成十年(一九九八年)から平成二十年(二〇〇八年)に掛けて平成の大修復工事が行われている。このとき約三五〇〇本の瓦用鉄釘が、使用されていたことが確認された。
 今回出土した鉄滓は、このような多量の鉄釘を加工したとき排出されたもので、出雲地方で生産された鉄が西本願寺境内に運ばれ、境内で種々の用途に加工されていたことが推察される。
 なお、今回の分析結果は、日本文化財科学会第二五回大会で発表された。

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