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平成20年6月 第2321号(6月25日)

改革担う大学職員 大学行政管理学会の挑戦B
 北海道地区研究会
 "北の国から"大学元気に 私大協会北海道支部とも連携

北海道地区研究会理事・北海道医療大学監査室 大川正勝

 1. 研究会発足の背景 

 第一回目の大学行政管理学会定期総会及び研究集会が一九九七年九月に開催された。北海道地区会員は、四大学九名が参加し、そのときの感想として、全国の学会会員が熱心に研究発表を行っていたことに大いに刺激を受けたことを記憶している。
 研究会参加後、北海道地区の活動内容について会員懇談会を開催し、第一回目の北海道地区研究会を一九九八年一月、北星学園で開催する運びとなった。ちょうど学会発足総会から一年後であった。テーマは「大学改革とこれからの事務職員」。八大学二八名が参加し、発表・討議を行った。北海道地区研究会は、日本私立大学協会北海道支部事務局長相当者会議において、学会設立趣意等の情報提供が行われ、何人かの事務局長の積極的関与もあり基盤作りが始まった。
 時代背景として、一九九五年九月の大学審議会答申「大学運営の円滑化について」があった。その中で事務組織は、大学改革の推進等について学長、学部長を補佐し、改革の方針に沿った教育研究活動の支援を積極的に行うことが重要との認識が示され、事務組織等のあり方について自己点検・評価を行い、不断に見直し・改善を行うこと、専門的な事務体制の整備を検討すること、研修機会を充実することなどが求められ、学校法人の経営計画の企画・立案に当たっての積極的な役割の遂行が期待された。
 大学審議会は一九九八年十月「二十一世紀の大学像と今後の改革方策」を答申。「大学の個性化を目指す改革方策」で、課題探求能力の育成、教育研究システムの柔構造化などと共に責任ある意思決定と実行を提言した。国際交流や大学入試など専門化された機能を事務組織に委ねること等に言及しつつ、事務機能の向上を求めた。
 本学においても二十一世紀に向け選ばれる魅力ある大学像を構築するため、教員と事務職員の協働により「21委員会」を組成し二三〇の提言をまとめた。それらの提言について具体的な大学改革推進計画を立案し、点検・評価や大学改革を行っていた時期であった。

 2. 一〇年間の歩み 

 北海道地区研究会は、本年一〇周年を迎えた。研究会は年二回、輪番制で会員を擁する六大学を当番校とし、三名の学会理事が世話人となって実施してきた。二〇〇五年には全国研究集会が札幌大学を当番校として開催された。単独開催が通例の全国研究集会が、学会理事所属大学の協力体制で実施された初めてのケースとなった。
 地区研究会の案内は、私大協会道支部事務局長相当者会議に報告され、非会員大学にも案内を出し、毎回四〇名位参加している。
 当初は、SDをメインテーマとして活動を行ってきた。過去には、「職員像、業務改革、事務組織、人事制度改革、能力開発」などの講演、事例発表、ワークショップ形式で行った。最近は、大学行政管理学会でも年々広範囲な活動が行われており、北海道研究会のテーマもSDの精神を受けながら教育・学生・研究等に関する取り組まなければならないテーマをブレークダウンして非会員や若手職員が参加しやすいように試みている。特に参加者が問題意識や問題解決の糸口、コミュニケーションを図れるようにするため、事例発表後のグループ討議を設定している。事務職員がアドミニストレータとしての段階的な能力開発と意識改革を期待してのことである。
 本年七月下旬の研究会では、特に厳しい経営環境におかれている北海道の各大学を元気づける取り組みとして「教育力の強化」をテーマとする予定である。
 北海道地区の会員は近年五〇名弱で推移している状況で、会員を擁する大学での会員増員と未だ加盟実績のない大学からの積極的な参加をお願いしている。また、非会員を含めた中堅・若手職員を対象に勉強会を発足する準備をしており、近々中に開催する予定であり、アドミニストレータとしての必要なスキルを研修できる入門的内容を考えている。学会活動を通して北海道地区の大学事務職員の自己啓発に役立てるよう今後も研究会を運営したい。

 3. 今後の研究会課題 

 私立大学を巡る経営環境が大きく変化している現在、的確なリスクマネジメントが求められている。
 二〇〇四年以降の国公立大学の独立法人化、設置基準の弾力化による大学の増加、競争的特別補助金の拡大、第三者評価の義務化、私立学校法の改正、個人情報保護法の施行などへの対応と、それに伴うリスクが流動的かつ多様化、増大化してきている。この状況の中でコンプライアンスの推進は、学校法人・大学の公共性・公益性に照らして、広く社会の期待に応えるための適正公正な学校法人運営の礎であり、社会的責任を果し、持続的発展を維持する上での重要課題であるとの認識を共通の基盤に置くことが求められている。
 私立学校法が改正され、理事会・評議員会・監事の管理運営機能が強化され、同時に監事監査を支援する内部監査機能の充実が求められ、学校法人の内部統制が問われている。さらに、財務情報の公開により情報開示が促進され、私立大学の社会的責任(USR)とステークホルダー(利害関係者)への説明責任が従来にも増して求められており、大学改革に事務職員の大学経営への積極的関与が一層重要となっている。
 一方、ISO14001(環境マネジメントシステム)、ISO9001(品質マネジメントシステム)等を取得している大学も増えて来ているが、現在26000規格(組織のSR規格)がISO国際規格として二〇〇九年に発行予定である。組織の社会的責任(SR)とは、社会及び環境に対する活動の影響に責任を果す行動である。それらの行動は、社会の関心及び持続的発展との整合性、倫理行動、遵法性及び政府間文書に基礎を置いたもので、かつ、組織の既存の活動と一体化したものであると定義されている。SRの範囲として、「1. 環境2. 人権 3.労働慣行 4.組織的な管理 5.公正ビジネス慣行/市場ルール 6. コミュティ参画/社会開発 7. 消費者課題」が上げられている。リスクマネジメントの確立と社会的責任を私立大学として果たすことにより、組織の持続的発展を進めていくため大学事務職員の一層の精進が必要であり、そのために研究会活動を活性化したいと考えている。

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