平成20年6月 第2321号(6月25日)
■微生物から界面活性剤 新生産法でコストダウン
新潟工科大学(布村成具学長)では、環境負荷の少ない界面活性剤「バイオサーファクタント」の効率的な生産法を研究している。
洗剤の主成分である界面活性剤は、乳化、分散、湿潤、防錆、帯電防止など様々な作用があり、多くの産業で用途に応じて使い分けられている。ほとんどは石油由来の合成界面活性剤であるが、バイオサーファクタントは微生物の代謝機能から作りだされた天然の界面活性剤である。生分解性が高く、生物に対する毒性が低い上に、洗浄や分散能力も高い。土壌の油や重金属汚染の浄化など環境修復技術に使用しても二次的な環境汚染を引き起こす心配がない。さらに生物薬理、抗菌および保湿などの作用を発揮するものもあり、合成界面活性剤の代替品として期待されている。
しかしながら、生産収量が低いことに加えて、培養液からの分離精製コストがかかることから、生産コストが高いという経済的な問題点を抱えている。そのため、実用化されているものも用途は限定される。
竹園 恵教授らは、「分離精製工程の簡略化」という観点からバイオサーファクタント生産を検討している。酸素を必要とするバイオサーファクタント生産菌の培養では、空気の吹き込みにより培養液は激しく発泡し、泡沫が生成。この泡沫は放っておくと培養器から溢れ出てしまうため、通常は消泡剤を加えて破壊している。しかし、新たな生産法は、泡沫をなくすのではなく、泡沫をコントロールして積極的に利用する。界面活性物質は界面に集まりやすい性質を持つので、バイオサーファクタントは気液界面の面積が大きい泡沫に濃縮する。培養終了後に泡沫を取り出すことで濃縮液が得られるため、粗分離(濃縮)工程が省略できることになる。培養器内で生産だけでなく粗分離も行うことができ、分離精製コストは軽減されるであろう。[この研究は(独)日本学術振興会の科研費(課題番号:18510085)の助成を得て実施している]
生産プロセスの効率化とともに、生産菌の育種改良や新機能の検索などバイオサーファクタントに関する研究開発が進み、近い将来、少しでも多くのこの“地球に優しい界面活性剤”が増えることを期待している。
(環境科学科竹園 恵教授)