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平成20年6月 第2319号 (6月11日)

「近大マグロ」に大臣賞 産学官の連携功労 完全養殖と市場開拓

 近畿大学(世耕弘昭理事長)が取り組んできたクロマグロの完全養殖研究と市場開拓などの産業化に対し科学技術政策担当大臣賞(政府の産学官連携功労者表彰)の授与が決まった。
 受賞するのは近畿大学水産研究所(和歌山県白浜町)の熊井英水・前所長(近畿大学教授)と近畿大学発ベンチャー企業・株式会社アーマリン近大(同町)の大原 司社長(近畿大学理事)。
 産学官連携功労者表彰は、大学・研究機関や企業などによる産学官連携事業で、すぐれた実績をあげた功労者を政府の総合科学技術会議が選び年一回表彰する。
 熊井教授は、クロマグロ完全養殖技術の開発や改良を主導し、実用化レベルへ向上させた功績。大原社長は、「食の安心・安全」「資源保護」の観点から、完全養殖クロマグロの販路を開拓したことが評価された。
 今回の選考では、マグロ類に残留する水銀の健康被害を気にする消費者のニーズをアーマリンが吸い上げ、それを受けて水産研が水銀含有量の少ない完全養殖クロマグロの開発に成功したケースなど、両者が連携して研究開発と市場開拓を推進した事例が評価された。魚類養殖研究・産業の分野で、このような連携体制は世界でも類を見ないユニークなものといわれている。
 「近大マグロ」の誕生までを振り返ると、こうなる。
 近畿大学水産研究所(一九四八年開設)では、一九七〇年にクロマグロの養殖研究に着手。二〇〇二年、世界ではじめてクロマグロの完全養殖(ふ化→成長・産卵→ふ化、というサイクルを養殖施設内で完結すること)を成功させた。
 〇七年には完全養殖サイクルが二回りした結果である完全養殖第二世代を誕生させた。クロマグロ完全養殖に成功した施設は現在も、近大水産研以外には存在せず、世界最先端の研究水準を誇っている。
 一方、アーマリン近大は〇三年、近畿大学水産研が研究・養殖した「安全でおいしい魚」を消費者へ届けることを目的に設立。完全養殖クロマグロをはじめハマチやマダイ、シマアジ、ヒラメ、トラフグなどを扱う。最近では幻の高級魚といわれるクエを使った「本クエ鍋セット」がヒットした。
 表彰は、六月十四日、国立京都国際会館(京都市左京区)で開かれる第七回産学官連携推進会議で行われる。

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