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平成20年6月 第2318号 (6月4日)

[新刊紹介]
  地域とともに時代を創った 沖縄大学が創立50年
  沖縄大学50年史編集委員会

 行間から僕ら世代には懐かしい歌が聞こえてくる。「固き土をやぶりて 民族の怒りに燃える島」。そう「沖縄を返せ」、沖縄返還闘争のシンボルの曲だ。
 プロローグで涙腺がゆるんだ。〈住民を巻き込んだ地上戦を体験した沖縄では、師範学校や中学、高等女学校の生徒たちまでが「ひめゆり学徒隊」などを編成して戦場に駆り出され多くの人材を失った〉
 「新刊案内」には、こうある。〈第二次大戦まで沖縄県は大学はもとより高等学校や専門学校を持たない唯一の県でした。中等学校を出て高等教育機関で学ぶためには海を渡って本土へ行くよりなかったのです〉
 沖縄大学は、戦後十三年たった五八年、沖縄初の私立大学として設立された。当初は短大で、四年制になったのは三年後だった。
 〈七八年を区切りとして二つの時期に分けられる。前半期の二〇年は混迷と紛争・闘争の時期〉。教職員と学生が大学を自主管理、理事会がロックアウトで対抗した。
 この「民主化闘争」は七〇年に収束する。しかし、七二年、沖縄は日本に復帰するが、沖縄大学は存亡の危機に。文部省の定める大学設置基準を満たしていないと認可されなかった。
 教授たちは文部省前で座り込み抗議、存続をかちとった。〈文部省に研修に来ていた卒業生はビラ配りする恩師の姿を見て涙が止まらなかった〉というエピソードは痛く切ない。
 “区切りの七八年”とは〈地域とともに生きる開かれた大学という新たな理念を確立、大学再建の途を歩みだした〉屹立した年。
 〈小さな私立大学の歴史を多様な読者の批判にさらしつつ、その過去と現在と将来を改めて考えてみたい〉と結ぶ。創立五〇年をともに喜び、「地域とともに時代を創る」大学の前途に幸あれ、と祈らずにいられない。

 定価 1,680円(税込)
 発行 高文研
 電話03-3295-3415
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