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平成20年5月 第2317号 (5月28日)

「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査」

 厚生労働省はこのほど、企業および従業員を対象とした「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査」結果をまとめた。人口減少社会が到来する中、男女ともに労働者が仕事と家庭を両立し、安心して働き続けることができる環境を整備することは重要な政策課題となっている。

 この調査は、厚労省が仕事と家庭の両立を容易にするため更なる方策等の検討に役立てることを目的に、(株)ニッセイ基礎研究所に委託して行った。企業調査は四〇〇〇社、従業員調査は四〇歳以下の一万二〇〇〇人を対象に実施した。
 育児休業制度の導入
 「育児休業制度を導入しているか」のアンケートでは@対象となる子の上限年齢A対象となる従業員の範囲B子一人について取得可能な回数C休業期間中の金銭支給―のいずれかについて法律を上回る対応をしている企業は二四・六%。四社に一社だった。
 法律を上回る育児休業制度導入の割合を企業規模別でみると、規模二九九人以下は二割を切っている。一方、規模一〇〇〇人以上では五五・二%と過半数を占めていた。
 企業に対して「会社全体でみた場合に女性正社員の働き方としてどのようなパターンが多いか」をたずねた。全体としては「子を出産しても継続して就業している」が四〇・五%を占めたが、「妊娠・出産を契機に退職する」(一八・二%)、「結婚を契機に退職する」(一四・二%)も合わせると三割を超えた。
 企業規模一〇〇〇人以上では六三・五%と過半数を占めた。一方、規模三〇〜九九人では四社に一社が「妊娠・出産を契機に退職する」、規模一〇〇〜二九九人では二割を超える企業が「結婚を契機に退職する」が女性正社員の働き方で多いパターンだった。
 仕事と家事の両立支援制度導入の割合をみると、「(育児のための)短時間勤務制度(規定と運用を含む)」(五九・六%)、「時間外労働の制限」(四八・九%)、「深夜業の免除」(四五・六%)が上位三位となった。
 短時間勤務制度の導入
短時間勤務制度導入の割合を企業規模別にみると、一〇〇〇人以上では八六・五%にのぼる一方、規模一〇〜二九人では四二・三%にとどまっている。
 また、育児のための短時間勤務制度を導入していない企業は全体の三八・八%。規模一〇〜二九人では五七・三%にのぼった。
 未導入企業に対して導入しない理由をたずねたところ、「育児中の人等、制度の対象となる従業員が少ない」(五八・八%)、「短時間勤務になじまない業務が多い」(二八・四%)、「制度の対象となる従業員はいるが、短時間勤務のニーズがない」(二〇・九%)が上位三位を占めた。
 全企業に短時間勤務制度に関する今後の考え方をたずねた。その結果、「現状どおりでよい」が六五・九%と過半数を占める一方で、「既存の制度を充実したい」の回答も二三・一%あった。
 育児休業制度を「利用したいと思う」割合は、男性が三一・八%、女性が六八・九%を占めた。育児のための短時間勤務制度を利用したい割合は男性が三四・六%、女性が六二・三%となった。
 育児休業制度を「利用したい」理由をみると、女性は「子どもが小さいうちは、自分で育てたいから」(八四・一%)が、男性は「子どもが小さいうちは、育児が大変だから」(七九・一%)が、それぞれトップを占めた。
 短時間勤務制度については、男女とも「勤務時間が短縮できる分、子どもと一緒にいられる時間が増えるから」、「保育園、学童クラブ、両親等に預けられる時間が限られているから」が上位二位となった。
 従業員調査で、「子を持つ母親の働き方として望ましいと思うもの」を子どもの年齢ごとにたずねた。その結果、一歳までは「育児休業」(四五・七%)が最も高く、「子育てに専念」(四二・四%)が僅差でそれに続いた。
 「短時間勤務」や「残業のない働き方」は、子どもの成長過程における長い期間において望ましい働き方として支持されているようだ。中でも「短時間勤務」は三歳まで(三〇・七%)、小学校就学前まで(四一・〇%)において最も高い回答だった。
 育児休業の取得の難易
 「育児休業の取得しやすさ」についてたずねた。女性が取得する場合は七一・二%の企業が「取得しやすい」と回答している一方で、共働きの男性が取得する場合になると、「取得しにくい」とする割合が七六・七%を占めた。
 従業員調査でも、女性の場合は取得しやすい割合が七三・五%である一方、共働き男性の場合は取得しにくい割合が八六・三%を占めた。
 企業調査、従業員調査ともに、女性が取得する場合は、企業規模が小さいほど取得しやすい割合が低下。共働きの男性が取得する場合、企業規模にかかわらず取得しやすい割合が低くなっている。
 育児休業制度を「取得しやすい」と回答した企業に勤務する従業員が、実際に「取得しやすい」と感じているかどうかをみるために、企業データと従業員データをマッチングした。
 その結果、女性が取得する場合については、「取得しやすい」とする企業で実際に女性従業員が「取得しやすい」と回答している割合は八五・一%と高かった。
 一方、共働きの男性が取得する場合について、「取得しやすい」としている企業に勤務する共働きの男性従業員の回答をみると、取得しやすいという割合は二一・四%に過ぎず、企業と従業員の間に大きな認識のギャップがみられた。
 短時間勤務制度についても同様に企業と従業員のデータをマッチングした。その結果、「利用しやすい」とする企業で実際に従業員が「利用しやすい」と回答している割合は五九・〇%と過半数にのぼるものの、両者の間に相当の認識ギャップが存在しているという見方もできる。
 従業員調査で、「利用しにくい」と回答した従業員に対してその理由をたずねた。その結果、「制度を利用すると業務遂行に支障が生じる」(六三・九%)、「制度の内容や手続きがよくわからない」(三七・五%)、「制度利用に対して上司の理解が得られない」(三一・九%)、「制度を利用すると昇給・昇格に悪影響を及ぼす懸念がある」(二八・一%)が上位四位となった。

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