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平成20年5月 第2317号 (5月28日)

改革担う大学職員 大学行政管理学会の挑戦A
 「大学職員」研究グループ
 "職員のあり方"追求 学長・理事長インタビューも実施

「大学職員」研究グループリーダー 順天堂大学 各務正

 研究会発足の背景と活動
 「大学職員」研究グループ(以下「本研究グループ」)は、大学行政管理学会発足後、西日本支部が先行して数種の研究会を立ち上げたことから、これに呼応する形で東日本支部として孫福 弘初代会長がテーマ別に組織業務管理研究、大学人事研究、大学職員研究、財務研究の四つを一九九九年一月に立ち上げたことに始まる。
 本研究グループの活動について孫福元会長からは「各務、何をやってもいい」という指示のみであったが、この茫漠とした指示は、大学職員の役割、機能、活動等々を対象として研究するには、特段の制約や枠をもって縛ることよりも、自由に討議させることが今後は必要だろうという思惑の言葉と理解している。
 発足当時から本研究グループの活動方針としては、「護送船団方式の崩壊により、大学は各個の存在意義を明確に社会に対して訴える必要が生じ、大学で働く職員に求められる像にもまた、変化が訪れようとしている。すなわち、与えられた条件の枠はもとより、より広汎なコンテクストから管理運営状況を解析し、得られた像の戦略的実現を図るactiveな姿勢が求められる」ことから、@大学職員の専門知識・能力とは何かについて研究する、A実践的能力をもった専門職としての大学職員のあり方を研究する、B本研究グループに参加する大学職員自身の自己研修活動を支援する、の三点に置いている。
 以下、これまでの成果を紹介する。
 研究会を通して得られた知見と今後
 @二〇〇一年:「大学職員―その属性」の発表
 本冊子は、職員に必要な知識や能力等をまとめ、二〇〇一年度本学会研究集会(会場:名城大学)において発表したものである。内容を列記すれば、大学職員の定義、これからの大学・大学職員、大学職員に求められるもの、大学職員と企業人、米国の大学職員、職員が対象とする行政管理の範囲、学内の行政管理の対象、学外の行政管理の対象、行動に必要な戦略的Management Tool、大学論、組織論、意思決定、トップマネジメント、倫理・セクシャルハラスメント、大学の歴史・各国の状況、行動に必要な戦略的Analysis Tool、経営戦略論、大学マーケティング戦略、事例研究の進め方、行動に必要な戦略的Identity Tool、大学を考えるときの価値基準、戦略の基本、生産性、価値基準に基づく戦略的活動である。職員に関する知識を網羅的にまとめた冊子で、前年に早稲田大学で開催したシンポジウムの予想質問回答集を原本としている。
 A二〇〇三年:大学職員の現状意識アンケート調査
 「大学職員―その属性」作成後、職員の実態を掌握した基礎データがなかったことから、二〇〇三年八月に本学会会員を対象として、職員の「今」を把握する現状意識調査を実施した。アンケート質問項目は一五〇問、回答を「はい」「いいえ」の二択で求めた。この結果を、本調査の意義、本調査にみる本学会会員像、大学職員としての活動と意識の相関に関する検討、本学会への関心からみた大学職員の意識分析、本学会における女性会員の意識と現状、大学職員の高度化専門化に関する一考察、という論考にまとめ発表した。現在でも職員に関するデータ引用の高い成果の一つである。
 B二〇〇五年:国公立大学学長と私立大学理事長の大学職員に対する意識アンケート調査
 次に、職業集団のみの内輪で通用する職員論から脱皮し、社会からみて理解できる職員論を構築する目的で、学長・理事長にインタビューを行う計画を策定した。学長・理事長が必ずしも正確な第三者とはいえないが、意思決定過程の最高責任者として職員をどのようにみているかという視点を重視した。インタビューを実施する前に、二〇〇五年十月、学長・理事長の職員に対する意識を具体的に知るためにアンケート調査を行った。回収結果の回答率は、国立大:五八・五%、公立大:三五・四%、私立大:三八・三%で、合計六〇四校中二四七校(四〇・九%)であった。この調査によって学長・理事長は、職員の活動をよく観察し、職員としての意欲は評価するが、実際の業務成果については不十分との知見が得られている。
 C二〇〇六年:国公立大学学長と私立大学理事長のインタビュー調査
 前述のアンケート調査結果をもとに当初目的のインタビューを二〇〇六年六月から二〇〇七年一月に実施した。対象大学は、アンケート調査結果をもとに選択し、立命館大学川本八郎理事長、名古屋大学平野眞一総長、日本福祉大学大沢 勝総長、早稲田大学白井克彦総長、国際教養大学中嶋嶺雄学長に、約一時間のインタビューをお願いした(職制は当時)。学長や理事長が名前だけの存在であるならば、インタビューの必要はなく、学長・理事長アンケート結果だけを読めばよい。しかし、どの先生も強い個性とリーダーシップが感じられ、大学のことを心の底から心配し、学長・理事長アンケートでは理解しにくかったトップからみた職員の働きの有態や専門性に対するご意見等を忌憚なく伺うことができた。失礼を承知で印象を一言するならば、川本理事長=「豊富な経験的知識に基づくパワーとカリスマ性」、平野総長=「国立大学総長としての論理的現状分析」、大沢総長=「経験論から垣間見る経済人の誇り」、白井総長=「経営感覚溢れる私学の雄」、中嶋学長=「優美さを奏でる改革の勇者」ということになるであろうか。
 D二〇〇七年:「プロフェッショナルである大学アドミニストレーターの専門性―大学職員の視点から―」の発表
 これまでの研究活動でわかったが、大学職員が思い描く専門性の領域・業務・能力は様々であり、そのため職員の在り方等を検討する場合、職員を定義することなしでは必要な論議が進展しなかった。そのため、これまでの研究結果も踏まえ、職員を「プロフェッショナルである大学アドミニストレーター」に限定し、大学アドミニストレーターの領域、業務、必要な能力の理論的枠組について、本冊子により二〇〇七年度本学会研究集会において発表した(会場:福岡大学)。この冊子の利用価値の高い点は、職員を定義することで、個人レベルの視点から職員が専門性を修得する成長過程を図によって理解できるところである。この概念図によって、職員として、何を、どのように修得したらよいか、そしてその原動力は何かを視覚的に解説した。図の作成にあたっては、研究会や合宿研修会において初めて見た参加者からの率直な意見が非常に有効であった。
 E今後
 発表した概念図をもとに、「自己啓発の成果は実務に生かされるだろうか」といったテーマから、組織からの視点で個人がプロに成長する過程を具体的にフォローアップできるかどうかを検討している。実効性、具体性があって初めて概念図が生きた知見になると考え、多くの方々とディスカッションを進めている。
 なお、過去一年間の本研究グループに参加した方々の背景は次のとおり。@一回当りの平均参加者数二〇・八名。A所属区分:国立一一%、公立三%、私立八六%。B性別:男七三%、女二七%。C地区別:北日本三%、関東四六%、中部八%、関西一六%、西日本二七%。
 本研究グループへの参加資格は、大学職員であれば、会員を問わず可としている。また、職員の個人研修として、毎夏に合宿研修会(二泊三日)を開催している。合宿研修会は、時間の制限を設けずに討議できるという利点を生かし、参加者の持つ知識や智恵を最大限に高揚させる目的で運営している。これまで清里、大阪、広島、小樽、知多、京都、金沢で開催した。今年は大分で実施予定。
◇    ◇
 前記成果を参照できるホームページもしくは大学行政管理学会誌は次のとおり。
 @「大学職員―その属性」(http://juam.jp/cms/modules/d3forum/index.php?topic_id=201)。
 A大学職員の現状意識アンケート調査:同学会誌 7号:85−156,2003および(http://juam.jp/cms/modules/d3forum/index.php?topic_id=13
 B国公立大学学長と私立大学理事長の大学職員に対する意識アンケート調査:同学会誌9号:61−82,2005
 C国公立大学学長と私立大学理事長のインタビュー調査:同学会誌10号:155−163,2006
 D「プロフェッショナルである大学アドミニストレーターの専門性―大学職員の視点から―」(http://juam.jp/cms/modules/d3forum/index.php?topic_id=202

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