平成20年5月 第2317号 (5月28日)
■教学運営での課題等講演 「学士課程教育」テーマに公開研
日本私立大学協会附置私学高等教育研究所(大沼 淳所長)は、去る五月二十一日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で、第三六回公開研究会を開催した。
テーマは「『学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)』をめぐって」であり、各大学にとって重要な多くの課題を投げかけており、今後の大学の教学運営に大きな影響を与えるものであることから、二〇〇名を超える大学関係者が全国から参加した。
同研究所の瀧澤博三主幹の司会の下で、次の三人の講師がそれぞれの立場から講演した。
はじめに、文部科学省高等教育局高等教育企画課の鈴木敏之高等教育政策室長が、政策立案の立場から@大学教育の量的拡大、A出口・中身・入口の「三つの方針」の明確化、B「学士」の品質保証、出口管理(「学士力」、分野別質保証)、C競争と協同、多様性と標準性の調和など、「審議まとめ」のポイントと今後の対応について講演した。
次に、東京大学大学院の金子元久教育学研究科長が大学人の立場から、現在の学部教育がなぜ問題なのか、大学教育のパラダイム転換、さらに学士課程教育の構築に向けた大学の課題・政府の役割など「学士課程教育の問題点と政府・大学の役割」を語った。
最後に、同研究所の研究員でもある同志社大学の山田礼子社会学部教授・教育開発センター所長が教育現場の立場から、文科省の「現代GP」に採択されたタイトルのキーワード検索結果による頻度の多さから、学士課程教育充実へ向けた“初年次教育”“体験型学習”について、さらにIR、FD等の必要性など「学士課程教育充実への取り組み」を語った。
ホットな話題でもあり、講演の各氏とも予定時間をオーバーするなど、熱気あふれる研究会となった。
なお、同研究所は公開研究会に先立って第三二回研究員会議を開き、平成二十年度の六つの研究プロジェクト案を協議し、原案どおり承認した。
同研究所の瀧澤博三主幹のもとで取りまとめられた六つの研究プロジェクトは次のとおり。
【プロジェクト@】=高等教育のプライバタイゼーション(十九年度からの継続)=七月一日に東北大学東京分室で「ニューパブリックマネジメントの動向と日本的特質」をテーマに研究会を開く。
【プロジェクトA】私大マネジメント改革に関する研究=大学訪問調査、アンケート調査等を行い、経営システムの改革、経営戦略や中長期計画立案のほか、理事向けハンドブック、学長テキストブック、事務組織改革、財政運営の改革などを調査研究する。
【プロジェクトB】私学高等教育データベースの構築=私立大学の特徴を把握し得るデータベースを作成し、それを利用して私立大学の現状分析をする。
【プロジェクトC】私学の学士課程教育における“学士力”育成のためのプログラムと評価
【プロジェクトD】質保証システムに関する研究=これからの認証評価の在り方について、日本高等教育評価機構とも連携して推進する。
【プロジェクトE】IRに関する研究=七月頃にアメリカにおけるIRについての公開研究会を開き、その上で取りまとめる。