平成20年5月 第2317号 (5月28日)
■教育振興基本計画閣議決定へ向け議論 財務省の反論に異論続出
中央教育審議会大学分科会(安西祐一郎分科会長)は、去る五月二十日、文科省内の特別会議室において会合を開き、教育振興基本計画及び各部会の審議状況について議論した。
教育振興基本計画については、中教審の答申に基づいて文科省が閣議決定に向けて各省と折衝中であり、特に「国内総生産(GDP)に占める教育支出の割合を現在の三・五%から五・〇%に引き上げる」との数値目標の記述をめざす文科省の意向に対し、財政再建を優先する財務省からの強い反論が出されている状況が説明された。
また、高等教育についても、世界最高水準の教育研究環境の実現等も念頭に置きながら、教育投資の充実を図っていくことなども明記する方向で調整していることも説明された。
安西分科会長は、「教育振興基本計画には数値目標を入れるべきである。具体的な数値がなくては“計画”も立たない」と従来からの強い主張を述べた後、同分科会を中座して、内閣府での教育再生懇談会の座長として記者会見に臨み、数値目標の明記を求める緊急提言(本紙前号参照)を行っている。
今後、文科省は自民党政務調査会の文部科学部会・文教制度調査会等の決議(欧米の教育先進国の公財政支出水準を上回る具体的な数値目標の設定、保護者の教育費負担の軽減、私立学校振興のための私学助成の拡充、高等教育の基盤的経費の格段の拡充と競争的資金の拡充など、七項目)や教育再生懇談会等の提言を背景に、文科省としての案を取りまとめ、最終的な調整の上で閣議決定することをめざす。
委員からは「財務省の主張の不合理な部分に対し強く反論していく必要がある」「私費負担と公的負担を合わせて外国と比べて低くない、などと言っているが、高等教育に限った場合はどうなのか」「財政投資を一・五%増やす場合、どこにどれだけ増やすのか具体的に示せるとよい」「高等教育への〇・五%増については、その中身を提言したらどうか」などの意見が出され、安西分科会長の後を任された郷 通子副分科会長が、文科省には財務省に対して最大限に反論をしてもらい、国民の共感を得られるような提案をしてほしいと締めくくった。
次に、各部会の審議状況については、五月十三日の制度・教育部会の「学士課程教育の構築に向けて」(審議まとめ)に係るヒアリングについて、同部会の部会長でもある郷副分科会長より、日本私立大学団体連合会、国立大学協会、公立大学協会等から意見発表が行われ、大学三団体とも“数値目標を入れること”“分野別質保証での教育の多様性に留意すること”などが共通意見として出されたことの報告があった。
そのほか、留学生特別委員会(木村 孟座長)の審議している「『留学生三〇万人計画』の骨子」取りまとめの考え方については「財政的裏づけが無い」、「私学が受け皿になると思うが私学への支援が不明だ」などいろいろな意見が出された。