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平成20年5月 第2315号 (5月14日)

低酸素社会の実現へ 環境エネルギー技術革新計画(中間とりまとめ)

 四月に開催された総合科学技術会議において、環境エネルギー技術革新計画ワーキンググループがまとめた中間とりまとめが報告された。概要は次のとおり。

 環境エネルギー技術革新計画中間とりまとめ
 環境技術に優れた我が国が、率先して温室効果ガス排出低減のための革新的技術を開発し、日本及び国際社会に普及させ地球温暖化問題に関して指導的役割を担うべきであり、今後更なる革新的な技術の研究開発が不可欠である。この計画の実行のための具体的な方策の概要は次の通り。
 1. 我が国の低炭素社会実現に向けた技術戦略
 我が国は、製造業のエネルギー消費原単位が一九七〇年代後半の石油危機当時のおよそ半分となったことに象徴されるように、省エネルギーに国を挙げて注力してきたところであり、今後も一層の努力を続けていくことが必要である。
 しかし、今後温室効果ガスの排出を大幅に削減するためには、既存技術の更なる改良では限界があり、抜本的な削減を可能とする革新的な技術の開発が必要である。また、技術開発のみならず、技術の社会への普及も、重要となっている。すなわち短中期的には従来技術の向上と社会への普及が、中長期的には革新的な技術の開発が重要な鍵となる。
 (1)短中期的対策(二〇三〇年頃まで)に必要な技術
 エネルギー供給側においては、当面、エネルギー資源を安定的に確保しつつ低炭素化を推進する。需要側においては、生活の質(QOL)を維持しつつエネルギー需要を削減していくために、短中期に温室効果ガスの排出削減が期待できる既存技術の普及と併せて、更なる効率向上、コスト低減、性能評価のための技術開発を進める。
 なお、より大きな排出削減を達成するためには、個別技術の削減効果、普及に必要な制度改革、コスト等を勘案しつつ、導入の時期にも留意し常に最適な技術システム構築を図る必要がある。
 また、大規模な設備等については、その更新時期に合わせて計画的に、より削減効果の高い技術を導入することが必要である。特に温室効果ガスの排出量が増大している民生部門については、適切な社会基盤整備など、国全体としてより積極的に取組む必要がある。
 バイオマス利用等については、食料生産と競合せず生態系保全と持続的生産を可能にする技術の開発を進める。
 (2)中長期的対策(二〇三〇年以降)に必要な技術
 今後の研究開発により大きな温室効果ガスの排出削減が期待される技術や、その導入により社会構造を大きく転換してエネルギー需要を大幅に削減し、排出を抜本的に削減する技術について、戦略的に研究開発に取り組む。
 (3)社会への普及策と必要なシステム改革
 エネルギー効率の高い製品の普及のみならず、低炭素社会を実現するための社会システムの改革を継続的に進める。優れた技術であっても、その普及には国の政策が大きく影響する。これは、環境エネルギー技術においても例外でなく、特に、我が国の強みである技術を生かすためには、技術開発と普及策などの政策のベストミックスなど、海外での事例も踏まえ、政策オプションについての研究を強化する必要がある。
 また、普及が、当該技術の開発の促進につながる面もあり、開発と普及の連携に留意することが重要である。
 2. 国際的な温室効果ガス削減への貢献策
 すべての国が多様なアプローチで温室効果ガス排出削減に取り組めるように、我が国は優れた環境エネルギー技術をタイムリーに世界に展開していく。
 特に、これまでの国際的パートナーシップ等の実績を活かしつつ、セクター別のアプローチにより、開発途上国への技術の普及及び移転を図る。
 また、各国の技術を結集して優れた技術を生み出す観点から国際共同研究を積極的に推進するとともに、IEAやIPCC等の国際的な機関における議論について我が国も積極的に貢献・リードしていく。
 今後、国際的な温室効果ガス削減への貢献策等について検討し、五月にはとりまとめる。

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