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平成20年4月 第2313号 (4月23日)

iPS細胞の山中京大教授が特別賞 文科大臣表彰者(科学技術分野)選ぶ

 文部科学省では、このたび、文部科学大臣表彰(科学技術分野)の授賞者を決定、去る四月十五日、東京都内のホテルで表彰式を開催した。科学技術特別賞には、ヒト人工多能性幹細胞を樹立した山中伸弥京都大学教授が選ばれた。また、科学技術賞(理解増進部門)には、近畿大学生物理工学部四年生の森田真裕さんが選ばれた。

 文部科学大臣表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めたものについて、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的に定めているものである。
 科学技術特別賞に選ばれた山中伸弥氏(国立大学法人京都大学物質―細胞統合システム拠点/再生医科学研究所教授)は、平成十九年十一月、ヒトの皮膚細胞からES細胞と遜色のない能力を持った「ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立」の業績が採択理由となった。
 受精卵から作製する「胚性幹(ES)細胞」は様々な細胞に分化する能力を維持したままほぼ無限に増殖できることから「万能細胞」と呼ばれる。ES細胞から作製する心筋や神経などの細胞を、創薬や再生医療に利用することが期待されている。しかし胚由来のES細胞は、倫理上の問題や拒絶反応の問題等、慎重な運用が求められている。
 山中教授の研究では、平成十八年八月、四つの因子を組み合わせてマウス体細胞(分化しきった細胞)に導入することにより、高い増殖能と様々な細胞へと分化できる多能性を持つ「iPS細胞」の樹立に成功した。平成十九年五月には改良したマウス第二世代iPS細胞を樹立し、この細胞を受精卵に戻すことにより、マウスの全身の細胞に正常に分化することを明らかにした。
 その後もマウスの肝臓と胃の細胞からiPS細胞を作製することにも成功し、iPS細胞は分化細胞の“時計を巻き戻す”ことによりできることを証明した。  その他の受賞で、私立大学関係者とその業績は次の通り。
 《科学技術賞(開発部門)》
 ▽逢坂哲彌早稲田大学理工学術院教授(界面電気化学の確立による高密度記録用小型磁気ヘッドの開発)、▽佐和橋衛武蔵工業大学知識工学部情報ネットワーク工学科教授(IMT―2000システムの開発)
 《科学技術賞(研究部門)》
 ▽磯野春雄日本工業大学工学部情報工学科教授(メガネなし立体テレビ方式の研究)
 《科学技術賞(理解増進部門)》
 ▽川村康文東京理科大学理学部第一部物理学科准教授(理科実験教室による青少年・市民の科学技術の幅広い理解増進)、▽澤口聡子東京女子医科大学医学部法医学講座准教授・先端生命医科学研究所准教授(乳幼児突然死症候群を中心とする小児法医学の理解増進)、▽森田真裕さん(近畿大学生物理工学部遺伝子工学科四年生)(体細胞クローンマウスによる生命科学研究教育の普及啓発)
 《若手科学者賞》
 ▽岩崎秀雄早稲田大学理工学術院准教授(シアノバクテリアの概日リズム機構についての研究)

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