平成20年4月 第2312号 (4月16日)
■責任ある研究活動を "日本学術会議憲章"を採択
日本学術会議(金澤一郎会長)は、去る四月七日から九日に開催された総会において、日本学術会議の会員及び連携会員が共有すべき基本的な目標、義務および責任の宣言をとりまとめた「日本学術会議憲章」を採択した。憲章起草の背景として、過去に同会議で採択された「科学者憲章」等が、時代に反映しなくなってきた事などが挙げられている。同憲章の全文は次の通り。
日本学術会議憲章
科学は人類が共有する学術的な知識と技術の体系であり、科学者の研究活動はこの知的資産の外延的な拡張と内包的な充実・深化に関わっている。この活動を担う科学者は、人類遺産である公共的な知的資産を継承して、その基礎の上に新たな知識の発見や技術の開発によって公共の福祉の増進に寄与するとともに、地球環境と人類社会の調和ある平和的な発展に貢献することを、社会から負託されている存在である。日本学術会議は、日本の科学者コミュニティの代表機関としての法制上の位置付けを受け止め、責任ある研究活動と教育・普及活動の推進に貢献してこの負託に応えるために、以下の義務と責任を自律的に遵守する。
第1項 日本学術会議は、日本の科学者コミュニティを代表する機関として、科学に関する重要事項を審議して実現を図ること、科学に関する研究の拡充と連携を推進して一層の発展を図ることを基本的な任務とする組織であり、この地位と任務に相応しく行動する。
第2項 日本学術会議は、任務の遂行にあたり、人文・社会科学と自然科学の全分野を包摂する組織構造を活用して、普遍的な観点と俯瞰的かつ複眼的な視野の重要性を深く認識して行動する。
第3項 日本学術会議は、科学に基礎づけられた情報と見識ある勧告および見解を、慎重な審議過程を経て対外的に発信して、公共政策と社会制度の在り方に関する社会の選択に寄与する。
第4項 日本学術会議は、市民の豊かな科学的素養と文化的感性の熟成に寄与するとともに、科学の最先端を開拓するための研究活動の促進と、蓄積された成果の利用と普及を任務とし、それを継承する次世代の研究者の育成および女性研究者の参画を促進する。
第5項 日本学術会議は、内外の学協会と主体的に連携して、科学の創造的な発展を目指す国内的・国際的な協同作業の拡大と深化に貢献する。
第6項 日本学術会議は、各国の現在世代を衡平に処遇する観点のみならず、現在世代と将来世代を衡平に処遇する観点をも重視して、人類社会の共有資産としての科学の創造と推進に貢献する。
第7項 日本学術会議は、日本の科学者コミュニティの代表機関として持続的に活動する資格を確保するために、会員及び連携会員の選出に際しては、見識ある行動をとる義務と責任を自発的に受け入れて実行する。
日本学術会議のこのような誓約を受けて、会員及び連携会員はこれらの義務と責任の遵守を社会に対して公約する。