平成20年4月 第2312号 (4月16日)
■私学振興を重要政策課題に 平成19年度文部科学白書
文部科学省は、この度、『平成十九年度文部科学白書』を発表した。この白書は、同省全体の施策を広く国民に紹介することを目的に毎年刊行されているものであり、特集部分と文教・科学技術施策の動向と展開の年次報告部の二部構成でまとめられている。なお、十九年度の特集は「教育基本法改正を踏まえた教育改革の推進/「教育新時代」を開く初等中等教育改革」となっている。ここでは同白書第二部の中から、「第四章:私立大学の振興のために」を取り上げる(一部省略)。
重要な役割を果たす私立学校
私立学校に在学する学生生徒などの割合は、大学・短大で約八割、専修学校・各種学校で約九割以上、高等学校で約三割、幼稚園で約八割となっており、私立学校は我が国の学校教育の発展に大きく貢献している。また、近年ますます国際化・高度情報化する社会の中で、各私立学校は、多様化する国民のニーズに応じた特色ある教育研究の推進が求められており、それぞれが建学の精神に基づく個性豊かな活動を積極的に展開している。このように、私立学校は、我が国の学校教育の発展にとって、質・量両面にわたり重要な役割を果たしている。
このため、文部科学省は、私立学校の振興を重要な政策課題として位置づけ、その教育研究条件の維持向上と在学する学生生徒などの修学上の経済的負担の軽減を図るとともに、経営の健全性を高めるため、次の施策をはじめとする振興方策を講じ、その一層の充実に努めている。
@経常費補助を中心とする私学助成事業、A日本私立学校振興・共済事業団における貸付事業、B税制上の特例措置、C学校法人の経営改善支援。
私立学校に対する助成
一、私立大学等に対する助成
(一)経常費に対する補助
平成十九年度は、各大学等の経営の効率化を促すため、定員割れ大学等への減額の強化を行っている。
特別補助は、平成十八年度まで、日本私立大学振興・共済事業団執行の「特別補助」と文部科学省執行の「私立大学教育研究高度化推進特別補助」に分かれていたものを統合し、日本私立学校振興・共済事業団執行の「特別補助」に一本化した上で、改組・メニュー化し、各大学等の特色を活かせるきめ細かな支援をより一層充実させた。また、特別補助においては、定員割れ解消に向けた経営改善に取り組んでいる大学等に対する支援として「定員割れ改善促進特別支援費」を新設した。十九年度においては、約三二八一億円の予算を計上している。
(二)施設・設備等の整備に対する補助
@研究基盤の整備と研究機能の高度化を推進するため、優れた研究プロジェクトに対する重点的かつ総合的な補助を行う「私立大学学術研究高度化推進事業」。
A高度情報化に対応したマルチメディア施設や学内LAN(学内ネットワーク)、パソコンなどの情報通信環境を整備するために必要な補助。
B校舎などの耐震補強工事、アスベスト対策工事、バリアフリー化工事などに対する補助。
平成十九年度予算では、合わせて約一六九億円を計上している。このうち、@、Aに関する補助金の配分に当たっては、外部の学識経験者から構成される委員会において審査・選定を行っている。
二、私立高等学校等に対する助成
(一)経常費助成費に対する補助
平成十九年度には、約一〇三九億円の国庫補助金を措置するとともに、地方交付税についても充実が図られている。
また、社会人講師や補助教員などの活用に対する補助や幼稚園における預かり保育、子育て推進事業などの補助や、保護者の失職・倒産による家計急変や生活保護世帯を対象とした授業料減免措置に対する補助の充実も図っている。
(二)施設・設備の整備に対する補助
文部科学省では、私立高等学校などにおける校舎施設の機能をより高めることを目的として、@校内LAN、施設のバリアフリー化などの改造工事、A防災機能・安全機能強化のための施設整備、B環境へ配慮した施設づくりと環境教育のための施設整備などに対する補助を行っている。平成十九年度は二〇億七八〇〇万円を計上している。
また、IT教育の充実を図るため、コンピュータ等のIT教育設備の購入に要する経費の一部を補助する「私立高等学校等IT教育設備整備推進事業」を実施しており、平成十九年度は一一億円を計上している。
(三)教員研修事業費等に対する補助
平成十九年度は約四七六六万円を計上している。
三、私立学校施設高度化推進事業
現在、多くの私立学校施設で老朽化が進み、建て替え期に差し掛かってきている。そのため、私立学校施設の高度化・近代化を計画的に推進し、教育研究条件の充実向上を図るため、日本私立学校振興・共済事業団から融資を受けて実施される学校施設の改築事業について、貸付金利に応じた利子助成を行っている。
具体的には、築三〇年以上の老朽校舎及び危険建物と認定された旧耐震基準の施設(昭和五十六年以前の建物)の改築工事が対象。
また、平成十五年度からは、八年度以前に実施された学校施設整備事業についても、教育方法などの改善計画の円滑な遂行を支援するため、その金利負担の一部を利子助成の対象としており、合わせて約一二億円を計上している。
四、私立専修学校に対する助成
専修学校(専門課程)における教育環境の充実を図るため、教育装置や情報処理関係設備の導入に要する経費の補助、教育研修に対する補助などの助成を行っている。
私立学校振興方策の充実
一、日本私立学校振興・共済事業団の事業
私立学校振興のための施策として、文部科学省から私立大学等経常費補助金の交付を受け、これを私立大学等を設置している学校法人に交付しているが、平成十九年度においては、十八年度まで文部科学省執行であった「私立大学教育研究高度化推進特別補助」を日本私立学校振興・共済事業団執行の「特別補助」に統合し、交付金額は約三二八一億円を予定している。
さらに、私立学校の校地・校舎等の施設設備の整備等に必要な資金については、長期・低利の有利な条件で学校法人への貸付けを実施しており、平成十九年度においては、総額約六〇〇億円の貸付けを計画。
二、私立学校に関する税制
特定公益増進法人の証明を受けた学校法人に対する寄附金については、個人の場合には寄附金控除、企業など法人の場合には一般の寄附金とは別枠で損金算入が認められている。個人の寄附金控除については、平成十九年分の所得税より寄付金控除の対象となる寄附金の限度額が総所得金額等の三〇%から四〇%に引き上げられた。さらに、日本私立学校振興・共済事業団に対して支出された寄附金で、日本私立学校振興・共済事業団が、私立学校の教育に必要な費用・基金に充てられること等を確認したもの(いわゆる受配者指定寄附金)について、法人が寄附した場合には、支出額の全額を損金算入することが認められている。
また、一定の要件を満たす学校法人に対し、相続財産をその申告期限までに寄付した場合には、その相続財産に係る相続税は非課税とされている。
三、学校法人に対する経営改善支援
近年における少子化などの影響もあり、学校法人をめぐる経営環境は全体として厳しい状況にある。
平成十九年度に入学定員を満たしていない私立学校が、大学で二二一校(約三九・五%)、短期大学で二二五校(約六一・六%)を占めている。
文部科学省としては「学校法人経営指導室」を設けるなど事務体制の充実を図るとともに、学校法人運営調査委員制度などを活用した経営に関する指導・助言を行っている。
また、「経営困難な学校法人への対応方針について」(平成十五年五月)を踏まえて、十九年八月には日本私立学校振興・共済事業団から「私立学校の経営改革と経営困難への対応」について提言を受けている。
文部科学省としては、引き続き、日本私立学校振興・共済事業団とも連携しつつ、学校法人の経営改善や再生等に向けた具体的な方策の検討を行うなど、学校法人の経営改善支援を進めている。