平成20年4月 第2311号 (4月9日)
■[新刊紹介]
「教育改革の展開」 齋藤 諦淳 著
著者は初代の文部省生涯学習局長。文部官僚として教育行政の中核にあって戦後教育政策を推進。早くから大学の変革・改革の必要性を訴えてきた。官僚を辞めた後は大学の現場で陣頭指揮をとった。
本書は二つに整理されている。第T編が「教育改革への軌跡―私のライフヒストリー」、第U編が「教育改革論集―新しい教育政策のあり方」。
第T編は、日本官僚制研究会が出版した「戦後日本を築いた上級官僚のライフストーリー」のインタビューに著者が応えた発言をまとめた。文教政策の推移の一端が収録されている。
この第T編では、文部省に入って成し遂げた「大きな仕事」の三つが白眉だ。@医学教育課長として医科大を一六ヶ所つくるA臨時教育審議会の事務局次長として臨教審を切り盛りB生涯学習局の初代局長として生涯教育を推進する。
第U編は八章から成り、著者の各時期の論文、講演などを収録している。各章とも時代と対立したり調和したり…揺れ動く教育の実態を浮き彫りにしている。
第一章では、五五年体制を背景としたイデオロギー対決など硬直的な文教政策。二章以下では、臨教審を契機とする教育改革、高等教育と社会の関係、大学の大衆化、四章以下では生涯学習体系への移行を描く。
大学問題にも鋭くかつ暖かい目線で論じている。六章の「戦後社会と高等教育」、七章の「万人の大学」は大学の現場を踏んだ元文部官僚ならではの論考。大学人にも示唆を与える一冊である。
「教育改革の展開」
定価2,310円(税込)
(株)武蔵野大学出版会
TEL042-468-3003
定価2,310円(税込)
(株)武蔵野大学出版会
TEL042-468-3003