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平成20年3月 第2308号 (3月12日)

環境人材育成コンソーシアム立ち上げなど
  環境省が環境人材ビジョンまとめる

 環境省では、昨年六月に閣議決定された二十一世紀環境立国戦略やイノベーション25等を踏まえて、「持続可能なアジアに向けた大学における環境人材育成ビジョン検討会」を実施し、このたび、長期的な持続可能なアジアの実現のための人づくりを行っていくための考え方や方策を検討し、環境人材育成ビジョンを取りまとめた。同ビジョンは三章からなり、持続可能な社会の構築を背景とした環境人材育成の現状と今後期待される取り組み、また、環境人材育成に向けた産官学民協同のコンソーシアムの立ち上げ等について述べられている。概要の一部は次の通り。

 持続可能なアジアに向けた大学における環境人材育成ビジョン
 持続可能な社会づくりには、現在の経済社会を変革し、環境保全を内在化させていく人材が必要不可欠である。「持続可能なアジアに向けた大学における環境人材育成ビジョン検討会」では、長期的な持続可能なアジアの実現のための人づくりの考え方や方策を検討し、環境人材育成ビジョンをとりまとめた。
 環境人材ビジョン5 持続可能なアジアの実現に必要不可欠な次世代型人材像
 環境人材に求められる三大要素とは、経済・社会・環境の三つの側面から利害関係が複雑に交錯する現実社会における環境問題の解決の複雑さ、多面性を十分に理解した上で、自らの職業や市民活動等を通じて、主体的に持続可能な社会づくりに取り組む強い意思(持続可能な社会づくりに主体的に取り組む強い意欲)、法律・経営・技術などの専門を持ちつつ、その専門分野と環境・社会との関係を理解し、環境保全のために専門性を発揮しうる力(持続可能な社会づくりのために貢献しうる専門性)、環境・経済・社会を統合的に向上させるプロジェクトを提供し、関係者を説得して合意形成を行い、組織を動かしてプロジェクトを実施するリーダーシップ(組織を動かすリーダーシップ)の三つである。
 産学官民の協働によるアジアの環境人材育成イニシアティブの展開
 一、環境人材育成に向けた大学における取り組み
 持続可能な社会の構築を担う環境人材を育成するという観点から、大学に期待される取り組みとして、環境・持続可能性に係る講義・演習科目および参加型活動の導入、環境問題に取り組む現場でのフィールドワーク・インターンシップの拡充が上げられる。また社会人教育・リカレント教育での環境・持続可能性学の促進なども重要である。
 @環境人材育成のためのプログラム・カリキュラムの導入
 環境人材が備えるべき素養の習得という観点から、環境人材育成プログラムには、「環境保全や持続可能な社会形成の強い動機づけ」のための学びや「環境保全についての分野横断的な知識や環境保全に関する一定のスキル等」のための学び、「社会変革に望むリーダーシップの発揮」のための学びが必要である。
 (大学の段階毎のプログラム)
 教養科目では、環境問題に係る基礎的な理解を促す講義・演習に加え、環境問題が生じている現場や環境管理を行っている現場の訪問・実習、これらを踏まえた討議、ディベート等の参加型の学びの場を提供する。
 専門科目では、各自の専門分野を社会に適用する際に配慮すべき環境保全の視点を学び、課題発見能力を高めていくとともに、行動するために必要な企画力、創造力といった「スキル」を習得できる機会の提供が必要である。大学院においては鳥瞰的・俯瞰的な視点から環境保全・持続可能性への理解を一層深めること、社会で活躍するために必要なコミュニケーション能力や合意形成能力等の「社会性」や新しい取り組みに挑戦する「起業家的精神」や「リーダーシップ」を醸成させていくことが求められる。
 (環境リーダーシッププログラムの構築)
 環境リーダーシップを育むカリキュラムが大学院レベルで導入される場合は、各自の専門分野の追及と持続可能性の俯瞰力を高めるカリキュラムや社会的起業家育成に係るカリキュラムを体系的に組み合わせることが有効であろう。
 すなわち各専門分野の追求により持続可能性に資する事業経営に必要な能力、行政官に求められるバランス感覚を有しながら持続可能な社会の枠組み作りを行うために必要な能力、持続可能性追求に資する専門性を高める技術者として必要な能力を高めつつ、持続可能性の俯瞰力を高めるカリキュラムや社会的起業家育成に係るカリキュラムを選択的に履修できる環境リーダーシッププログラムを構築することが考えられる。
 A社会人・リカレント教育としての環境リーダー育成プログラムの構成要素
 環境リーダー育成を目指した社会人教育、リカレント教育では、大学教育を地域社会に向けて開放し、社会人教育や生涯学習の充実を図り教育機会の拡大を進めること、時間的制約条件の厳しい社会人学生に対し大学が短期間で集中的に学ぶ機会を開発・提供することが求められる。
 二、環境人材育成に向けた大学と企業・行政・NPO等が参加するコンソーシアムの立ち上げ
 環境人材育成コンソーシアムは、大学における持続可能な社会を担う環境人材を促進・支援することを通じて環境リーダーを育成していくことを目的とする。環境人材育成プログラム支援を中核として、アジア諸国との窓口機能を提供する。環境人材のキャリアパスを支援するためには、企業のグリーン化を促すための大学との共同研究の促進や大学側の知見を企業活動にインプットするための研究会といった産学連携の機能も求められる。
 コンソーシアムの役割として、@産官学民の個別ニーズに応じたコーディネート機能や大学間もしくは大学と企業、NPO等との出会いや交流の場を設定すると共に、Aインターンやフィールドワーク等の実践型教育を普及するための共有システムを構築、コンソーシアムに参加する大学が活用できる環境人材育成に係る共通インフラの開発と整備などが必要である。
 このようなコンソーシアムを確立するためには、財政・活動面の双方で自立発展が可能な構造を作り上げ、既存のネットワークと有機的に連携し、国内外の窓口・調整機能を果たすことにより、産官学民の連携を加速させることが重要である。設立当初は日本の関係機関の参加を基本として体制を確立していくことが望ましいが、数年後にはアジアの大学等の参加や連携関係を構築していくことが望ましい。
 三、アジアにおける環境人材の育成に向けて
 日本の学生が日本及び日本以外のアジアにおいて、日本以外のアジアの学生が母国及び日本の大学において学び環境人材として活躍できるよう、日本と日本以外のアジアとの連携を進めていくことが重要である。このような大学間連携を促す仕組みとしては、アジアの大学間のネットワーク及び協同プロジェクトの構築やコンソーシアムの活動と連携させながら、日本とアジアの大学との協同により、持続可能なアジアに向けた環境人材の育成を進めていくことが望まれる。
 アジアにおける環境人材育成を進めていくためには、アジアの大学における環境人材育成を促進し、また、各人に対する環境人材として活躍することへのインセンティブ付与が不可欠であろう。また、日本及びアジアの環境人材間のネットワークを構築し、交流を深めることなどにより、生涯における環境人材としてのスキルアップの仕組みを作り、環境人材であることの社会的意義を高めていくことも求められよう。
 四、大学における環境人材育成促進に向けた各主体の取り組み
 アジアにおける持続可能な社会の構築を担う人材育成を大学において進めるために、政府に求められることは、大学における、企業、NPO、行政等の社会の受け入れ側と連携して進められる環境人材育成プログラムの開発・実証を促進し、その実施を奨励する支援を行うことや環境人材の育成を主題とした産官学民連携のコンソーシアムを立ち上げ軌道に載せていくこと等が考えられる。
 企業及びNPO等においては、コンソーシアムの参加を通じて人材受け入れ側の立場から必要なスキル、ニーズを提示していくとともに、実践の現場から得られた知見、知恵の提供、または人材育成に必要な実践の学びの場の提供が行われることが望まれる。

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