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平成20年3月 第2308号 (3月12日)

活力に富み、個性輝く大学へ

 中村学園大学学長 藤本 淳

 小生、一九三六(昭和十一)年生まれ。この年は、国内では、二・二六事件、ヨーロッパでは、ナチス・ドイツの勃興によるミュンヘン会談や「前畑ガンバレ」のベルリン・オリンピック。今から考えれば、平穏であるべき子年が太平洋戦争、第二次世界大戦の前兆の年でもあった。小生は、当然、軍国少年。小学校三年で終戦。青空教室、脱脂粉乳給食、男女同権、民主主義、平和憲法、日教組など将しく戦後レジームの確立の時代であった。
 昭和三十七年、九州大学医学部を卒業し、大学院を経てお決まりの留学。インディアナ大学で電子顕微鏡を使っての味蕾の研究。滞米中の感想は、日本人が神風を信じ、竹槍を並べていた時、ハリウッドでは、「風と共に去りぬ」を製作していたような大国と四年も五年も戦争したものだということであった。
 産業医科大学開設に伴い、解剖学教授として二四年間勤務、一番の思い出は、教養教育を破壊した「設置基準の大綱化」による専門教育へのearly exposureであった。
 定年を迎え、平成十四年から現職。本学は、学園祖中村ハル氏が設立した福岡高等栄養学校を端緒とし、五〇年以上の歴史を持ち、現在、三学部(管理栄養士養成施設である栄養科学部、教員・保育士養成の人間発達学部、マーケティングやロジスティクスを学ぶ流通科学部)と短期大学部からなり、学生数、約三八〇〇名の中規模大学であり、入口、出口が大変順調であるのは、卒業生が築いた伝統によるものであろう。
 学園祖が唱えた建学の精神から日本人としての礼節、実学を重視した穏やかな校風であり、平成十六年から三学部に学士・修士課程教育の整備、栄養科学部では、西日本初の博士課程が開講し、さらに、健康増進センターの整備に加え、薬膳科学研究所、流通科学研究所が付置研究所として学部・大学院の教育・研究に連携し、国際交流、産学官連携事業も推進されている。
 少子化に伴う大学全入時代。入学者の学力格差と精神的多様性、今こそ昔の教科書(実語教)にある「山高きが故に貴からず、樹あるを以って貴しとする。人肥えたるが故に貴からず、智あるを以って貴しとする」の原点に戻った人間教育が必要なのではないか。
 社会性教育を更に充実させ、そしてドイツ統一の精神的支柱となったカントやゲーテを求めてきた「普遍性と個性」とのバランスを考え、「競争的環境の中、活力に富み、個性輝く大学・短期大学部」への道を愚考している。

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