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平成20年2月 第2306号 (2月27日)

ICT活用教育広がる メディア教育開発センターが調査

 メディア教育開発センター(清水康敬理事長)は、このほど、eラーニング等のICTを活用した教育に関する調査報告書(二〇〇七年度)を発行した。ICT(Information Communication Technology:コンピュータやインターネット、モバイル端末等の情報コミュニケーション技術)を活用した教育を導入している機関はおよそ七六%となっている。概要は次の通り。

 近年、高等教育機関においては、教育手法としてeラーニング等のICTを活用した教育の導入が進められている。また、国の施策においても、ICT活用教育の推進が重要な課題とされている。同調査は、このような状況を踏まえ、大学等におけるICT活用教育の現状や課題について調査分析を行った。対象となった全国高等教育機関一二〇〇機関のうち、有効回答数は九一〇機関であり、回収率は七五・八%であった。大学の学部・研究科からは、三六六九の調査対象学部・研究科のうち一八五二件の回答が得られた。
 調査結果(実施状況)
 まず、ICT活用教育を導入している機関の割合は七五・八%であり(うち、私立大学は八一・二%)、昨年度調査における導入率(七四・六%)から微増している。「導入を予定している」(〇・八%)または「導入を検討している」(七・一%)への回答率は合計七・九%となっており、昨年度調査における同項目への回答率の合計一一・六%から三・七ポイント減少している。
 導入の予定はなく、検討もしていないと回答した一四四機関を対象として、その理由を調査したところ、「実技科目等、ICT活用教育になじまない授業が多いから」との回答が最も高く、次いで「導入にあたっての予算が不足しているから」、「学内のインフラが整備されていないから」が、同程度の回答率となっている。
 導入の有無にかかわらず、現在の取組み内容と今後の取組み方針を調査した。回答率の高い順に「対面授業とeラーニングを組み合わせて(ブレンディド・ラーニングにより)実施」(三七・四%)、「ICT活用教育コンテンツ・コースの拡充」(三〇・〇%)、「ICT活用教育のコンテンツ・コースの質の向上」(二九・〇%)となっている。また、今後の取組み方針では、「ICT活用教育のコンテンツ・コースの質の向上」(三七・〇%)、「ICT活用教育コンテンツ・コースの拡充」(三七・〇%)が最も高く、次いで「対面授業とeラーニングを組み合わせて(ブレンディド・ラーニング)による実施」(三六・九%)となっている。
 次に、導入している機関を対象として、取組み組織について調査した結果、「学内の一部の組織(情報教育センター、学部・学科等)で取り組んでいる」(五二・六%)が最も高く、次いで「組織的な対応ではなく、教職員が個人的に取り組んでいる」(三九・〇%)、「全学的な委員会やワーキング・グループを設置して取り組んでいる」(三〇・四%)となっている。
 また、「教職員が個人的に取り組んでいる」を選択した二六九校のうち、当該項目以外に何らかの組織的取組みを行っている機関は一六四校あり、組織的な取組みと並行して、教職員の個人的な取組みによって行う機関も多い。
 ICT活用教育の導入を予定または検討している機関を対象として、予定している取組み組織の形態について調査したところ、「学内の一部の組織(情報教育センター、学部・学科等)で取り組む予定」が六二・五%と突出して高く、次いで、「組織的な対応ではなく、教職員が個人的に取り組む予定」(二六・四%)となっている。
 導入している機関を対象として、導入目的を調査したところ、「学生にとって効果的な教育を実施するため」(八〇・〇%)が最も高く、次いで「多様な学習形態へ対応するため」(六〇・七%)、「教育を効率的に実施するため」(五九・三%)となっている。高等教育機関に求められている効果的な教育の実施や、学習者の様々な需要への的確な対応への要請が、ICT活用教育の導入に繋がっていると考えられる。
 導入メリットについて調査を行った。「効果的な教育の実施が可能となった」(四九・六%)が最も高く、次いで「いつでもどこでも学習ができるようになった」(四四・六%)、「学生のニーズに応じた最適な学習をすることができるようになった」(三六・八%)となっている。
 短期大学では「効果的な教育の実施が可能となった」(四九・七%)、「学生のニーズに応じた最適な学習をすることができるようになった」(三四・七%)の順に高く、高等専門学校では「いつでもどこでも学習ができるようになった」(五五・四%)、「効果的な教育の実施が可能となった」(五三・六%)の順となり、機関の種類により項目順位にばらつきが生じた。
 その他の自由記述回答では、「黒板への記述等の時間短縮になった」、「教員の授業に対する準備と授業の進め方についての方策が充実した」、「学習者の活動状況により毎週授業を再設計できる」等が挙げられた。
 導入している機関を対象として、ICT活用教育を実施する際の課題を調査したところ、「システムやコンテンツを作成、維持するための人員が不足していること」(五八・七%)が最も高く、次いで、「教員のICT活用教育に関するスキルが不十分であること」(五一・九%)、「eラーニング講義(授業を含む)のシステム開発に関するノウハウが不十分であること」(四三・九%)となっている。
 今後導入する予定または検討している機関を対象として、導入にあたって課題となる事項について調査したところ、「システムやコンテンツを作成、維持するための人員が不足していること」(六八・一%)、「教員のICT活用教育に関するスキルが不十分であること」(六三・九%)が、六割を超える回答率となっている。次いで、「ICT活用教育を導入するための予算が確保されていないこと」(五四・二%)、「ICT活用教育の教育効果に対し、教職員の理解が不十分であること」(五二・八%)が、五割に及んでおり、導入を予定・検討している段階では、人員や予算不足のほか、ICT活用教育の教育効果に懐疑的な見方も強いことが示唆される。
 導入している機関を対象として、導入のデメリットを調査したところ、「コンテンツの作成など、教員の授業の準備の負担が増した」(五六・二%)が最も高く、次いで「システムの維持、管理で負担がかかった」(五〇・六%)、「対面授業と比べて、コストがかかった」(一八・七%)となっている。特に、教員の授業準備負担と、システムの維持、管理負担の二項目に集中した結果となっており、導入にあたっては、併せて教員負担の軽減策を組織的に実施することが望ましい。
 その他の自由記述回答では、「用いる教材作成システムに対応した教授方法に限定されるため、多様な教授方法を取り難い」、「eラーニングシステムを使いこなせる教員が不足しており、一部のスタッフに負担が集中する」、「システム維持・管理およびコンテンツ作成などを専門に行える要員の確保が難しい」等のデメリットが挙げられた。

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