平成20年2月 第2305号 (2月20日)
■近大「くえ鍋」、藤女子大「ピンクの発泡酒」など
大学は美味しい―東京・新宿の新宿高島屋にて、去る二月十六日から二十日まで、「小学館DIME『大学は美味しい!!』フェア」が開催され、全国から二四大学が出展、自由な発想と一途な研究から生まれた大学発の味が紹介された。利益重視ではないため、必ずしも生産量は多くはない。しかし、その分、環境配慮や安全等を当然のこととして取り組んでいるものでもある。出展の私立大学のうち、四大学を取り上げる。
小学館のトレンド情報誌「DIME(ダイム)」では、平成十八年より、「食」に関する研究・開発の成果を商品化した大学を取り上げてきた。このたび、掲載された二四大学の商品を一度に紹介するフェアを企画、新宿高島屋において実現することとなった。客の入りは連日好調で、商品の売り切れも相次ぎ、出展大学もその手ごたえを感じているようだ。
●近畿大学
近畿大学では、長年の同大学水産研究所の研究成果から、幻の高級魚と言われる“くえ”の養殖に成功した。すでに平成十四年に、世界で初めてクロマグロの養殖に成功し、「近大マグロ」として売り出して、一躍有名となった同大学の大学発ベンチャー「株式会社アーマリン近大」では、このたびのフェアに「本くえ鍋セット」を携えて参加した。
同社の大久保嘉洋専務取締役に話を聞いた。
「くえは地元の漁師ですらあまりお目にかかれない幻の高級魚と言われていますが、このたび、いくつもの困難を乗り越え完全養殖に成功しました」
同社の競争力の高さの一つがこの卓越した養殖技術で、世界的にも注目されている。ニューヨーク等では「近大ツナ」として認知されているという。
くえやマグロを「近大ブランド」として一般消費者に売り出すことで、大学のプロモーションにも一役買っている。消費者にお金を出して買ってもらいつつ、「近大の養殖技術は最先端」というイメージと共に、大学名も口コミで広がっていくのである。
また、同研究所が立地する和歌山県白浜町の地域活性化にも貢献しているという。「冬になると、観光客は海産物が豊富な日本海側に流れてしまう。くえ等が観光の起爆剤になれば」と大久保専務取締役は話す。
課題もある。いけすの限界から生産量が限られてしまう点だ。しかし、「大学発ベンチャーでは、利益よりも公益が第一。利益を重視し、無理な拡大をすることは考えていません。今後は養殖技術そのものを普及させていきたい」と意気込みを語った。
●藤女子大学
「ビールと言えば、男性のイメージがあるが、女性向けのものがあってもいいじゃないか」ということで、日本地麦酒工房と藤女子大学が共同開発したのが、「カナストーリー」というピンクの発泡酒である。同大学の池田隆幸教授とそのゼミ生が、若い女性の感性を活かして試作とアイディア出しを繰り返し、ラベルやネーミングも考えた。また、素材も石狩市の地元産である赤シソとムラサキイモを使用し、味も苦味を抑えたものになっている。
現在は、北海道の各地の飲食店やデパート等にも置かれ、売り上げを伸ばしているという。
●北里大学
北里大学の獣医学部では、北海道の八雲牧場を実習の場とし所有している。ここでは、学生実習を行うほか、交雑種の研究、牛の糞尿を堆肥化して牧草を育てる「環境保全型資源循環畜産」を行っている。自然の力で育った「北里八雲牛」は安全であり、屠畜場で解体された後、北里大学ブランドのレトルトカレーや牛丼の具などに加工されている。こうした商品は、東都生協で販売するほか、大学医学部付属の病院の病院食で提供されている。
●崇城大学
九州は、有名な焼酎の産地である。しかしながら、焼酎業界では、蒸留後大量に排出される焼酎かすの処分に悩んでいた。昨年から規制により、海洋投棄ができなくなったためである。そこで、崇城大学の上岡龍一教授の協力の下、焼酎かすを利用した抗がん作用のある大学発の美容&健康ドリンク「U―ドリンク」を開発。大学発ベンチャー「健康予防醫學研究所」を立ち上げ、同商品の製造・販売を行っている。同商品は、熊本市内等で販売している。