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平成20年2月 第2305号 (2月20日)

革新的な技術創造を 「2008年の科学技術政策の重要課題」を報告

 去る一月三十日に、総理官邸において、第七三回総合科学技術会議が開催された。その中で、福田総理の施政方針演説を踏まえ、科学技術力の抜本的強化に向けて、特に重点的に取り組むべき課題をとりまとめた「二〇〇八年の科学技術政策の重要課題」が報告された。同報告は、本年の科学技術政策の方向性を提言するもの。概要は次の通り。

 1. 科学技術の現状についての基本認識
 (1)国力の源泉としての科学技術
 科学技術には革新を続ける強靭な経済・産業の実現、環境と経済の両立などの政策目標の達成に向けて、中心的役割を果たすことが期待されている。とりわけ、我が国が他国の追随を許さない技術を持ち続けることによる持続的な経済成長を実現する上で、また、地球温暖化問題への抜本的解決を図る上で、科学技術によるブレークスルーへの期待は大きい。このような観点から、基礎から応用に至る我が国の研究開発力全般を検証し、その強化に取り組むとともに、適切な知的財産の創造・保護・活用、政策目標と連動した研究開発マネジメントの実施によって、政策の実効性、効率性を高めることが喫緊の課題になっている。
 (2)科学技術を担う人材の育成・確保
 科学技術や産業の発展には、高度研究人材、高度技術者などの裾野の広い理工系人材の育成・確保が不可欠である。特に、国際競争を勝ち抜ける、グローバルに通用する一定水準以上の人材が大学・大学院等において育成され、様々な研究開発や産業の最前線で活躍することができるよう、いわば「高度理工系人材の好循環」を生み出すことが不可欠である。
 しかしながら、我が国では、これら高度理工系の人材育成については、特に、「質の確保」の面において、改善すべき点が多い。また、より根本的な問題として、理工系キャリアパスの魅力の低下、次代を担う子供の理数科離れや成人の科学に対する理解不足も深刻化している。このため、科学技術創造立国の基礎となる人材育成の問題に、総合的かつ早急に取り組む必要がある。
 (3)国民とともにある科学技術
 科学技術政策は、国民の幅広い理解と支持が得られて初めて国全体としての政策課題の解決に結実させることが可能となる。従って、政策の企画・立案及び実施に当たって、国民に科学技術の成果が実感できるように研究開発成果の社会還元を促進していくことが求められる。また、「安全・安心な社会の実現」、「健康と安全を守る」といった課題についても、国民・生活者の視点に立って取り組む必要がある。
 2. 科学技術力の抜本的強化に向けた取組
 (1)「革新的技術創造戦略」の展開
 我が国が持続的な経済成長を実現するためには、他国の追随を許さない革新的な科学技術を生み育て続けることが不可欠である。このため、我が国が世界をリードする科学技術を一層強化することを含め、これからの日本の成長を支える研究開発の推進を図るため、経済財政諮問会議と連携しながら「革新的技術創造戦略」を展開する。
 (2)「環境エネルギー技術革新計画」の策定
 北海道洞爺湖サミットも念頭に置きつつ、エネルギー問題や地球温暖化問題の抜本的解決に向けて、我が国が世界に誇る省エネ技術や燃料電池技術等の環境エネルギー関連技術の優位性を保持するとともに、温室効果ガスの排出を究極的にゼロにするような革新的科学技術のブレークスルーを目指し、「革新的技術創造戦略」の一環として「環境エネルギー技術革新計画」を策定する。
 3. 重要課題に対する戦略的な取組
 (1)科学技術外交の推進
 科学技術と外交の連携を高度化し、相乗効果を発揮する科学技術外交を推進。G8科学技術大臣会合等の場を通じて人類が直面する地球規模の課題の解決にリーダーシップを発揮する。
 (2)地域活力を向上するための総合的地域科学技術戦略の策定・推進
 科学技術を産学官の力を結集して地域発の新技術・新サービスに結びつけ、地域主導の内発的な活性化を推進するための総合的戦略を策定し、関係府省・地方自治体が一体となった地域科学技術施策を推進する。
 (3)高度研究人材・理工系人材の育成
 グローバルな競争の下で、科学技術によるイノベーションの創出を加速し、我が国が国際競争に勝ち残っていくためには、世界に通用する一定水準以上の人材が、大学・大学院等において育成されることが不可欠である。このため、産学官連携によるパートナーシップなどを通じて、カリキュラムやコースワークを国際水準に準拠したものに改めるとともに、課程修了者の「質の評価」手法について検討する。
 また、女性研究者や外国人研究者の割合は先進主要国と比較して極めて低く、創造的な研究環境の醸成のための人材の多様性の確保を図る必要がある。
 さらに、若手研究者向けの競争的資金の拡充、博士課程在学者の支援充実など、次世代を担う若手研究人材への投資を拡充する。
 子供の科学技術への関心度が世界で五七か国中五六位と深刻な状況になっていることに対応し、教員の資質向上を含め、子供の理数への関心を高めるための方策を検討するとともに、子供や若者が能力を発揮できる環境を産学官が一体となって整備する。また、これと表裏一体の問題でもある成人の科学技術への理解・関心を高めるための方策についても併せて検討する。
 (4)研究インフラ整備のあり方
 国全体としての優先度を踏まえた、中・大規模研究インフラ(施設・情報基盤)整備のあり方について、国全体の研究資金配分方法のあり方の一環として、検討する。
 (5)研究開発マネジメントの改革
 研究開発による「政策目標」達成の実効性を高めるために、政策目標と連動した研究開発目標の設定から、研究開発の実施、成果の評価、評価結果の反映に至るまで、研究開発マネジメントのあり方を点検し、PDCAサイクルの改善を図る。その際、研究開発のタイプ、組織体制の階層性、評価の目的等に応じて、それぞれの特性に応じた合理的な仕組みを構築する。また、より効果的な評価の実施を目指し、「研究評価に関する大綱的指針」を見直す。
 (6)国民の安全・安心の確保
 国民の安全・安心を確保した上で、再生医療を含む臨床研究、遺伝子組換え作物等の最先端技術の社会への導入促進が円滑に行われる環境整備を進めるとともに、我が国の安全保障上重要なフロンティア技術開発を着実に推進する。
 本計画の策定に当たっては、関係府省・機関が一体性を持って世界をリードすることができるよう、有機的な連携・協力体制の強化について検討する。

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