平成20年1月 第2302号(1月23日)
■地道に、ひたすら、いい教育を!
平成二十年は、十二支が一周して子年、「年男だから何か一文を」と、本紙が声を掛けて下さいました。言われてみれば、私は、昭和二十三年生まれなものですから、確かに年がまわれば還暦を迎えるわけであり、若いつもりでいたのに齢(よわい)既に六〇かと、今更ながら時の流れの速さに驚くばかりです。
また、奇しくも今年は、学祖・松本生太が本学を創設してから六五周年を迎えることになりました。
平成の御代も二〇の節目、私も六〇の節目、この学園も六五の節目という巡り合わせ。不思議なもので人間は、何かの節目ごとに、誰に言われるまでもなく来し方を振り返り、また未来を思い遣るものです。節目とは、存外大事なことで、自然に人の心の中に過去への反省と未来への計画を呼び起こします。
学園創設六五周年となる年を迎えて、私は私で何が出来るだろうかと振り返り、私が大学院・大学・短期大学部の「建学の精神」という授業を担当しているところから、『知と心の教育‐鎌倉女子大学「建学の精神」の話』と題して「北樹出版」から一本を刊行し、学祖の願いを文章としても若い人に伝えることを計画しました。経済社会をまねて教育の世界も「経営戦略」などという言葉が大流行りです。無論、学校も経営体である以上、それは当然のことではありますが、あまり戦略めいたものももたない私の、恥ずかしながらこれも私なりの小さな努力のつもりです。
学園の方は、「改正教育基本法の制定」、「学校教育法の一部改正」、「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(中央教育審議会答申)、「審議のまとめ―平成二十三年度から実施予定の次期学習指導要領の概要」(同審議会教育課程部会)、「教育職員の免許法改正」と、次々と国の教育に関する重要施策が打ち出されるのに呼応して、六五周年を機に、現在の教育学科を本格的に「教育学部教育学科」へと拡充する計画に着手しようとしています。
個人であっても組織であっても真剣に努力していれば、世の中の皆さまは必ずそれを見ていて下さるものであり、教育は、大向こうを唸らすイベントでも、直ちに消費される広告でもなくそれは枝葉のこと、日常活動そのものであり、リーダーと教職員が出来るだけ近未来を見定めて、一人ひとりが地道に、ひたすら、いい教育を求めて努力していくことこそが、最も説得力をもってその学園の教育がひたひたと世の中に広がっていくものだと、常々私はそう思っています。