平成20年1月 第2301号(1月16日)
■イノベーション25関連に重点 平成20年度科学技術・学術3局予算案
既報のとおり、文部科学省の平成二十年度予算案の中から、科学技術創造立国の実現のための予算である科学技術・学術関係三局の予算案の概要を掲載する(内訳を除くカッコ内は対前年度比増▲減)。このたびは、イノベーション25関連事業、特に若者や若手研究者の人材育成等に重点的に予算がおかれた。
成長力の強化―「イノベーション25」等による科学技術の振興―
1. 次世代を担う人材への投資の充実・強化
一、次世代を担う若者への理数教育の充実― 八八億七五〇〇万円(二億八〇〇万円)
[概要]科学技術関係人材の育成に向け、子どもが科学技術を学ぶ環境を充実すると共に、理数に興味・関心の高い子どもの能力を伸長することができる効果的な環境を提供するため、理数教育の充実を図る。
◆理数好きな子どもの裾野の拡大(▽理科支援員等配置事業― 二四億五〇〇〇万円、▽理科教育等設備整備費補助― 一三億二〇〇〇万円)
◆理数に興味・関心の高い生徒・学生の個性・能力の伸長(▽スーパーサイエンスハイスクール― 一四億八二〇〇万円、▽未来の科学者養成講座【新規】― 一億円、▽国際科学技術コンテスト支援― 三億五二〇〇万円、▽理数学生応援プロジェクト― 一億五〇〇〇万円)
二、大学における人材育成機能の強化と産学が協働した人材育成― 七四二億七七〇〇万円(一七億九九〇〇万円)
[概要]大学院教育の抜本的強化や世界的に卓越した教育研究拠点の形成、人材養成面での産学連携の強化により、社会のニーズに対応した人材養成を行う。
◆大学における人材育成(高度な人材養成の中核である大学院の教育研究機能を抜本的に強化するとともに、世界的な卓越した教育研究拠点を形成する:▽大学院教育改革支援プログラム― 五〇億七〇〇〇万円、▽グローバルCOEプログラム― 三三九億八六〇〇万円、▽原子力人材育成プログラム― 二億一六〇〇万円)
◆産学が協働した人材育成(社会のニーズに対応した人材育成を行うため、産学が協働した教育プログラムの開発・実施等、産学連携による人材育成を推進する:▽産学連携による実践型人材育成事業― 七億三三〇〇万円、▽先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム― 八億二八〇〇万円、▽地域産業の担い手育成プロジェクト― 三億九〇〇〇万円)
三、イノベーション創出の担い手となる若手・女性研究者等への支援の強化― 八五八億一〇〇万円(一〇二億九五〇〇万円)
[概要]「知」をめぐる世界的な大競争時代の中、科学技術人材の育成・確保、社会の多様な場における活躍の促進が日本のイノベーション創出のために最重要課題となっている。このため、若手・女性・外国人研究者など多様な人材が能力を最大限発揮できる環境を整備する。
◆若手研究者等の活躍促進(▽優秀な博士課程学生への経済的支援の充実(特別研究員事業)― 一〇五億六〇〇〇万円、▽若手研究者養成システム改革プログラム(科学技術振興調整費)若手研究者の自立的研究環境整備促進― 七六億七〇〇〇万円、▽イノベーション創出若手研究人材養成【新規】― 一〇〇億円、▽「若手研究」等の充実(科学研究費補助金)― 三四三億二〇〇〇万円、▽戦略的創造研究推進事業(さきがけ)― 七一億八〇〇〇万円)
◆女性研究者の活躍促進(▽女性研究者支援モデル育成(科学技術振興調整費)― 一三億七〇〇〇万円、▽出産・育児等による研究中断からの復帰支援(特別研究員事業)― 三億四九〇〇万円)
◆外国人研究者の活躍促進― 六二億四四〇〇万円
四、科学技術に関する理解と意識の醸成― 八四億六〇〇〇万円(▲二億四一〇〇万円)
[概要]「社会のための科学技術」を実現するため、科学者などが分かりやすく国民に科学技術を伝え、説明責任と情報発信を強化する。また、科学技術に関する基礎知識や能力の向上に資する取り組みを推進する。
◆地域の科学舎推進事業― 七億八二〇〇万円
◆国立科学博物館― 三一億二五〇〇万円
◆日本科学未来館― 二八億三〇〇〇万円
2. 基礎研究の充実と研究環境の整備
一、学術研究の振興
@大学・大学共同利用機関等における独創的・先端的基礎研究の推進― 一一八六億七七〇〇万円(▲一一億三五〇〇万円)
A科学研究費補助金の拡充― 一九三二億円(一九〇億円)
B人文・社会科学の振興― 六億一〇〇万円(四億九八〇〇万円)
◆近未来の課題解決を目指した実証的社会科学研究推進事業【新規】― 一億四九〇〇万円
◆世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業― 一億一〇〇万円
◆人文学及び社会科学における共同研究拠点の整備の推進事業【新規】― 三億五一〇〇万円
二、競争的資金の拡充等による研究開発の推進― 三七九二億四九〇〇万円(一〇二億九〇〇万円)
[概要]研究費の選択の幅と自由度を拡大し、競争的な研究開発環境の形成に貢献するととともに、イノベーションの種となる多様な基礎研究を推進する科研費等の競争的資金の拡充(間接経費の拡充を含む)を図る。その際、研究費の管理・監査体制の整備を進めるための取り組みを進め、また、府省共通研究開発管理システムの運用を通じて、研究費の効果的・効率的運用を一層徹底していく。
◆競争的資金の拡充(科学技術振興調整費― 三三八〇億円 等)
◆研究費の効果的・効率的運用の一層の徹底(▽研究費の適正な執行に係る指導等を強化するための体制整備― 二二〇〇万円、▽府省共通研究開発管理システムの運用― 四億八〇〇万円)
三、産学官連携などによるイノベーションを生み出すシステムの強化
@世界トップレベル国際研究拠点形成推進プログラムの推進― 七一億九〇〇万円(三六億九〇〇万円)
A基礎研究からの技術シーズの創出― 五六一億七〇〇〇万円(三一億八四〇〇万円)
◆戦略的創造研究推進事業― 四八八億三〇〇〇万円
◆先端融合領域イノベーション創出拠点の形成― 七三億四〇〇〇万円
B産学官連携の戦略的な展開― 二二七億九六〇〇万円(一五億七五〇〇万円)
◆産学官連携戦略展開事業【新規】― 二八億一九〇〇万円
◆大学等の研究成果を基にした共同研究等の推進― 一〇三億二二〇〇万円
C地域イノベーション・システムの強化― 二六〇億九五〇〇万円(八億二四〇〇万円)
◆「地域クラスターの形成」の支援― 一三七億六九〇〇万円
◆地域イノベーション創出総合支援事業― 一一〇億二五〇〇万円
四、科学技術振興のための基盤の強化― 六〇五億二五〇〇万円(七七億七六〇〇万円)
[概要]先端的な研究施設・設備・機器や知的基盤等は、科学技術活動全般を支える基盤として不可欠であることから、その整備や効果的な利用を促進する。
◆特定先端大型研究施設の整備・共用の推進― 三六六億一二〇〇万円
◆先端研究施設共用イノベーション創出事業― 三一億九〇〇万円
◆先端計測分析技術・機器開発プロジェクト― 一〇〇億一一〇〇万円
五、科学技術の国際活動の戦略的推進― 一九四億九九〇〇万円(四億四六〇〇万円)
[概要]政府全体の「科学技術外交」推進の方針を踏まえ、先端科学技術分野での戦略的な国際協力の推進、我が国の科学技術力による世界的課題等への貢献の観点から、国際活動を戦略的に推進する。
◆アジア諸国等との協力(▽科学技術発展基盤整備事業【新規】― 五〇億円、▽アジア・アフリカ科学技術協力の戦略的推進(科学技術振興調整費)― 一二億七〇〇〇万円)
◆戦略的国際科学技術協力推進事業― 一二億五〇〇〇万円
◆若手研究者への国際研鑽機会の充実― 六億三六〇〇万円
◆大学国際戦略本部強化事業― 四億六三〇〇万円
3. 国家基幹技術等の着実な推進
@ライフサイエンス― 七〇七億八四〇〇万円(四億七六〇〇万円)
A情報通信― 五六八億九七〇〇万円(六七億一九〇〇万円)
B環境― 七六七億三二〇〇万円(四九億七〇〇万円)
Cナノテクノロジー・材料― 三六一億四〇〇〇万円(二六億六〇〇〇万円)
D原子力―二六一四億二三〇〇万円(▲五三億七五〇〇万円)(十九年度補正予算五三億六五〇〇万円)
E宇宙・航空― 一八七六億七四〇〇万円(三六億七二〇〇万円)
F南極観測・海洋地球科学技術― 五三八億一七〇〇万円(一八億九九〇〇万円)
G地震・防災― 二四一億二七〇〇万円(三九億四二〇〇万円)(十九年度補正予算一〇億三〇〇〇万円)
Hものづくり技術― 六五億九五〇〇万円(一〇億八四〇〇万円)
I新興・融合分野― 三二一億二七〇〇万円(二一億四八〇〇万円)
二、国家基幹技術への集中投資
@宇宙輸送システム― 四〇四億六四〇〇万円(二六億五〇〇万円)
A海洋地球観測探査システム― 三〇八億八六〇〇万円(九六億八九〇〇万円)
B高速増殖炉サイクル技術― 二八九億九六〇〇万円(二三億一九〇〇万円)
C次世代スーパーコンピュータの開発・利用― 一四五〇億円(六七億六四〇〇万円)(十九年度補正予算四二億一四〇〇万円)
DX線自由電子レーザーの開発・利用― 一一〇億円(三五億二七〇〇万円)(十九年度補正予算三二億九七〇〇万円)
三、安全・安心に資する科学技術の推進― 二一九億九七〇〇万円(四五億八〇〇〇万円)
[概要]第三期科学技術基本計画において、「安全が誇りとなる国― 世界一安全な国・日本を実現」を政策目標としていることに基づき、安全・安心な社会の構築に資する科学技術の研究開発等を推進する。
◆安全・安心に資する科学技術の推進― 六億二五〇〇万円
◆個々の脅威に対する対策技術の研究開発等― 二一三億七二〇〇万円