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平成20年1月 第2299号(1月1日) 2008年新春特集号

2008年―年頭所感
  学士課程教育の充実

日本私立大学協会副会長/愛知学院大学学院長・学長 小出 忠孝

 新年明けましておめでとうございます。会員の皆様には、お健やかに新春を迎えられたことと心よりお慶び申し上げます。
 日本私立大学協会は三七七大学が加盟する、わが国最大の大学団体であります。高等教育(大学)の七五%を私立大学が担っているわが国では、高等教育の将来は本協会加盟の各大学の双肩にかかっていると言っても過言でなく、本協会の責任は極めて大であります。昨年本協会は創立六〇周年を迎え、わが国における私立大学の使命と責務の重要性を考え、「建学の精神に基づく人間教育、知の創造、社会への貢献」について決意を表明しました。新年を迎えるに当たり、この決意を新たにし再出発したいと思うものです。
 近年わが国社会は知識基盤社会が到来し、教育の質が一層重要となっています。特に質の高い教育により、高い能力の指導的人材の育成と同時に、「廿一世紀型市民」の育成が重要課題であり、高等教育特にその大半を占める私立大学の責任は極めて大であります。しかしながら一八歳人口減少に伴う「大学全入」時代の到来により、大学の入試による「入口」の質保証の機能は大きく低下しています。一方、わが国大学の「入学すれば出るは易し」の傾向は、進学率の上昇、大学全入時代の現在でもみられ、入学生の多くがそのまま卒業する状況から、大学卒業生の学力が低下していると、産業界から指摘されています。この様な状況から中央教育審議会は昨秋、「学士課程教育の再構築」の審議経過を発表し、社会からの信頼に応え、国際通用性を備えた学士課程教育を構築する必要があると指摘しています。即ち@入学者受入れA教育課程の編成・実施B学位授与に関する三つの方針を明確にし、学士課程教育の学習成果(学士力)の向上に努める様に提言しています。一方政府の教育再生会議は大学進学者の学力を担保するため「高卒学力テスト(仮称)」を導入し、テスト合格が大学受験の資格とする仕組みを提唱し、大学入学時の学力担保策の必要性を強調しています。之らは何れも大学進学率五〇%を超えたユニバーサル段階に加え、大学全入時代の到来による大学卒業生の学力低下に対する社会からの批判に対するもので、大学人にとって大変厳しい指摘であります。新しく制定された教育基本法では、大学の基本的役割として「高い教養と専門的能力を培う」と規程されています。こうしたことを踏まえ私立大学は、「廿一世紀型市民」の育成と充実のため、学士課程教育を充実し、その学習成果(学士力)を亢めるべく努力する責任があるわけです。
 私は、昨秋の叙勲で私学振興の功により「旭日重光章」受賞の栄に浴することが出来ました。昭和六十三年以来、本協会役員を勤めさせて頂けたお蔭であり、皆様のご支援、ご指導に心から感謝申し上げると同時に、さらにこれを期に私学振興のため全力を尽くす覚悟を新たにするものです。本年も一層のご支援をお願い申し上げます。

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