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平成20年1月 第2299号(1月1日) 2008年新春特集号

2008年―年頭所感
  各大学は自己実現を!

日本私立大学協会副会長/金沢工業大学学園長・総長 黒田 壽二

 明けましておめでとうございます。
 健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 いよいよ今年は一八歳人口が一三〇万人を割り込み、一二四万人となり、大学二極化の鮮明さを強めてきます。日本の大学は全入時代を迎えたにも拘らず、大学の数は増え続けています。規制改革や行財政改革の波は、経済活動のみならず、国の将来を担う高度な人材養成の場すなわち大学にまで及び、大学設置基準は、もはやその役割をも果たせないまでに、緩和されています。これらの改革を否定するものではありませんが、教育研究に係る積み上げられた規制は、認可行政を是とする我が国のシステムの中で、質保証の最低基準として、受け止められ維持されてきたと思っています。 
 今日、グローバル時代に対応した日本の大学の国際競争力向上や世界的教育研究拠点形成が嘱望され、その構築に向けさまざまな施策が講じられていますが、大学の質は思惑とは逆の道を歩んでいるかにも見えます。大学の在り方を真剣に考えている大学人によって辛うじて維持されているのが現状です。早急に改革の負の部分を改善し、真に世界的に認められる大学を構築しなければ、日本の将来はないと言っても過言ではないでしょう。
 昨年は、中央教育審議会で大学の中心的教育部門である学部の改革に取り組み、これを学位の質保証に着目し学士課程教育の在り方は如何にあるべきかを議論してきました。これが、「学士課程教育の再構築」(審議経過報告)として公表されました。その基本姿勢として、ユニバーサル段階(マーチン・トロー)の学士課程教育の在り方、知の時代を生きる多様で高い教養と専門性を備えた「二十一世紀型市民」の育成の在り方を議論し、「入口、カリキュラム、出口」の三つのポリシーを各大学で確立し、常に評価・改善をしながら多様な大学の構築と真の学士力を求めるとしています。
 また、多様な学生の受入れにより「学生を教育する」から「学生が自ら学び学習する」時代へと変化し、大学教員の教授法や指導力にも改革が求められ、組織化されたFDの義務化が規定されました。
 同時に大学経営を安定的に発展させるために事務職員の専門性向上を図るため職能開発SDの推進を奨励しています。
 前述したように、知識基盤社会では多様化された社会に多様な人材を必要とし、常に学習する能力が求められています。そのための生涯学習、社会人学び直し、シニア世代の受け入れ等々、大学は一八歳のみを対象にしたシステムからの大きな変革が求められています。
 今年は干支の始まりの「子」歳です。まさに大学にとって、将来を決める重大な年となることでしょう。それぞれの大学が社会のニーズのどの部分に対応するのか、どのような人材養成をするのかを社会に明示し、日本にとってなくてはならない大学に発展成長する基本を構築されることを切に願って年頭のご挨拶といたします。

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