平成19年12月 第2298号(12月19日)
■研究不正に対する方針「立てている」私大32%
大学等における科学技術活動調査
科学技術政策研究所は、大学等における科学技術・学術活動の実態を調査し、このほど結果をまとめて報告した。特に、近年問題となった研究上の不正行為への対応の調査では、「研究上の不正行為に関する方針を立てている」という私立大学は三二%などの結果となった。詳細は次のとおり。
同調査は、大学等の研究活動の振興のための科学技術・学術政策に必要な基礎資料を得るため、若手教員、女性教員の人数や支援策、研究上の不正行為への取り組み状況等について行ったもの。調査対象機関は、本年四月に設置されている全ての国公私立大学(短期大学を除く)及び大学共同利用機関法人で、六月〜八月にかけて行った。その結果、国公私立大学では、七四七大学に対して回答数六八二大学(回答率九一・三%)、国公私立大学の研究科、学部、附置研究所等では、二八八三部局に対して回答数二六五三部局(把握率九二・〇%)の回答であった。
調査結果のまとめは次の通り。(特記が無い場合は、七月一日現在の状況)
一、若手教員
三七歳以下の若手教員の割合は、国立二一・七%、公立二一・五%、私立二一・一%で、国公私立大学でほぼ同様の割合である(〇六年五月一日現在)、また、半数以上の国立大学で、学長裁量経費、部局長裁量経費等による若手研究者への研究費の支援が行われている。その他、研究スペースの優先配分などを含めて、約九割の国立大学が具体的な取り組みについて回答。公立・私立大学でも、若手研究者への研究費の支援等が行われている。
二、女性教員
女性教員割合は、国立一一・四%、公立二四・四%、私立二〇・〇%で、公立大学で高く、国立大学で低い。学長、副学長、教授、助教授、講師及び助手のいずれの役職も、公立大学の女性教員割合が他より高い。(〇六年五月一日現在)
男女共同参画推進委員会の設置、相談窓口の設置、保育施設の設置、育児休業を取得しやすい環境整備等、約八割の国立大学が具体的な取り組みについて回答。公立・私立大学においても、女性教員を役職者に積極的に登用するなどの取り組みが行われている。
三、特任教授、非常勤講師として、定年後の教員の能力を活用
定年後教員の特任教授としての採用や非常勤講師の雇用上限年齢の引き上げなど、約八割の国立大学が具体的な取り組みについて回答。公立・私立大学においても、客員教授や非常勤講師として任用するなどの取り組みが行われている。
四、若手教員・研究者の流動性拡大のための取組み
教員の採用及び昇任において五年間の任期制を導入し、厳格な評価に基づき優秀と認められた者にはテニュアを保証する制度など、約三割の国立大学が具体的な取り組みについて回答している。また、教員採用の国際公募の原則化、任期制ポストの拡大、年俸制の積極的導入など、約九割の国立大学が具体的な取り組みについて回答した。
五、研究上の不正行為への対応
研究上の不正行為への対応に関する方針等を、国立八割、公立及び私立三割が有する論文の盗用やデータの捏造などの不正行為への対応に関する全学としての方針、基準、規則(規程)を、国立七七・〇%、公立三〇・三%、私立三二・〇%が有している。この割合は、一年前に比べ、国立約三・九倍、公立約三・七倍、私立約四・四倍と大きな伸び。研究上の不正行為への告発対応窓口を、国立八割、公立及び私立三割が設置研究上の不正行為への全学としての告発対応窓口を国立八〇・五%、公立三一・六%、私立三二・〇%が設置している。
この割合は、一年前に比べ、国立約二・七倍、公立約七・七倍、私立約四・六倍と大きな伸び。
六、研究費の適切な管理
研究費の適切な管理のための方針等を国立四割、公立及び私立六割が有する研究費の適切な管理に関する全学としての方針、基準、規則(規程)を、国立四四・八%、公立五五・三%、私立五七・〇%が有している。研究費に関する不正告発対応窓口を国立五割、公立及び私立三割が設置研究費の適切な管理に関し全学としての不正告発対応窓口を、国立四七・一%、公立二九・〇%、私立三一・〇%が設置している。
なお、ガイドラインに基づく実施状況報告書が十一月十五日までに各研究機関より提出されており、本調査時点(七月)を超える取組が見込まれている。
七、多様な科学技術理解増進活動を実施
大学博物館・研究施設の公開、科学技術に関するシンポジウム、連続した公開講座の開催、小中高校生を対象に講演と実験、高大連携による高校生に対する出前講義、わくわくサイエンスキッズ(出前実験)、シニアを対象とした生涯学習教育プログラム、サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト、スーパーサイエンスハイスクールでの高校生への授業など、多くの国公私立大学で取り組みが行われている。