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平成19年12月 第2297号(12月5日)

大学は関係者集う"場"作りを 第7回産学官連携サミット

 内閣府、日本経済団体連合会、日本学術会議などは、去る十一月二十六日、ホテルオークラ東京において、第七回産学官連携サミットを開催した。同サミットは、産学官の連携を強化・推進するため、相互の理解増進と信頼関係の構築を図るとともに具体的な政策に反映することにより、我が国経済の活性化を図り、もって科学技術創造立国の実現に資するために開催された。

 政府の長期戦略指針「イノベーション25」では、人口減少下でも活力に満ち、豊かさを実現できる二〇二五年の社会を目指している。それを実現するためには、基礎研究の源を豊かにし、その成果を切れ目なく産業界へ繋ぐ連続的な「イノベーション」の創出が不可欠であり、産学官の本格的な共同が求められている。同サミットは本年で七回目となるが、このたびは、産学官の役割と連携の新展開について議論を行うことが目的である。
 まず、主催者等からの挨拶の後、「イノベーション創出の具体化に向けて〜 Create Innovation」と題して、岸田文雄内閣府特命担当大臣(科学技術政策)から基調講演があった。岸田大臣は、科学技術政策やイノベーションの具体的政策等について講演、産学官連携の研究成果の社会還元を促進させる「社会還元加速プロジェクト」や、地域の科学技術を振興し発展を企図する連携を推進する「地域科学技術クラスター」の支援、研究協力や技術協力を外交と連携させる「科学技術外交」等について説明した。
 続いて、特別講演が二つ、まず、「Innovation and Regional Competi tiveness」と題して、リチャード・レスター・マサチューセッツ工科大学教授が講演。「グローバル企業の競争力は地域にこそある」として地域の重要性を強調すると共に、産学官連携では大学の技術移転やベンチャー企業の創出が注目されているが全体の数%に過ぎない。一番良い技術移転は、学生が企業に入って新しいチャレンジをすることであると述べた。また、「産学官連携は一様ではなく、その地域、産業、そして、自らの大学を理解することで、連携の形は変わってくる」と語った。続いて、「地域クラスター創成に関する長野県の取組」と題して村井 仁長野県知事より講演があった。村井知事は、長野県の産学官連携による地域クラスターについて解説、その成果として、高性能キャパシタ、耐熱光ファイバ等を紹介、その中で自治体の役割を、様々な関係者が集い議論が出来る「場」作りである、と論じた。
 続いての、パネルディスカッションでは、まず、スピーカーからの発表で、「産業界が求める人材育成を産学官連携で!〜立命館大学からの提言〜」と題して川口清史立命館大学総長が講演。来年四月より開学する生命科学部・薬学部が、産学融合のラボラトリーを構想し、産学官連携で人材育成を行っていくことなどを発表した。次に、「プロセス・テクノロジー〜あらゆる工程は短縮できる〜」と題して、山田眞次郎(株)インクス代表取締役CEOは、製品を作る際に、何か決定が必要な工程を「1プロセス」と定義し、いかにプロセス数を短縮して製品を作れるかをビジネスにしている。研究を行う中で、サービス業でもプロセス数の短縮が可能であることなどを発表した。「産学官の連携によるカーブアウト型ベンチャーの設立について―魔pDレーザの事例」と題して、菅原 充(株)QDレーザ代表取締役社長が講演を行った。同社は、富士通、三井ベンチャーズが出資し、富士通・東京大学・NEDOの連携に基づく光デバイスの開発・製造・販売を行っているカーブアウト(別会社後も親企業と連携を保つベンチャー)である。菅原氏は、カーブアウト企業の課題として、ビジネスモデルの構築のためにも、まずは小規模でも成功事例を出すこと等を語った。最後に、「Observations of a Practicing Trans-Pacific Capitalist」と題して、アレン・マイナー(株)サンブリッジ代表取締役社長兼グループCEOが講演、日本にもイノベーティブリーダーはいるが、ベンチャーキャピタルが少ないのでベンチャーからはあまり出てこない、と分析。また、思い切った投資が継続的にできなくなるため、儲けが出てもすぐに株式公開をするべきではないと述べた。
 その後の全体ディスカッションでは、石倉洋子一橋大学大学院教授がモデレータ、コメンテータにディスカッションを行った。その中で、大学の役割とは、長期的で大きな問題を議論できる「場」の提供であるが、産学官の中で最も国際化が遅れている。今後は国際化を進め、オープンなシステムを構築していく必要があるだろう、等の意見が出された。
 終了後は、交流会が開催され、熱心な情報交換が行われた。

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