平成19年12月 第2297号(12月5日)
■私学振興の重要課題など協議 平成18年度収支決算を承認
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る十一月三十日、沖縄県那覇市のホテル日航那覇グランドキャッスルにおいて、同協会九州支部(支部長=西村駿一別府大学理事長)の担当の下、第一二七回総会(秋季)を開催した。加盟三七六大学から二二四大学三一六名の理事長・学長等が一堂に会し、平成十八年度の収支決算を承認するとともに、@平成二十年度私立大学関係政府予算概算要求並びに私立学校関係税制改善対策に関する経過報告と今後の実現対策等、A高等教育激動期における私立大学の振興・発展方策、B環境問題対策についてなどの協議が行われた。また、総会終了後には、懇親晩餐会が盛大に催され、仲井眞弘多沖縄県知事代理の仲里全輝副知事、翁長雄志那覇市長代理の當銘芳二副市長がそれぞれ歓迎の挨拶とともに祝辞を述べた。なお、総会の翌日には、首里城公園、沖縄県立博物館・美術館への懇親見学会も実施された。
開会に当たり大沼会長は「二七年ぶりに沖縄での総会となった。記録によると、当時は二〇〇余の加盟大学から一〇三大学・一六〇名が出席して開かれた。さて、私学を取り巻く諸情報は厳しく、特に大都市部以外の地方の大学に光を当てるような施策が切に求められている。政治の流れも不透明極まりないが、年末の税制改善要望、予算要望の実現めざし、皆さんのお力も借りてがんばっていきたい」と挨拶するとともに、総会の諸準備を担当した九州支部、特に沖縄県にある四大学に対し「心より感謝したい」と述べた。
また、西村支部長は「数日前には台風が二つも来て心配していたが、沖縄の四大学の皆さんの熱意が追い払ってくれたのではと思っている。沖縄から、高等教育激動期の中、私大協会の力強い確かな一歩を進められるよう期待している」と歓迎の挨拶を述べた。
次に、平成十九年度上半期の新加入会員として、(学)京都情報学園(京都情報大学院大学)、(学)近畿大学弘徳学園(近大姫路大学)、(学)鎮西学院(長崎ウエスレヤン大学)、(学)宇部学園(山口学芸大学)、(学)森ノ宮医療学園(森ノ宮医療大学)の五校が紹介され、歓迎の拍手に包まれた。
十八年度収支決算を承認
承認事項に入り、平成十八年度収支決算を企画財務委員会担当理事の廣川利男副会長(東京電機大学学園長)が、収支決算報告書に基づいて、経常会計と特別会計のポイントを中心に説明。続いて、佐藤東洋士監事(桜美林大学理事長・学長)が、去る五月時点における監査状況を報告し、満場一致で承認された。
予算・税制改善対策
協議事項に入り、はじめに平成二十年度私立大学関係政府予算概算要求並びに私立学校関係税制改善対策に関する経過報告と今後の実現対策について、小出秀文事務局長が資料等に基づいて提案説明を行った。
前年度は“骨太の方針二〇〇六”に則り、私学助成は“対前年度予算比一%減”とされたが、“骨太の方針二〇〇七”での「基盤的経費の確実な措置」といった提言もあることから、予算面での実質的な増額を期していく。さらに、私大協会の実態調査で明らかになった「地域連携」の積極的な取組(五四・六%〈二八〇大学調査〉)に関連する「地域振興と地域大学の充実」も提言されており、地域に根ざした支援を推進していきたい。このことは、文科省の予算要望として、「地域振興の核となる大学の構築」として新規事業「戦略的大学連携支援」(五〇億円)が取りまとめられている。この事業は、大学間の連携強化による個性・特色ある取組を支援し、地方の大学教育の一層の充実を図るもので、「複数大学の共同による学位授与、連合大学院等」の共通・専門教育の先進的プログラム開発、「産学官連携、豊富な生涯学習教育の提供、国際交流」など知の拠点としての機能強化などが企図されている。
そのほか、科学研究費補助金については、間接経費の未措置の若手研究(B)など、その導入も期したい。
税制改善対策では、個人の寄付税制について、@所得控除される寄付金額の上限を所得の五〇%まで引き上げること、A所得控除限度額を超える寄付金額について、「繰り越し控除」を創設することなどを重点要望としており、自民党税調の税制改正大綱発表に向け、最大限の折衝をしていく。
これらの提案説明の後、小出事務局長は「国家一〇〇年の計を考えるならば、何としても要望を実現していきたい」と力強く訴え、対策活動等が承認された。
私大の振興・発展方策
引き続き、高等教育激動期の私立大学の振興・発展方策について、(1)規制改革関連、(2)教育再生会議、中央教育審議会等の審議動向、(3)私学経営を巡る諸問題など、多岐にわたる提案説明が行われた。
(1)では、まず、教育バウチャー制度問題に関して、小出事務局長が自民党の文教合同のヒアリングに臨み「高等教育では難しい」との意見発表しているが、引き続き動向を注視していくこと、また、株式会社の教育分野参入問題では、かねてからの「民間の公教育参入は、学校法人を組織して」との主張をしていく。
次に、(2)では、中教審の大学分科会制度・教育部会の学士課程教育の在り方に関する小委員会の主査でもある黒田壽二副会長(金沢工業大学学園長・総長)が、A学士課程教育の再構築について、中教審の「将来像答申」で謳われた「多様で質の高い学士課程教育を実現する」ことを目指し、入学者の受入、教育課程の編成・実施、学位の授与・学修の評価など、ユニバーサル段階の大学の機能分化に向けた議論の「審議経過報告」の内容を概説した。特に、出口管理・質保証の中身について「学士力」(仮称)として提案している。今年度中に最終報告を取りまとめることにしており、意見等があれば同協会事務局まで寄せてもらうこととした。
A教育振興基本計画について、特別部会が先頃公表した内容に対し、私立大学団体連合会として意見まとめし、十二月五日のヒアリングに臨むことが説明された。同計画は、今後、概ね一〇年間を見通して、今後五年間に政府が目指すべき具体的な取組を示すものであり、具体的な数値目標等を盛り込むなど、意見具申していくことにしている。
B教員免許更新制の導入については、私大団連が意見提出し、同制度の運用については今後更に検討が深められていくもので、更新講習の開設者、更新講習の修了認定の在り方など、今後の審議に注目していく。
C学校教育法施行規則等の改正関連では、大学等の履修証明制度、大学の入学時期の更なる弾力化、博士課程の修業年限の弾力化等についても詳細な説明と対応策が提案された。
(3)では、日本私立学校振興・共済事業団の学校法人活性化・再生研究会が取りまとめた最終報告の概要について廣川副会長が説明するとともに、厳しい状況を訴えた。
一方、大沼会長は「これらの厳しさの中、私大協会は、全国に展開する地方私大に光を当てる地域振興に積極的に取り組み、前掲の文科省が新たに予算要望している“地域振興”に向け、一丸となって具体的な取組の提案をしていきたい」と力を込めた提案を行い、満場一致の拍手で承認された。
また、私立大学の環境問題対策については、大きな流れであり、全私学連合として地球温暖化対策の自主行動計画を策定したことの説明も行われた。
次に、春季総会以後の役員の補任で、関西支部の真銅孝三大阪経済大学理事長、棚橋孝雄神戸薬科大学学長、岡田芳男神戸学院大学学長の三人が追認された。
その他の協議事項では、第一二八回総会(春季)が平成二十年三月二十七日に東京で、第一二九回総会(秋季)が平成二十年十月二十四日に大阪市で開催されることが了承された。
【報告事項等】
報告事項では、平成十九年度同協会上半期事業報告、被用者年金制度一元化問題等のその後の動向、大学評価事業への対応についてなどが資料を基に報告された。
議事終了後、来年の秋季総会を担当する関西支部長の森田嘉一副会長より挨拶が行われ総会は終了した。
総会終了後の懇親晩餐会では、来賓の挨拶の後、西村支部長から、沖縄四大学の代表者らを称えての歓迎の挨拶・乾杯の発声と続き、アトラクションとして、沖縄国際大学の琉球芸能文学研究会、鼓舞楽団「浦風」による「琉球舞踊とエイサー演舞」が披露されるなど加盟大学が一堂に会しての懇談となった。
なお、翌日には、バス五台に分乗して首里城等への懇親見学会が実施された。