平成19年11月 第2294号(11月7日)
■岡田節人(発生生物学)氏ら 功労者は海老澤 敏氏ら
政府は十月二十六日、発生生物学の岡田節人氏、狂言の茂山千作氏、有機化学の中西香爾氏、彫刻の中村晋也氏、民事訴訟法学・裁判法学の三ケ月 章氏の五人に、平成十九年度の文化勲章を贈ることを決めた。また、文化功労者には、音楽評論の海老澤 敏氏ら一五人が選ばれた。文化勲章の親授式は十一月三日皇居で、文化功労者の顕彰式は十一月五日、東京都内のホテルで行われた。
文化勲章 受章者
岡田節人(おかだ・ときんど)80歳。京都大学名誉教授。発生生物学。水晶体細胞の細胞培養に世界で初めて成功し、目の色素上皮細胞が水晶体へと形質転換することを実証した。
文化功労者。基礎生物学研究所名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。京都府京都市在住。
茂山千作(しげやま・せんさく、本名・茂山七五三)87歳。狂言。狂言の伝統的な芸の骨格を踏まえて多くの伝統曲を上演し、的確で強靭な基本的技法と持ち前の天衣無縫な軽やかさとで演技を示してきた。
文化功労者。日本芸術院会員。京都府京都市在住。
中西香爾(なかにし・こうじ)82歳。コロンビア大学名誉教授。有機化学。これまで約二〇〇の生理活性物質の構造を解明し、特に微量しか入手できない生物活性天然有機化合物について、優れた業績を挙げた。
文化功労者。米国ニューヨーク市在住。
中村晋也(なかむら・しんや、本名・中村晉也)81歳。鹿児島大学名誉教授。彫刻家として、愛と詩情をテーマにした一連の作品が評価され、昭和五十六年に「星の祈り」で日展会員賞、同五十九年には「焦燥の旅路」で日展文部大臣賞を受賞した。
文化功労者。日本芸術院会員。鹿児島市在住。
三ケ月 章(みかづき・あきら)86歳。東京大学名誉教授。民事訴訟法学・裁判法学。民事訴訟のあるべき姿についての透徹した機能的考察と先進諸外国の民事訴訟法の比較法的考察に立脚した、斬新な民事訴訟法体系の構築と理論の精緻化に優れた業績を挙げた。
文化功労者。日本学士院会員。東京都在住。
文化功労者
岩槻邦男(いわつき・くにお)73歳。東京大学名誉教授。植物分類学。シダ植物の系統と分類に関する研究を行い多大な業績を挙げた。兵庫県立人と自然の博物館長。神奈川県在住。
海老澤 敏(えびさわ・びん)75歳。音楽評論。音楽学者としてモーツァルトおよびジャン・ジャック・ルソーの研究に多大な成果を挙げて、日本のみならず世界の第一線で活躍した。東京都在住。
奥谷 博(おくたに・ひろし)73歳。洋画。独立展・個展・グループ展など幾多の秀作を発表してきた。日本芸術院会員。神奈川県在住。
小田 滋(おだ・しげる)83歳。東北大学名誉教授。国際法学・国際貢献。国際法学の研究に努め、多大な業績あげ、さらに国際司法裁判所裁判官として国際貢献に尽くした。日本学士院会員。宮城県在住。
辛島 昇(からしま・のぼる)74歳。東京大学名誉教授。南アジア史。独自の精緻な刻文史料分析に基づいた南インド研究に努めた。神奈川県在住。
川島康生(かわしま・やすなる)77歳。大阪大学名誉教授。移植外科学・医学教育・医療振興。臓器保存において世界に類をみない長期保存法を開発し、臨床応用に貢献した。国立循環器病センター名誉総長。大阪府在住。
國武豊喜(くにたけ・とよき)71歳。九州大学名誉教授。高分子化学・分子組織化学。現代化学の最も重要な領域である分子組織化学を開拓するなど、斯学の発展に多大な貢献をした。北九州市立大学理事・副学長。福岡県在住。
櫻井英樹(さくらい・ひでき)76歳。東北大学名誉教授。材料化学・学術振興。有機ケイ素化学の研究を中心的立場で推進し、世界的レベルで先導的な役割を果たした。宮城県在住。
塩野七生(しおの・ななみ)70歳。小説。小説家としてイタリアを中心とした歴史上の人物や都市を独特な視点で綴り独自の地位を確立、斯界の発展に貢献した。ローマ在住。
鈴木章夫(すずき・あきお)77歳。東京医科歯科大学名誉教授。心臓血管外科学。心臓血管外科学の臨床と研究に努め、新たな術式・治療法を開発した。東京医科歯科大学長。東京都在住。
鈴木竹柏(すずき・ちくはく、本名・鈴木賢吉)88歳。日本画。日展を中心に秀作を発表。昭和五十六年に「丘」で日展文部大臣賞を、同六十三年「気」で日本芸術院賞をそれぞれ受賞。日本芸術院会員。神奈川県在住。
谷川健一(たにがわ・けんいち)86歳。評論・民俗学。古代学、南方研究、地名研究などの成果も加えて、民俗学界に「谷川民俗学」と呼ばれる学派を打ちたてた。神奈川県在住。
堂本尚郎(どうもと・ひさお)79歳。洋画。昭和三十年渡仏。当時のパリで一大旋風を巻きおこしていた抽象絵画、アンフォルメル運動に連携し、前衛画家としての道を歩み始める。東京都在住。
仲代達矢(なかだい・たつや、本名・仲代元久)74歳。俳優。昭和三十三年の「令嬢ジュリー」、同三十九年の「ハムレット」、同四十九年の「リチャード三世」、同五十年の「どん底」、「ジュリアス・シーザー」などで舞台俳優として実力を発揮した。東京都在住。
星野英一(ほしの・えいいち)81歳。東京大学名誉教授。民法。「利益考量論」をはじめとする氏の学説は、学界の指導的地位を占め、『民法論集』全九巻は戦後の民法研究の金字塔と呼ばれる。日本学士院会員。東京都在住。