平成19年11月 第2294号(11月7日)
■採用研究者「期待上回る」10%未満 民間企業の研究活動に関する調査報告
文部科学省では、このほど、平成十八年度「民間企業の研究活動に関する調査報告」を取りまとめた。このたびの調査では、主に、研究開発者など人材や産学官連携体制等についてまとめられた。概要は次のとおり。
同調査は、昭和四十三年から毎年実施しており、研究費の七割程度を負担・使用する民間企業の状況を把握するもの。このたびは、平成十七年総務省『科学技術研究調査』で、社内で研究開発活動を実施していると回答した資本金一〇億円以上の民間企業一七九一社で、本年二月から三月に実施。有効回答数は八九六社であった。
同調査では、特に、企業から見た博士課程修了者及びポスドクに対する期待と現実を、学士課程修了者及び修士課程修了者の場合とを比較した。採用した研究者の資質について、「期待を上回る」と回答した企業の割合は、全ての区分において一〇%に満たない。「ほぼ期待どおり」と回答した企業の割合は、「期待を下回る」の割合より高く六〇%前後となっている。一方、「期待を下回る」と回答した企業の割合は、ポスドクの研究者が最も低く、続いて博士、修士、学士課程修了の研究者の順となっている。
資質が期待を下回る理由で最も多いのは、学士課程修了の研究者では「学士課程に進むまでの基礎教育の内容・方法が不十分」となっている。一方、修士、博士、ポスドクの研究者では「社会での経験に乏しく、企業のニーズに無関心であるなど、企業の研究者としての自覚に欠ける」となっている。特に後者の傾向は、採用実績の多い企業よりも少ない企業で高い。なお、その他の理由として、「教科書や既成の理論に偏重した教育により、独創性が育っていない」、「専門に隣接する分野の教育の内容・方法が不十分」など、教育の内容や方法に関するものも多い。
次に、国内大学等の研究活動全般に対する評価、期待について調査を行った。それによると、「国内の大学等の現状について大いに評価するもの」の第一位、第二位は「民間企業での研究活動では対応が困難な分野の研究」「産学官の共同研究・委託研究」となり、今後大いに期待するものの第一位についても、「民間企業での研究活動では対応が困難な分野の研究」、第二位は、「世界人類の知的資産の拡大に貢献できるような質の高い基礎研究」となっている。
産学官の共同研究・委託研究の有効性の調査では、最も回答が高かったものとして、「自社の技術レベルの向上が期待できる」、「基礎研究のアウトソーシングが図れ、結果として応用研究、開発研究に注力できる」、「大学等との人脈形成」となっている。続いて、企業が考える国内大学との産学官連携体制の問題点は、民間企業からみた国内大学との産学官連携の問題点として最も回答が多かったのは、「実用化につながりそうな技術シーズに関する情報発信が少ない」、次いで「営業秘密や利益相反など共同研究・委託研究に関するルール・マネジメントが不十分」、「技術指導や共同研究契約に関する手続きが煩雑」などであった。