平成19年11月 第2294号(11月7日)
■大学経理部課長相当者研修会を開催 239大学からの411名が熱心に研修
経理・財務などに関わる課題別研修など
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る十月二十四日から二十六日まで、広島市の広島国際会議場を会場に、平成十九年度(通算第四四回)「大学経理部課長相当者研修会」を開催した。この研修会は、同協会の大学経理財務研究委員会(担当理事=原田嘉中千葉商科大学理事長、委員長=長谷川 昭北海学園大学法人事務局長)が、準備・運営を行ってきたもの。昨年同様、参加者の経理業務等の経験年数、または、各大学の組織・業務・派遣上の都合等により、研修日程をA・B・Cの三コースから選択可能にしている。同協会加盟三七六大学のうち、二三九大学から四一一名が参加し、各プログラムの研修課題に取り組んだ。
▼第一日目・基本研修
研修初日、はじめに原田担当理事から挨拶があり、教育を取り巻く環境が厳しさを増し、まさに変革期を迎えている時期であると述べるとともに、今後、私学は財政基盤の安定がますます重要であり、今回の研修を各大学発展のために役立てて欲しいと訴え、運営委員、中国・四国支部ならびに広島経済大学の協力に感謝の意を述べた。
基本研修に入り、中村学園大学法人本部財務部長の中川幸広同委員会委員より「学校法人・関係法令等に関する解説」と題して、資料をもとにポイントを絞った法令解説が行なわれた。また、法令を項目ごとに解説するとともに、自分の言葉として熟読して欲しいと述べた。
その後、四班に別れて班別研修が行われた。研修は運営委員が進行するスクール形式での解説・演習等で、各班別に会場を別れて初日の日程を終えた。各班の研修概要は次のとおり。
【1班】学校法人会計基準のあらまし1=@「学校法人会計基準の概要」、A「帳簿組織と計算体系」。【2班】学校法人会計基準のあらまし2=@「学校法人の予算制度」、A「『学校法人会計基準』ができるまで」、B学校法人会計基準の概要。【3班】学校法人における予算編成管理・中長期計画関係課題=@「学校法人における予算編成管理について」。【4班】私立大学等経常費補助金一般補助の仕組み=@「私立大学等経常費補助金の制度と仕組みについて」。
▼第二日目・基本研修
研修二日目の午前中は、前日の班別研修の続きで、演習や質疑応答など、実務レベルでの課題解決に役立つ内容で行われた。
【1班】学校法人会計基準のあらまし1=B「資金収支計算と消費収支計算、基本金、貸借対照表との関連」、C「演習と解説」。【2班】学校法人会計基準のあらまし2=B学校法人会計基準の概要。【3班】学校法人における予算編成管理・中長期計画関係課題=A「中長期財政計画の作成手法事例」。【4班】私立大学等経常費補助金一般補助の仕組み=A「演習と解説」。
▼総合研修
二日目午後からは、参加者が一堂に会して総合研修が行われた。
はじめに、長谷川委員長が挨拶に立ち、証券取引法令の一部改正により、学校債が開示規制の対象となったことについて、文科省の学校債の有価証券指定に伴う新しい会計準則に関する検討会で意見具申を提示した経緯を述べた。また、多種多様な問題、ニーズに取り組むべく研修内容を講じたので、実りある研修会としたいと述べた。
続いて講演に移り、「新しい時代の教育モデルをもとめて〜人間力開発のこころみ〜」と題して石田恒夫広島経済大学理事長が、同大学において「大学は学生のためのもの」との理念のもと取り組んできた事例を紹介した。なかでも人間力開発を目的とした「興動館教育プログラム」は、人間力について、自分をさらけ出せる勇気、相手の心を推し量り働きかける能力、魅力を発揮し人と共に何かを成し遂げる力、と定義し、学生に「経験・実践する場」を提供してそれらを養い、社会が期待する人材を育成するという取組。また、学生と共に将来を考える「夢チャレンジシート」作成の事例では、学生が目標設定をし、失敗から立ち上がれるようサポートも整えているというように、理念に沿った取組を紹介した。
休憩を挟んで、同協会の小出秀文事務局長が「私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題―新たな大学像、機能分化を考える―」と題して、大学全入時代という新局面での情勢を踏まえ、社会構造の変化に対して、高等教育を巡る環境のデータをもとに取り組むべき課題について述べ、各大学の多様性とダイナミズムに期待すると締めくくった。
総合研修の最後は、「我が国の今後の高等教育政策と私立大学の経営戦略(私見)〜ミクロとマクロのベストを目指して〜」と題して、芦立 訓文部科学省高等教育局私学部私学助成課長が講演を行った。
私学助成の経緯、補助金額の推移、などを説明した上で、いかに各大学の魅力を発揮し、多様化するニーズに応えるかが重要であると述べ、私学の発展にエールを送った。
二日目の研修終了後には、情報交換会が行われた。
▼第三日目・設定課題別研修
研修三日目は、設定課題別に別れて解説・事例発表等とディスカッションによる研修が行われた。三日目の研修概要は次のとおり。
【1班】学校法人会計基準の動向と決算の留意点=@「学校法人会計基準改正後の動向と決算の留意点」解説者:佐野慶子氏(公認会計士・日本公認会計士協会常任理事)、A参加者ディスカッション。【2班】経常費補助金・会計検査院検査関係課題=@「私立大学等経常費補助金の最近の傾向(一般補助・特別補助)」解説者:南 浩司氏(日本私立学校振興・共済事業団助成部補助金課補助金総括係長)、A「最近の会計検査院の動向」解説者:佐藤克則氏(同事業団助成部補助金課課長補佐)、B解説についての質疑応答、C参加者ディスカッション。【3班】収入増加方策・支出の効率化関係課題T「収入増加方策・支出の効率化についての取組」、@事例「大阪芸術大学の取組『資産運用について』」発表者:田中長則委員(同大学法人本部財務部長)、A事例「福岡工業大学の取組『経営計画と連動した効率的な予算管理』」発表者:山下 剛氏(同大学財務部長)、U「収入増加方策・支出の効率化方策についての参加者ディスカッション」。【4班】学校法人における税務実務の留意点=@「学校法人における税務実務の留意点」解説者:木澤 進氏(税理士・斎藤総合税理士法人代表社員)、A講師との質疑応答、参加者レポートについての意見交換、税務調査事例についての情報交換等。【5班】私大経営の財務分析・情報公開と第三者評価=@「財務分析・財務情報公開について」、A参加者間の情報交換、B「広島文教女子大学『認証評価結果と今後の課題』」発表者:小西忠男氏(同大学副学長)、C参加者間の情報交換。【6班】私立大学の社会的責任関係課題=@「北里大学の取組事例『競争的研究資金の内部管理体制』」発表者:柴田政俊氏(同大学研究支援センター事務長心得)、A「神奈川大学の取組事例『競争的資金の監査と今後の対応』」発表者:久米信行氏(同大学内部監査室長)、B事例への質疑応答・補足説明・意見交換、C情報交換。
三日目の班別研修で全日程を終えて閉会となった。