平成19年10月 第2293号(10月24日)
■申合せ、倫理憲章など決まる 大学・企業が相互に尊重
1面に掲載のとおり、去る十月十六日に、平成二十一年三月大学卒業予定者のための就職・採用活動に係る、大学側の「平成二十年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業予定者に係る就職について(申合せ)」、企業側の「二○○八年度大学・大学院新規学卒者等の採用選考に関する企業の倫理憲章」、そして、企業等採用者に対する「平成二十年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業予定者に係る就職に関する要請」が公表された。内容については次のとおり。
平成二十年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業予定者に係る就職について(申合せ)
国公私立の大学、短期大学及び高等専門学校(以下「大学等」という。)で構成する就職問題懇談会は、平成二十年度卒業予定者の就職活動の秩序を維持し、正常な学校教育と学生の学習環境を確保するとともに、学生の就職機会の均等を期するため、高等学校卒業予定者の就職活動にも配慮し、下記のとおり申し合わせる。
なお、この申合せを行うに当たり、大学等は、学生に高い学力と豊かな人間性を身に付けさせた上で卒業生として社会に送り出すという、本来果たすべき社会的使命と責任を十分認識するとともに、その責務を果たすため、各大学等において全教職員が協力し、全学的にこれを実行することを確認する。
(1)採用情報の開示について
インターネットによる採用情報の公開や通年採用の拡大等に鑑み、求人依頼文書の発送、求人票の受理及び公示の時期は、各大学等の自主的判断によって行う。
(2)就職・採用活動の早期化への対応について
学校教育上重要な時期である卒業学年当初及びそれ以前は、学内及び学外で企業が実施する採用選考のための「企業説明会」に対して会場提供や協力を行わない。
また、この趣旨を踏まえ、この時期の学生に対する就職指導を適切に行う。
(3)学校推薦の取扱いについて
学校推薦は、原則として七月一日以降とする。
(4)正式内定開始について
正式内定日は、十月一日以降である旨学生に徹底する。正式内定に至るまでの間においては、複数の内々定の状態が継続しないよう、学生を指導するとともに、九月三十日以前の「内定」は学生を拘束しないものである旨徹底する。
(5)学生の応募書類について
学生の応募書類は、「大学等指定書類(『履歴書・写真・自己紹介書』、『成績証明書《卒業見込証明書を含む》』)」とし、企業に対して、就職差別につながる恐れのある項目を含む「会社指定書類」《エントリーシート等を含む》、「戸籍謄(抄)本」、「住民票」等の提出を求めないよう要請する。
(6)男女雇用機会均等について
採用活動は、男女雇用機会均等法及びその指針の趣旨に則って行われるべきであり、その旨を企業側に徹底するよう要請する。特に、総合職採用における女子学生への配慮を求めるよう要請する。
(7)職業観や勤労観の涵養について
学生個々人の個性や適性に応じた職業を学生自ら選択できる能力の育成や学習意欲を高めるため、学生の職業観や勤労観を涵養することは重要であり、大学等においては正課教育としてのキャリア教育やインターンシップを推進する。
(8)「申合せ」の周知について
各大学等は、学内の教職員はもとより、学生への周知徹底を図るとともに、企業等に求人依頼文書を発送する際、この「申合せ」を添付し、その趣旨の理解を図る。
二○○八年度大学・大学院新規学卒者等の採用選考に関する企業の倫理憲章
企業は、自己責任原則に基づいて自主的に行う、二○○八年度大学・大学院新規学卒者等の採用選考にあたり、下記の点を十分配慮して行動する。
(1)正常な学校教育と学習環境の確保
採用選考活動にあたっては、正常な学校教育と学習環境の確保に協力し、大学等の学事日程を尊重する。
(2)採用選考活動早期開始の自粛
在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動の早期開始は自粛する。まして卒業・修了学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む。
(3)公平・公正な採用の徹底
公平・公正で透明な採用の徹底に努め、男女雇用機会均等法に沿った採用選考活動を行うのはもちろんのこと、学生の自由な就職活動を妨げる行為(正式内定日前の誓約書要求など)は一切しない。また大学所在地による不利が生じぬよう留意する。
(4)情報の公開
学生の就職機会の均等を期し、落ち着いて就職準備に臨めるよう、企業情報ならびに採用情報(説明会日程、採用予定数、選考スケジュール等)については、可能な限り速やかに、適切な方法により詳細に公開する。
(5)採用内定日の遵守
正式な内定日は、十月一日以降とする。
(6)その他
高校卒業者については教育上の配慮を最優先とし、安定的な採用の確保に努める。
平成二十年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業予定者に係る就職に関する要請
国公私立の大学、短期大学及び高等専門学校(以下「大学等」という。)で構成する就職問題懇談会においては、大学等卒業予定者の就職活動の秩序を維持し、正常な学校教育と学生の学習環境を確保するとともに、学生の就職機会の均等を期するため、別添のとおり「申合せ」を行い、全国の大学等に趣旨の徹底を図っております。
大学等は、この「申合せ」を行うに当たり、学生に高い学力と豊かな人間性を身に付けさせた上で卒業生として社会に送り出すという、本来大学等が果たすべき社会的使命と責任を十分認識するとともに、その責務を果たすため、全教職員が協力し、全学的にこれを実行することを確認したところであります。
つきましては、貴職におかれては、平成二十年度大学等卒業予定者の就職採用活動の秩序を維持するため、上記「申合せ」の内容について十分御理解いただくとともに、採用活動に当たっては、(社)日本経済団体連合会で定める「倫理憲章」の趣旨に則り、特に下記事項について御配慮をいただきますようお願いいたします。
(1)採用活動の早期化とそれを要因とする長期化は、大学等の教育機能の低下をまねくものであり、十分な教育を受け得なかった学生を採用することは、企業にとっても不利益をもたらすことになる。したがって、卒業学年に達しない学生に対する実質的な採用選考活動を厳に慎み、採用選考活動を早期に開始しないようにするとともに、可能な限り休日や祝日等、例えば長期休暇期間に行う等、大学等の教育活動を尊重した採用活動を行うこと。
(2)学生の応募書類は、「大学等指定書類(『履歴書・写真・自己紹介書』、『成績証明書《卒業見込証明書を含む》』)」とし、就職差別につながる恐れのある項目を含む「会社指定書類」《エントリーシート等を含む》、「戸籍謄(抄)本」、「住民票」等の提出を求めないこと。
(3)男女雇用機会均等法及びその指針の趣旨に則った採用活動を行うこと。特に、総合職採用において女子学生への特段の配慮が行われること。
(4)採用情報の提供に当たっては、求める人材の能力や資質を具体的に示し、公平・公正な公開を徹底するとともに、学校名、学部・学科、地域により就職情報(情報誌、ダイレクトメール等を含む)の提供や採用選考に差異を設けない等、就職の機会均等について一層の改善を図ること。
(5)正式内定開始前の九月三十日以前に内定承諾書、誓約書、連帯保証書の提出を求める等、学生の自由な就職活動を妨げ、心理的な負担となる拘束を行わないこと。また、内定後に内定式や入社前研修等を行う場合には、学生の学修に支障がないよう配慮すること。
(6)卒業の際、未就職であったり、非正規雇用となった学生が、新たな就職先を求め、再チャレンジできるよう配慮していただきたいこと。
(7)学生の職業観の育成や学習意欲の喚起を促す観点から、重要な意義を有するインターンシップについて、積極的に取り入れていただきたいこと。
ただし、インターンシップは、教育の一環として位置付けられた就業体験であり、採用選考と直結した受入れは本来の趣旨にそぐわないものであることに留意していただきたいこと。