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平成19年10月 第2293号(10月24日)

総会・私学振興の諸問題を協議 

講演「今、大学に求められる新たなコンプライアンス」

 日本私立大学協会の関東地区連絡協議会(大沼 淳会長、平成十九年度議長=小田一幸東京造形大学理事長)は、去る十月二十二日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で、同協議会所属の一二二大学から九三大学・一三二名が出席して総会及び協議のほか、「今、大学に求められる新たなコンプライアンス」と題する講演が行われた。また、協議等の終了後には、情報交換会も行われた。

 開会に当たり大沼会長は「予算、税制改善等の要望実現に向け、私大協会として、また、他団体等とも連携して文部科学省をはじめ関係各省庁、文教関係国会議員等にきめ細かな要請活動を展開している。一方、福田内閣の下での教育再生会議、中央教育審議会の審議動向などの大学改革に係る課題や地球温暖化対策など、多くの課題がある」と挨拶を述べ、同協議会所属の加盟校にも応援を呼びかけた。
 次に、小田議長の挨拶の後、同協議会役員の現状について、小出秀文事務局長より説明・紹介があった。
 同協議会の役員は、会長・副会長のほか、常任幹事四名(うち、一名が単年度の議長となる)、監査役二名以内となっており、平成十六年四月から同二十年三月までの任期で、大沼会長、廣川利男副会長のほか、常任幹事として、十六年度議長=香川達雄女子栄養大学理事長、十七年度議長=佐野博敏大妻女子大学理事長・学長、十八年度議長=松田博青杏林大学理事長、十九年度議長=小田一幸東京造形大学理事長、監査役として、赫 彰郎日本医科大学理事長、中村英夫武蔵工業大学学長が紹介された。
 総会に移り、同協会役員の任期満了(平成二十年三月三十一日)に伴う役員改選について―同協議会役員(会長・副会長・常任幹事・監査役)の選出を含む―では、まず、同協会が来る平成二十年三月二十七日に開催予定の第一二八回春季総会で任期満了に伴う役員改選が行われることから、同協議会からの同協会役員候補者の選出、また、同協議会の役員の選出については、現在の同協議会役員の一任とすることの提案が小田議長から出され、満場一致で承認された。
 引き続く連絡協議では、@私立大学に対する今後の国の財政支出の在り方及び税制問題、A中教審等の審議動向と大学改革問題等への対応について、Bその他当面する私学振興上の諸問題についてなど、小出事務局長より提案説明が行われた。
 @については、高等教育全体への財政支出はもとより、特色を発揮し地域活性化をも担っている地方私大に光が当たるような施策の展開に意を用いているとした上で、歳出歳入改革の下で対前年度予算比“▲一%”とされた経常費補助金については、教育基本法改正で私立大学が新たに規定されるなど情勢が一変していることを背景に、対前年度予算より七〇億円増となっていること、さらに、教育研究装置施設整備費補助では、学校施設耐震改修事業に対前年度予算より三八億円増となっており、文科省では全国で耐震相談会を実施するなど、「耐震」をキーワードにした大きな前進を期していくことなど。
 そのほか、地域振興の核となる大学の構築として五〇億円の新規要望、さらには、社会的要請の強い社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラムの五四億円(前年度予算は約一八億円)など、ポイントを説明した。
 一方、税制改正要望では、寄付税制について、「所得控除される寄付金額の上限」を所得の(四〇%から)五〇%に引き上げること、また、限度額を超える分についての「繰り越し控除」の創設などを説明した。
 次に、Aについては、中教審大学分科会の制度・教育部会学士課程教育の在り方に関する小委員会が取りまとめた「学士課程教育の再構築に向けて」(審議経過報告)を中心に説明した。
 Bでは、地球温暖化対策としての私立学校における温室効果ガス排出量削減に向けた全私連の「環境自主行動計画」案の検討状況、さらに、先の新潟県中越沖地震の激甚災害指定(“本激”と“局激”がある)において局激とされ、私立学校は補助対象とならないことに対し、補助対象となるよう私学団体として要望していく方向であることを説明した。
 これらの説明及び対応については、提案どおり了承された。
 議事の最後に、東京都知事本局の松浦將行参事から「地球温暖化に直面し、大都市東京を緑あふれる町に再生し、環境と共生していくことの大切さを世界に発信すべく、『緑の東京募金(一口一〇〇〇円)』を創設することになった。皆様のご賛同をお願いしたい」との要請があった。(問合せ先=「緑の東京募金」実行委員会事務局 電話〇三―五三八八―三五九五、緑の東京募金HP=http://www.midorinotokyo-bokin.jp)
 休憩の後、郷原信郎桐蔭横浜大学法科大学院教授・コンプライアンス研究センター長が「今、大学に求められる新たなコンプライアンス」と題して講演した。
 同氏は、「コンプライアンス=法令遵守」の理解は誤りであるとし、「コンプライアンスとは、社会的要請への鋭敏さ(sensitivity)と目的の実現に向けての協働関係(collaboration)を保ち、組織に向けられた社会的要請にしなやかに鋭敏に反応し目的を実現していくことである」と述べた。そして、社会的要請に組織として適応していくためには、@方針の明確化、A組織の構築、B予防的コンプライアンス、C治療的コンプライアンス(発生した問題に関連する事実を明らかにし、真の原因を究明することなど)、D環境整備コンプライアンスといった五要素の「フルセット・コンプライアンス」の基本的な考え方を提唱した。また、違法行為の二つの類型として、ムシ型(アメリカの場合:個人の利益目的であり、厳しいペナルティを科す〈殺虫剤散布〉)、カビ型(日本の場合:会社の利益目的であり、構造的要因〈汚れ・湿気〉の除去)を挙げ、わかり易い解説を加えた。そのほか、大学とコンプライアンス等についても組織の在り方、研究と教育の関係、学生の位置づけ等にも触れるなど、示唆に富んだ内容であった。

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