平成19年10月 第2290号(10月3日)
■「大学教育の再構築に向けて」高等教育開発センター開設記念講演会
去る九月十日、北里大学(柴 忠義理事長・学長)は、高等教育開発センターの開設に伴い、寺ア昌男氏(立教大学調査役・東京大学名誉教授・大学教育学会会長)を迎えて記念講演会を行った。
はじめに、柴理事長から挨拶があり、同センターの目的は、「北里大学の学士課程教育プログラムや教材の開発及び教育活動の継続的な改善の推進と支援により、大学教育の充実と発展を目指すこと」にあり、そのためには、まず同大学をいかにして一つの統一体にしていくか、字義どおりの"university"にしていくかを考えなければならないということで講演が組まれた経緯が語られた。
講演では、寺ア氏は、経験談を交えた建設的な視点から、「カリキュラムを考える視点」について、「カリキュラムを見る視点は三つある。それは『スコープ(広がり)』と『シーケンス(順次性)』と『目標』である。カリキュラム設計の基本は、広がりという横軸と順次性という縦軸があり、それを基軸として目標に向かってどのように組み立てるか、ということである。この三つの点に立ちかえってカリキュラムを考えることで、立教大学における学士課程教育の目標を従来の『教養のある専門人の育成』から『専門性に立つ教養人の育成』へと転換することに成功した」と語った。
次に、「カリキュラムづくり=FD」という視点について、新しいコンセプトの下で全学共通カリキュラム(旧一般教育)を作成する過程で気付いたことであり、SDにもつながると述べた。カリキュラムづくりにあたって、内容の作成は教員が行うが、それを実現させるためにはどれほど職員の力が必要であるか、そのことを実体験から鋭く指摘した。
最後に、「大学教育の再構築」の原理の変化を冷静に見つめる視点について、学問と大学をつなぐ原理が転換してきていると語った。「これまでは、学問分野ごとに学部が作られ、それが大学教育を構築してきた。しかし、現在は、学部は学問分野ごとではなく、社会における実際的な課題を基盤にして作られている。学際化したという言葉だけでは語りきれない、大学の根幹を揺るがすような変化を、いかに捉え、改革のダイナミクスに変えていくか。まさに今後個々の大学の姿が試されていく」と締めくくった。