平成19年10月 第2290号(10月3日)
■20年度予算税制改正要望など実現対策を協議
文科省担当官が要望事項を説明
"学士力"(仮称)の検討、地震被害補助案を報告
日本私立大学協会(大沼淳会長)は、去る9月28日(金)、東京市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において、第578回理事会を開催し、平成20年度私立大学関係政府予算概算要求並びに私学関係税制改善対策について、文科省の担当官による説明のほか今後の推進方策、中教審等の審議動向と私学振興上の諸問題への対応、同協会役員の補佐についてなど協議した。なお、新加入一大学が承認され、同協会の加盟校は376大学となった。報告事項では、各種研修会等の実施状況及び先の新潟県中越沖地震における激甚災害に対する補助に係る要望(案)の報告が行われた。また、終了後には文科省の担当官を交えて懇親会も開かれた。
大沼会長の開会の挨拶の後、協議に先立って、逝去された北郷 薫元常務理事(工学院大学顧問・前理事長)、中村久雄元常務理事(中村学園大学顧問、前理事長・前学園長)、今井久夫理事(大阪歯科大学理事長・学長)に黙祷を捧げた。
協議事項では、平成二十年度私立大学関係政府予算概算要求並びに私学関係税制改善対策の今後の推進方策について、初めに文科省の担当官から説明が行われた。
まず、税制改正要望事項について、高等教育局の杉野 剛私学行政課長が、寄付税制の拡充として「所得控除される寄付金額の上限を所得の四〇%から五〇%まで引き上げること、限度額を超える分は繰り越し制度を創設することなど、寄付の活発化を図る」ことのほか、学校債の有価証券指定、環境自主行動計画策定方針等にも言及した。
次に、高等教育局の二十年度の主要事項予算について、藤原 誠高等教育企画課長が、概算要求の大きなフレームを解説した。基盤的経費の“▲一%”があるものの、FD対応、緊急医師確保対応、九月入学等の国際化対応等、さらに、地域振興の核となる大学の構築など新規事業等で増額を図ることなどを解説するとともに、年末の折衝に向け同協会の協力を要請した。
引き続き、私学助成について、芦立 訓私学助成課長が、義務化されるFD対応の支援、緊急医師確保等の予算要望の新規要因のほか、施設耐震化促進に向けて、全国で相談会を実施するなど、施設整備の改善を図ることなどを説明した。
国公私立大学を通じた大学教育改革の支援については、中岡 司大学振興課長が「質の高い大学教育推進プログラム(仮称)」や「戦略的大学連携支援事業」等の新規事業のほか、「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」や「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」などの大幅に増額した事業等について説明するとともに、私学からのより多くの応募を促した。
また、科学研究費補助金について、研究振興局の磯谷桂介学術研究助成課長が、人文・社会科学分野の振興に配慮した応募金額の下限の引き下げや採択件数の増加等を図るとともに、間接経費の措置等の拡充を図り、全体で前年度予算より二六二億円増となっていることなどを解説した上で、「私立大学が応募しやすく心がけたので、より多くの申請をお願いしたい」と要請した。
引き続き、中教審の審議動向等では、大学分科会制度・教育部会に報告された「学士課程教育の在り方に関する小委員会」(主査=黒田壽二金沢工業大学学園長・総長)の『学士課程教育の再構築に向けて(審議経過報告)』について、黒田副会長が解説した。
同報告は、社会からの信頼に応え、国際的適用性を備えた学士課程教育の構築を目指すものであり、その方策(主に国による支援・取組)の例として、@学位水準の維持・向上に向けた枠組みづくり、A教育内容・方法等の優れた実践を行う大学への重点支援、B高等学校との接続の改善、C教職員の職能開発の推進、D質保証システムの整備・確立などを挙げている。特に、学修成果の参考指針としての「学士力(仮称)」を提案している。その内容は、(1)知識・理解=@多文化・異文化の理解、A人類の文化、社会と自然の理解、(2)汎用的技能=@コミュニケーション・スキル、A数量的スキル、B情報リテラシー、C論理的思考力、D問題解決力、(3)態度・志向性=@自己管理力、Aチームワーク・リーダーシップ、B倫理感、C市民としての社会的責任、D生涯学習力、(4)統合的な学習経験と創造的思考力である。
今後、パブリック・コメントを経た上で、さらに検討を重ね、最終答申は年明け以降になる予定である。
次に、同協会の役員補任についての協議では、関西支部所属の棚橋孝雄神戸薬科大学学長と真銅孝三大阪経済大学理事長の二人(平成二十年三月三十一日までの任期)が承認された。
同協会への加入申請のあった(学)森ノ宮医療学園の設置する森ノ宮医療大学については、協議の上、加入が承認された。
同協会参与の選任についてでは、同協会前事務局長の原野幸康氏を引き続き選任することが了承された。
協議事項の終了後には、各種研修会等の報告が行われ、さらに、激甚災害に対する補助(案)(私立学校の公共性に鑑み、激甚災害制度において「局激」指定であっても、公立学校と同様の復旧支援の対象とすること等)を示して了承された。今後、他団体及び関係方面に理解を求めていくこととなった。